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たくましい彼女!  作者: 響かほり
‐番外編‐
9/10

夫婦喧嘩は犬も食わない(4)



「だって、家族のことを考えているから、一緒に居る時間をまず大事にしたいんでしょ?旦那さんも、きっとそうだと思うよ?蓮が仕事をしているから、家事よりも子供との時間をまず優先してほしいから、家事をさせないんじゃない?」

「…そうなのかな?」

「そうよ、きっと。だから、今度から旦那さんに言えば良いのよ。二人の方が早く片付くから、一緒にやらせてって。子供と過ごすなら、四人の方がもっと楽しいって…そうすれば、きっと家事だってさせてくれるし、家族の時間を楽しめると思うよ?」


 こんな空気読まねえ、夜遅くに来た俺に嫌な顔もせず、愚痴聞いても文句も言わずに聞いて、俺一人なら絶対考えつかない様なアイディアを、あげははくれる。

 だから、甘えて度々、夫婦喧嘩すると来ちまうんだけどな…。


「…あげはってさ、何かいいよな」

「?」

「あげはが独りってのは、もったいねぇなって話」


 良く分からないと、小首を傾げたあげはに、俺は笑みで返した。


「そういえば、今日はこのまま泊まっていく?」

「…今日は子供連れて来なかったしな…もう少ししたら帰る」


 流石に、娘の言葉に端を発した喧嘩の愚痴を、此処に一緒に連れて来てする訳にもいかなかったから、連れてはこなかったけど、心配ではある。

 アキラが子供を放置して、俺を探しに来るとは思わねえ。娘たちは明日、学校があるから寝かしつけるだろうから、その辺は心配じゃねえけど。

 子供が傍にいないと不安なんだよな。俺が。

 アキラはいつもの流れで、子供寝かしつけながら寝るだろうから、見計らって帰ろう。

 起きているアキラに、さっきの今で会うのはバツが悪いし。

 あげはは何を思ったのか、おもむろに、机の上に置いてあった携帯電話を手にとって、そのまま耳にあてた。


「そう言う訳なので、お迎えお願いしますね」

「あげは!?」


 あげははにこりと笑ったまま、俺にその携帯電話を差し出す。

 俺が恐る恐る耳にあてると、聞き慣れた声が聞こえる。


『俺の大事な家出妻、今から迎えに行くから逃げずに、吉良さんの家で待ってろよ』


 含み笑いをしながらそう言った男に、俺は恥ずかしくて顔から火を噴きそうだった。


「あ、あんた、き、きききき聞いてたのか!?」

『ああ。蓮の気持ちは分かったから、ゆっくり話し合おう?』


 そう言って電話を切った相手に、俺は慌ててあげはに携帯電話を返す。


「お、俺をはめたな!?」

「ごめんね。旦那さんに、今回は蓮を怒らせた理由が分からなくて困ってるから、助けてほしいって言われて」


 申し訳なさそうに謝ったあげはに、俺はうなだれる。


「だ、だからって…いや、こうしちゃいられない!俺逃げるからっ!じゃあなっ!今度、ケーキ作って持ってくっから!」


 この際、あげはへの文句は後だ。とりあえず逃げねえと!

 鞄持って玄関に来た俺は、大慌て手で靴をはきながら玄関を開けて飛び出した。


「うぷっ!」


 瞬間、何かにぶつかったと思ったら、それに押しつぶされそうになった。

 何事かと思えば、あげはの声がする。


「あら、早かったんですね?」

「妻がお世話になりました。いつもすみませんね、吉良さん」

「いいえ。蓮のこと、よろしくお願いしますね」


 俺を無視して、二人で話を進めるなーっ!

 文句を言いたいけれど、アキラの抱擁がきつ過ぎで、声が出ない。


「何回、家出したら気が済むのかしらね、この子ってば」


 あげはの家の玄関が閉じられた音がして、腕が緩んで顔を上げれば、アキラがじとっと、俺を見下ろしていた。

 感情的になると、アキラはカマ口調になる。…あれ…なんか…珍しく怒ってる?


「ああいう可愛いことは、ちゃんとアタシの目の前で行って御覧なさい。家に帰ったら、一言一句余さず、全部、アタシの前で言いなさい。良いわね?」

「うぇっ、嘘だろ…」


 そして俺の人生至上、最短の…家出になるのかさえ分からねえプチ家出は、速攻で終了した。

 あれよと言う間に、車に乗せられ家に連れ戻された…。



 言えるかよ!当人の前で、そんなクソ恥ずかしいことっ!





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