俺だって、やれば出来るのだ
「しかし、貴方は雨月様の魔術によって現象現物した訳ではありませんよね? でしたら雨月様の力量として含めるのには……」
確かに、俺自身がアイアンメイデンを現象現物した訳ではない。多分、親父がアイアンメイデンを現象現物させたのだから。
「心配ありません、もとより万丈さんからの盟約の内容は、『私の全ての権限をゆうへいに移す事』です、それ以前に魔力はすでに万丈さんのモノではありません、私自身の魔力で動いているようなものです」
アイアンメイデンは「完璧です」と、無い胸を張るが、実の所、あまり意味がないんじゃないか?
例え俺がお前の所有物になったとしても、それは俺の力量ではない、親父の魔力によって現象現物されたのだから、勿論アイアンメイデンの所有物は親父のものではないのだろうか?
「…………では、こうしましょう、もういっそ雨月様の魔力を彼方に注げば?」
「!? ちょっと待ってください!! 彼の性能はEランク!! 例え魔力がEランク分の貯えがあるのだとしても、私が現象現物出来る期間は二日もありません!!」
………俺がアイアンメイデンの現象現物したとして、二日も持たないのか…………俺は一人愕然とした。
本当なら、俺がアイアンメイデンを支えなければならないのに、俺はそれをする事が出来ない………。
情けなくて、更衣室のソファに座る、膝が震えるのを抑える為に座った筈なのに、酷くその震えが体に回っていく。
落胆とした表情を見て、アイアンメイデンは俺にかける言葉はない。
いや、もしかしたらこんな俺を見て幻滅しているのかもしれない。
俺は俯いたまま目を開けると、何か茶色いビンが転がっているのが見えた。
それは栄養ドリンク、定時に帰れるくせに、何が栄養を欲しているのか。
そう思っていた俺は、ある事を思いつく。
朝方親父が召喚魔術をしていた時、俺は親父に水を汲んでやった。
その時に、親父はある飲み物を飲んでいた。
それは、魔力が消費した時、親父は魔力上昇ドリンクと言って飲んでいた………
「………ルーンマイトの原液……そうか!!」
俺は思いついた、もしかしたらアイアンメイデンの魔力は俺が補うことが出来るのかも知れない。
「アイアンメイデン、お前の魔力は俺が補ってやる」
「いや、だからですね、私はまだ消えたくないし、彼方に負担を………」
「それ位背負わせてくれ………ッ! 俺は、お前に親父のモノを使って欲しくないんだ」
アイアンメイデンはビックリした顔をして、深い溜息をついた。
その後、ゴシック服の中に入れてあったネックレスを、俺に差し出した。
「私名義の石物です、それが半径二メートル内にあれば私は動けます、その石を持って魔力を注げば、彼方の魔力は私のモノとして使役できます」
俺はそのネックレスを持って、念を籠める様に魔力を送ってみる。
案外魔力の注ぎ方はあっていたらしく、俺の体の中から何かが抜ける感覚が残る。
まるで体の水分が抜けていくような感じが数十秒、体がグラつく、これ以上は体が持たないだろう……。
石物をアイアンメイデンに渡し、再度ソファに座り込む。
冠之公正人は石物に俺の魔力が入っているのを確認し、「貴女を、雨月様の魔術として認めます」と、宣言した。
俺は重くなった体をソファに預けて、安堵の息を吐く。
アイアンメイデンは心配そうな顔で「大丈夫ですか? 」と言ってくる。
「……心配してくれるんなら、こんなダルい思いをしてもいいな………」
アイアンメイデンは「そのまま魔力を消費して気絶すれば良かったのに」と、ツンツンした言葉を返す。
振り向きがてら、少しだけ頬が赤く見えたのは、きっと気のせいだろう、そう思おう。
「さて、折角なので送って行きますよ、こう見えて運転できるんですよ、僕」
空気のハンドルを握って右左とハンドルを動かす。
―――ちょっと待て、お前何歳だ?
「三十二です、大方若く見られますが、もうタバコも酒も飲める歳ですよ」
……いや、突っ込まないからな。