EPISODE 9「風の刃」
突如電車で起きた切り裂き魔事件。乗客全員と車両を含め一刀両断された。
犯人である切り裂き魔は黒いフードを被り、袖についたファスナーの下にはカマキリのような鋭い鎌を隠し持っている。
その事件を聞きつけた特異課は妖狩・『神狼』こと八雲 風雅に新たなミッションが発令された。
『切り裂き魔を殲滅せよ。』
・対象:妖
・推奨人数一人
というわけで風雅はすぐに特殊防護服を装着し、紅いマフラーを首に巻く。
花と雷牙も作戦室に到着し、「きさらぎ駅」同様オペレーションを担当する。
「風雅、次に狙われるのはおそらく、大江戸線だ!」
「何で分かるんだよ兄貴。」
「この事件が起きた後、鉄道会社はほとんどの路線を運行停止にしたんだが、まだ走っている路線があるんだ。」
「早く止めないとまた切られちゃうの!?」
「安心しろ花ちゃん、今度は全員助けるから…!」
風雅は覚悟を決め、バイクに跨り、エンジンを吹かしてターゲットの元へと向かう。
ービル 屋上ー
屋上では黒いフードを被った不審な男が線路を覗いていた。
そしてニヤけながら袖のファスナーをゆっくり開けていく。
開け終わるその前に後ろから声を掛けられ慌てて手を止めた。
「誰だ!…っ!?」
「お前か切り裂き魔ってやつは…。」
「だったら?どうするわけ。」
「お前を倒す。それだけさ…。これよりミッションを開始する!」
他の妖は風雅、もしくは妖狩の姿を見ただけで多少怯むがこの男は恐れる物がないのか舐めた態度を取って妖狩をものともしない。
コードネームは“カマキリ”だ。
風雅は走り出して先制攻撃を仕掛けようとするが、切り裂き魔カマキリは途中まで開けていたファスナーを全開にして鎌を振るった。
危険を察知!した風雅はすぐに膝を曲げて仰け反り、マトリックスさながらの姿勢で突然飛び出る斬撃を回避した。
「へー俺の斬撃避けれるんだ…やるじゃん。」
「あぶねぇなこの野郎…もう少しで首飛んでたぜ…!」
その隙にカマキリは走り出してビルから仰向けで跳び下りた。おそらく目的の電車に高所から飛び乗るつもりだろう。
続いて風雅もビルから飛び出してカマキリの後を追う。
そうして二人は電車の上に着地し、車両が大きく揺れた。何も知らない乗客たちは揺れに怯え、地震、脱線と様々な憶測を立てていた。
車掌は会社側から異常事態の報告を聞いていたため、すぐに乗客に危険を知らせた。
車両の上では二人の妖が攻防を繰り広げていた。カマキリは自慢の鎌を振るって斬撃を繰り出すが、風雅はすんでの所で回避し、鎌に触れないように腕を掴んでカマキリを取り押さえる。
「答えろ、何でこんなことをするんだ!」
「これから地球の支配者は俺たち妖だ!妖だけの楽園を創るのに人間は邪魔な存在、だから片っ端から消してんだよ!お前もその力があるなら何故人間を殺さない!」
「俺は妖狩だ。何と言われようが人間の笑顔と自由を守る…自分の勝手な価値観や快楽で殺しているお前らの方が邪魔だ!」
カマキリは空いている左手から鎌をファスナーごと切り裂いて出現させ、風雅に反撃する。
両手に鎌を装備したカマキリはフードを脱いだ。彼の顔の周りは緑色に変色していた。
さらにカマキリは風雅を蹴飛ばし、両手の鎌で車内を切り裂き、車内へと侵入した。
「さてと、お前たちに質問だ、この世界に人間は必要だと思うか?」
乗客は怯えて固まってしまい、答えることも息を吸うことすら出来ない。カマキリはニヤけて鎌を構える。
「待て虫野郎!」
風雅も上から車内に降り立ち、カマキリに羽交締めを掛ける。
「みんな、早く違う車両に移るんだ!」
「邪魔すんなこの犬が!」
カマキリは風雅の顔に自分の後頭部をぶつけて拘束を解き右手の鎌で斬撃を繰り出す。
先程同様に回避しようとするが、密室である車両では充分なアクションは取れず、胸を切られてしまう。
「さすがにその装備だと刃が満足に通らねぇな…じゃあもっと近くで切ってやるよ!」
特殊防護服は頑丈だが、流石に胸部には切り裂かれた跡が付き、血が流れる。止血する猶予は無く、カマキリはすぐに鎌を振るって攻撃を繰り出す。
