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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
『女王の器を奪還せよ。』

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EPISODE 66「血楽園」

花に受肉し、完全顕現を果たした「支配」を司る厄災の一体・赫夜。


彼女は花の血を操る術式を勝手に改造し、部屋全体を血の海で満たしたのだ。


「“血楽園けつらくえん”…!」


風雅の足元は完全に血に浸かり、壁や天井でさえも赤く染まった。


「お前…何が目的なんだ!」


「厄災は厄災の役目を果たすのみ…妾のこの力で全世界を“支配”する!」


「そんなこと、絶対にさせない…!」


風雅が再度赫夜に接近を試みようとした直後、天井から何かが血の海に落ちた。


海から浮かび上がったのは鴉丸たちに攻撃を仕掛けた特殊部隊の亡骸だった。


「近くに死体があったものでな、お主にはこれから起こることを知ってもらう。まずは第一の幕「“脹相”」!」


赫夜が唱えたと同時に浮いていた特殊部隊の亡骸が膨らみ始めた。

亡骸は腐敗臭を放ち、その姿は醜く、装甲が邪魔になってギチギチになっている。



            九相図

美しい女の死体が腐って徐々に骨となる段階を九つの絵で表した仏教絵画である。

その目的は死を直視することで肉体や生への執着を捨てることで悟りを求めること。



死体ならいくつも見てきた、しかし目の前で腐敗していくのをまじまじと見るのは初めてだった。

同時に彼自身の身にも異変が起きていたのである。


体から灰が舞っている。

妖はその命尽きる時全身が灰化して崩れる。

さらには特殊部隊と同じように体から腐敗臭が漂っていた。


「なんだこれは…!」


「おぉ、そういえば死体がまだあったのぉ“動く死体”が…。」


「“血楽園けつらくえん”」は人間、妖関係なく無条件で死体と同じ扱いになる。

そうしてこれから起こる九つの肉体変化に耐えねばならない。

次の肉体変化が起きるのは3分後だ。


肉体がより死に近づいたからか定かではないが、風雅の体から薄っすらと『神狼』が出てきてしまった。


「え、なんで!?」

『おいまずいぜ。このままだと俺たち一緒に消えちまうぜ?!』


「だったらどうするよ…。」


『…仕方ない、ここは協力してやらんでもないぞ!』


『神狼』のその上から目線の態度には目をつぶりつつ、同じ存在同士一時共闘という感じだ。


「発動した瞬間に勝ち確に近い能力だな…。こういうのってチートって言うのか…?」


「殴れるか?この妾を、最愛の娘の肉体を持ったこの妾を!」


「やらなきゃ助けられんねぇんだよ!」


体から灰が溢れようとも風雅は拳に風を纏って赫夜に近づく。

今度こそは覚悟の決まった顔つきになり、先程まで飄々としていた赫夜も風雅から放たれた殺気を感じた。


「殺してやる。」と視線から感じる圧倒的な殺気、

かつての神話の時代人間たちを恐怖に陥れていた自分が初めて感じた恐怖。


「…!、来るな!」


赫夜は血を操って血の海から無数の槍が飛び出して風雅の方へと真っ直ぐ飛んでいく。


「『神狼』っ!」


『命令すんな!』


四方八方から飛んでくる血の槍を『神狼』は高速ラッシュで全て弾いた。

そして拳は花、もとい赫夜の顔に直撃した。


「俺の拳は…お前の魂だけを壊した!」


その直後、赫夜の体内を衝撃波が駆け巡り、魂に傷を付けた。

心臓を鎖で縛られた上に握り潰されたような感覚だ。


「ごめん花ちゃん…!」


赫夜は吐血して、胸を抑えて膝をついてしまった。


「お前の魂を完全に壊して、花ちゃんの魂を浮上させる!!」


「ふ…ふふ…やってみるがいい小僧よ…妾に膝をつかせたこと後悔するがいい!第二の幕「“壊相”」!」


赫夜が風雅の服に触れた瞬間に第二幕が開始。服は弾け、皮膚に亀裂が入ってボロボロになってしまった。


「がっ…!」


さらに赫夜は剣を使って風雅の左肩を切りつけ、その切り口から巨大な蛆虫が這い出し、全身にうみのような吹き出物が現れた。


「近づけさせなければ良いことよ!」


赫夜は負傷した風雅を蹴り飛ばして血の海に落とした。

さらに第三の幕である「“血塗相”」により特殊部隊の亡骸からは溶けた脂肪や血液などの体液が滲みはじめ、

風雅の血液は黄色く変色し、体のバランスが取れなくなっている。


「次の第四の幕「“膿欄相”」でお主の体は溶け始める…!」


「溶ける前にあんたを引っ張り出す…『神狼』、“武装”!!」


残りの力を振り絞り、ガントレットを武装する。しかし先の『鬼神オーガ激情態』との戦闘によって装甲には亀裂が入っている。


「満身創痍…そんな体で何が出来る。血管が壊れておるのじゃ妖力操作もままならんじゃろ。」


それでも諦めないのが風雅だ。全身に残った妖力を放出し、翡翠色の妖力は風の刃へと姿を変え、血の海を切り開いた。


ガントレットのブースターから風を噴射するが、同時に亀裂から妖力が漏れ出てしまっている。


「化物のくせに妙に頑張りおって…!」


「化物はどっちだ…勝手に身体入って勝手に奪って我が物顔で暴れまわる…あんたがよっぽど化物だよ!」


「道を切り開いてくれたおかげで殺しやすくなったわ!!」


赫夜は剣を構えて割れた海にそのまま突っ込んでいく。風雅は一切動じることなく、右手を引いて拳を構える。


赫夜は風雅のギリギリまで近づき、剣を両手持ちにして唐竹割りのように一刀両断しようとしたその時だ。


「ふんっ!!」


亀裂の入った拳から繰り出された全身全霊の「“疾風弾”」が赫夜の腹に直撃。

翡翠色の狼のオーラが彼女の身体から飛び出した後消滅した。


当の本人は口から吐血したがまったく効いていなかった。


「万策尽きたか…魂も揺らいでおらん。」


「それはこれからだぜ…女王さま!」


その直後風雅は赫夜の頬を掴んで引き寄せ、大胆な口づけを交わしたのだった。


               EPISODE 66「血楽園」完

           次回 第67話

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