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たくましい彼女!  作者: 響かほり
‐番外編‐
8/10

夫婦喧嘩は犬も食わない(3)




「それで、私の所に逃げてきちゃったのね?」


 そう言って、困ったように笑ってお茶を出してくれたのは、俺の数少ない女友達のあげはだ。高校からの友達で、いろいろ事情があって、苗字が真鍋から吉良に変わってる。


「ごめんなー、こんな夜遅くに」

「ううん。大丈夫よ。蓮も疲れてるでしょ?ゆっくりしていってね」


 仕事から帰って来て、疲れてるはずなのにそう言って、微笑んで夕食まで出してくれた。

 アキラと喧嘩して夕食を喰い損ねて、余計空腹でイライラしてたけど、食事して一通り愚痴を吐きだしたら、少しすっとした。

 あげはは、ずっと黙って時々頷きながら話を聞いてくれた。

 ホント、昔から変わらねえなぁ、こう言う所。

 俺とそう身長変わらねえし、俺とよくつるんでるのに、女の子らしいし、一緒に居て癒される。俺が男なら嫁にしたい。

 で、やっぱ昔っからモテる。本人、天然ボケで、全く気付いてねえけど。

 そんなあげはが未婚で、俺が既婚の子持ちって…どうよ?いつも疑問だ。

 世の男の眼、節穴なんじゃね?


「怒らずに、旦那さんにちゃんと、理由を言ってあげたらいいのに」

「それが出来たら、苦労しないんだけどさぁ…」


 感情任せに動くのが悪い癖だってわかってるんだけどさ…アキラの前だと、つい、我慢が効かないって言うか。


「なんか、いっつもアキラは自分で勝手に計画立てて、俺の気持ちとか聞く前に行動起こすからさ…結局、言ったって、俺の意思が通った例なんてねえし…」


 結婚するときだって、計画的に子供作るし、俺に隠れて結婚式準備するわで、俺の意志とか全く無視だったし。

 けど、俺のやりたかったパティシエになれって、学校行かせてくれたし、仕事することも嫌な顔しないでやらせてくれる。むしろ、応援してくれる。

 それにはすっごく感謝してる。

 してるんだけどさ…。


「ちゃんとさ、俺の意見も聞いてから考えて欲しんだよ。俺がパティシエになるときだってさ、子供の面倒もずっと見てくれてさ」

「優しいよね、旦那さん」

「優しいのは分かってるよ。俺が勉強できるように色々工夫もしてくれたし、何でもないような顔して笑って子育てするし…だけど、すっげえ疲れた顔して寝てるのを見る度、申し訳ない気持ちになってさ…」

「でも、蓮だって、家事はこなしているんでしょう?」

「極たまに…だよ。しようとすると、俺がやるって、逆に先回りしてあいつがやっちゃうんだよ。そのせいで、あいつのペース乱すから余計疲れさせるみたいで…どこで手を出していいのか分かんねぇ。言っても、子供と遊んでやれって、放り出されるし」


 主夫業しながら、時々、料理本出してみたり、テレビに出てみたり…あいつ、ホントに、何時休んでんだろって思う。

 もう四十近いんだから、無理利かなくなるだろうし、無理すんなって言うと、体力は有り余ってるとか言って、俺を抱き潰そうとかするし!

 何だよ、あの絶倫ぶり!

 …じゃねえ。今はそれ関係なかった。

 俺はとにかく、あいつにゆっくりして欲しんだよ。


「たまには羽根伸ばしでもすりゃいいのに…そのうち息詰まるんじゃねえかって思って、色々、こっちも気は遣うけど、変に遠慮されるしさ」

「んー。蓮の旦那さん、嫌だったり、休みたかったらちゃんと言うんじゃない?嫌な事を、我慢するって言うタイプでもなさそうだし…」

「たぶん、あいつがキレるより先に、俺がキレてるから、宥める方に回ってるだけかも」


 年が一回りも離れているから、端々で子供扱いされるっつうか。


「ねえ蓮。蓮は、子供はもう欲しくないの?」

「別に子供が欲しくないって訳でもないんだけどさ…これまで自分の事ばっか、一生懸命だったから」


 仕事もようやく一人前って認められて、少し、自分にも精神的な余裕が出てきたから、そんなだった自分を振り返って、家族の為に時間を使いたいなって思った。


「最近やっと、優奈や紗奈に時間が割けるようになったところだから、もうちょっと遊んでやりたいし、アキラともゆっくりしたいかなぁって…新しく子供作るより、そっちを優先したいんだよ」


 そう言った俺に、あげはが嬉しそうに笑う。


「なんだよ」

「蓮は、しっかりお母さんと奥さんしてるんだなぁって。素敵だと思って」

「はっ!?な、何言ってんの!?」


 あげはは時々、俺が恥ずかしくなる様な台詞を、ポンと言う。





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