~1日目~
まだまだ書き馴れていないのでお手柔らかにお願いします。
○月1日 くもり
ランランが日記を書くのがいいと言ったので今日から始めようかと思う。
まず我は魔王だ。
魔王という職業はないが我は生まれたときから魔王だ。
仕事は魔族領の管理。
管理といっても側近がやってくれるので特に仕事はない。
まだまだお勉強なのだ。
「暇だのう」
その日はとてもとても暇だった。
大きな椅子に体育座りしてつぶやいた。
ここは大人ばっかりでつまらない。
「魔王さま、じゃあお勉強でもなさいますか?」
教育係のランランが魔王の言葉を聞いて提案する。
ランランは黒い髪と銀の目でキラキラなのだ。
今は人型だが希少龍で龍の姿になれる。
綺麗だが怒ると怖い。
「勉強は嫌だ」
我は勉強は好きだけど今は違うことがしたい。
なかなかこの城から出してくれないので久しぶりに街に出たい。
だがランランは許してくれないだろう。
考えて閃いた。
「やっぱり我は部屋で本でも読むことにしよう」
魔王さまはそう言って部屋に戻っていった。
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さぁここからが本番だ。
魔王さまは部屋に戻って考えた。
魔力を使って移動するとランランにばれる。
じゃあ物理的に移動しなければらない。
「たしかこのあたりだったな」
小さな体で部屋の本棚を横にずらした。
そこには大人が一人通れるくらいの穴がぽっかりと開いている。
魔王さまはその穴に足を踏み入れた。
そこは暗く地下に続く階段があった。
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「脱出成功か」
魔王さまは城の外に出た達成感に喜んだ。
実はこの脱出は初めてではない。
何度か魔王さまはこの道を通って外の街に出かけてる。
けれど誰もこれを魔王だとは気づいていない。
穴を出た先は緑豊かな森が広がっている。
そこには色々な種族が住んでいた。
「おっ!!あそこにバトリッカがおるな」
バトリッカはウサギのような体つきで羽が生えている。
かわいい姿だが前歯は鋭く毒があり人間なら即死に近い猛毒だ。
魔王さまはそのバトリッカを追いかけた。
空を飛ぶバトリッカは捕まえるのは大変だ。
けれど魔王さまは地に降りたバトリッカの背後にまわりゆっくりと手を伸ばす。
ガリっ
「あ!!」
魔王さまに気が付いたバトリッカが伸ばした手を齧った。
もう一度言うがバトリッカは猛毒の前歯がある。
そんなバトリッカに齧られた魔王さまだが血が数滴垂れただけでなんの変化もない。
齧られた傷もすぐに塞がり痕もない。
バトリッカは魔王さまを齧った瞬間にボロボロと炭のように崩れていった。
「う~」
魔王さまはちょっと悲しくなった。
魔王さまはしばらくそこに残った炭を見てた。
「すまなかったな」
魔王さまは近くに咲いていた花を炭の前に置いた。
やっぱり我は魔王なのだ。
ちゃんと自分の行動には注意をしなければならない。
ちょっと気分が落ち込んだ。
もう街に行ける気分ではないので今回はやめておこう。
その日は来た道を戻っていった。
無事に魔王城に戻ったがランランに抜け出していたことがバレてさんざん怒られた。
今度こそは街に出かけよう。
我は立派な魔王になりたい。
その為には色々見てみたい。
いつかは人間の領土にも行ってみたい。
魔王さまが城に帰った後。
消し炭の中から小さなバトリッカが顔を出した。
血は魔力を宿し、生命力を持っている。
一旦消えてしまった命を再生させたのだ。
魔王さまが帰った後の出来事だった。