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たくましい彼女!  作者: 響かほり
‐番外編‐
7/10

夫婦喧嘩は犬も食わない(2)




「ママが痛いのは駄目っ!」

「血がいっぱいもダメ―っ!」


 娘たちは、行動は荒っぽいが、小さな怪我でもギャン泣きするぐらい、痛みにも血にも弱い。既に話だけで涙ぐんでいる。


「「我慢するー」」

「…そうか。じゃあ、別の欲しい物を考えて来い」

「「はーい」」


 娘の頭を撫でた後で、目尻に溜まった涙を拭いてやり、部屋に戻るよう促した。

 娘たちは手を握って素直に部屋に向かって言った。


「で、なにが何とかするって、旦那さまよ?」


 笑顔で娘を見送った後、俺はアキラを睨みつけた。


「居ても良いだろ、三人目」

「…だから最近、あんた、やたらとゴムつけたがらねえのか」


 うわっ、すっげえ良い笑顔で肯定しやがった…。


「俺は嫌だからな」

「蓮、まだ出産の時のこと怒ってるのか?」


 双子だから、帝王切開を勧められたんだけど、俺の腹に傷がつくのは駄目だとかアキラがゴネて、自然分娩でする事になったんだ。最初は。

 初産だから長時間の陣痛は仕方ないとか、軽く言われたんだけどな…波みたいに襲ってくる痛みをずっと我慢すんのは、すっげぇ苦しかった。

 で、結局、子宮の収縮が上手くいかないとかで、薬も使ったけど、それでも駄目で、結局、緊急で帝王切開になった。

 まあ、それは仕方ないし、苦しかった分、娘がちゃんと無事に産まれてくれたって、麻酔が切れかけた意識の中で、すっげえ感動したのは覚えてる。

 だから、別に、それはどうでも良い。

 俺は、産むより陣痛の方がしんどかったけど、問題はそこじゃない。

 ほぼ一日、痛みと格闘して悶えている横で、俺の姿におろおろする役に立たないが旦那と兄貴が傍に居てみろ。挙句に、俺の陣痛のことで二人して喧嘩はじめて騒いでみろ。

 体格が良過ぎる二人だけに、隣の部屋とかにいる入院している妊婦さんに迷惑かけるわ、悪目立ちするわ、煩いわで、目障りでしょうがなかった。

 腹立って、『喧嘩すんなら表でやれっ!子供が生まれるまでツラ見せんじゃねぇっ!』って、野郎どもを病室から叩き出した。

 その後で、廊下に出たアキラと兄貴は、二人して婦長さんにこってりお説教食らっていたらしいが。

 それを思い出したのか、アキラも流石に複雑な顔をした。


「それは反省しているし、もうしないと約束しただろ」


 あんな苦しい思いをしている時に、二度も三度も同じことをしてもらっては困る。

 相乗効果で苛々して人に八つ当たりするのも、二度とごめんだ。

 アキラも兄貴と絡む時だけは、小学生の餓鬼みたいにムキになるから、二人を隔離するしかねえよな。

 …じゃ、なくてだな。別にそれが嫌でごねてる訳じゃない。


「そういう問題じゃない」

「蓮が産休になったとしても、俺の収入もあるからどうにかなるだろ?優奈も紗奈も大きくなったから、昔ほど手もかからないし」

「だから…」

「仕事か?それなら…」

「だから、何でそうやって勝手に計画立てるんだよ!そもそも、俺は産まねえって言ってんだろ!」


 あぁもう、なんでアキラは、いつも人の意見聞かずに勝手に決めるんだよ。


「蓮、何を怒ってるんだ」

「怒るに決まってんだろっ」


 意味が解らないとばかりに、何時もの癇癪だくらいにしか思っていないアキラに、さらにイラッとする。


「駄目なもんは駄目だっ!あんたが諦めるまで、ベッドは別々だからなっ!」

「ちょ、何言ってんのよ、あんたはっ!そんなのアタシ認めないわよっ!」


 慌ててカマ口調になったアキラは、俺の両肩を掴んで鬼気迫った顔で俺を見る。


「何でもかんでも、あんたの思い通りにしようとするなっ!子供作るって言うなら、離婚だからなっ!」

「ちょ、何で!?」

「俺は要らねえって言ってんだよ!」

「…わ、分かった!分かったから、そんなに怒んないでよっ」

「じゃあなんで俺が、怒ってるのか分かってるのか?」

「それは…産みたくないから?」


 見当違いの答えを導き出したアキラの足を、思いっきり踏みつけてやった。


「ってぇ…蓮、どこ行くんだ」

「どこだって良いだろうがっ!ほっとけっ!」


 アキラの手を振り払って、俺は鞄一つで家を飛び出した。







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