すぐさまカマキリの腕を受け止めて顔に回し蹴りを一発食らわせてからさらに拳に風を纏わせ腹にパンチを食らわせる。
とうとう怯むカマキリは両手から斬撃波を繰り出して反撃する。
後ろには車掌がいるため避けることは出来ない。だから両腕を交差して受け止める。さらに華麗な動きで斬撃を出し続け、車掌を守るために両腕を酷使する。
傷は先程より深く、両腕はボロボロになってしまう。
しかし奮闘むなしく風雅の体から例の黒い霧が吹き出し、目眩がして膝を付いてしまう。
そして一閃の斬撃が車掌を殺害してしまう。
「お前のお得意のパンチはもう出せないぜ?」
【風雅くん大丈夫!?】
【ここは一時離脱しろ、お前の両腕がこれ以上使えなくなれば奴はもう倒せない!】
「大丈夫だ…兄貴、花ちゃん。俺の武器は…拳だけじゃねぇ!」
黒い霧の影響から目眩で体勢を崩してしまったが、再び立ち上がる。
乗客は別の車両に移り、民間人は誰もいない、二人の妖が向かい合い緊張が走る。
「その腕で何ができる…もう一度俺の鎌を受ければお前の首は地に落ちる…。」
「やってみろよ…!」
車掌は殺されたが、電車は未だに動いている、そして勝負は一瞬にして決まるのだ。
ガタンッ!と動いた瞬間にカマキリは右手の鎌から風雅の首目掛けて斬撃を繰り出す。
しかし、風雅は一瞬でしゃがみ込んでから床に手を付いてから回転しながら足払いを披露した。
その動作と同時に風の刃が射出され、カマキリの胴体をすり抜けた。
カマキリは何が起こったのか分からなかった。ただ何も考えられないのだ、全てが無気力、思考を放棄した。
「俺の新技…名付けて“鎌鼬”っ!」
カマキリが何も考えられないのは妥当だ。何故ならすでに彼の胴体は“鎌鼬”によって切られ、上半身が地面に付いていたのだ。
「お前は神になれない…あの世で変われよ…。」
【風雅、ミッションはまだ終わってない!車両を止めるんだ!】
風雅は胸を抑えながら車両の上に上がり、電車を止めるためにボロボロの腕を前に構えて風を集める。
【風雅くん何をする気なの?】
「こう…するんだよ!!」
風雅は車両全体に風のバリアを作り出し、スピードを軽減させようとしたのだ。ただそれには多大なエネルギーを消費する。
今の風雅は胸や腕がボロボロの状態だ、長くは持たない。
「長く持たないなら最速でやるまでよ!ぐおぉぉぉぉ!!!!」
暴れ馬の手綱を思い切り引いて制御するように風のバリアをさらに引っ張るとスピードがだんだん減少していく。
そして車輪がギィィィィィ!と高く大きい音と火花を散らして、車両を止めることに成功した。
乗客は急展開に次ぐ急展開で、しばらく固まっていたが、徐々に落ち着き、皆安心して喜びに満ち溢れる声が外にいる風雅にも聞こえていた。
「はぁ…はぁ…ミッション…コンプリート!」
見事妖を倒し、車両も事故に合わせず止めた風雅は全てのエネルギーを使い果たし、力が抜けて倒れてしまった。
「風雅くーーん!」
「あっ花ちゃん…。」
花が箒に乗って回収しに来てくれた。
箒の先端に輪っかを作り、風雅をぶら下げながら飛行し、駅に停めてあったバイクの場所まで送り届けた。
「ねーこれすっごい恥ずかしいんすけど…。」
「雷牙くんがこの輪っか用意したんだもん。文句あるなら雷牙くんに言ってよー。」
「あいつ帰ったら覚えてろよ…。」
花は怪我を心配して声を掛けるが、妖という新人類は自己再生能力が高く、胸の傷もすでに塞がり両腕も元に戻った。
「え、じゃあ私の回復してたってあの行為は無駄だったの!?」
「え?あ、いや無駄じゃないよ。ありがとね花ちゃん。」
風雅は爽やかな笑顔でサムズアップをして花の頭をぽんと撫でた。
花は恥ずかしそうに足をモジモジと動かして頬を赤らめた。
しかし二人は気づかなかった、風雅の右手からはまた黒い霧が現れていることに…
EPISODE 9「風の刃」完
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