EPISODE 5「如月」
『異界の駅を探索せよ。』とのミッションを受け、風雅は一人怪しげな電車に乗り、異界の駅へと到着した。
異界では双子の兄・雷牙、花との通信が不安定であり、言葉が途切れてしまう。
風雅は埃を被った駅名が書かれた看板を指でなぞりながら解読し、そして顔が青ざめる。
「きさ…らぎ駅…?」
風雅が青ざめたのも納得で、かの有名な都市伝説である「きさらぎ駅」と駅名が同じだった。
「兄貴…駅名は…「きさらぎ駅」だ!」
「まさ…本当に…ったのか!」
ノイズが激しいので解説は現界にいる雷牙と花に任せよう。
「きさらぎ駅…とある女性が迷い込み、ネット掲示板にてリアルタイム実況を行ったことで有名になった都市伝説だ。」
「リアルタイム…?!その人は無事だったの?」
「実況中に消息を絶ったが7年後、現界に戻っていたことが明らかになった。今回は…どうだろうな。」
花はその発言を聞いて尚更心配になった。
ー異界ー
「相変わらず無線が繋がらないけど、ミッション開始だ…。」
風雅は電車の方を振り返るとすでに線路から消えていた。
「は?」と声を出したが駅にはホームもなく、ただ暗い色の草原が広がっていただけだった。
人工物はこの線路のみ。風雅は線路に降りて道なりに歩いてみることにした。
「最初にこの世界に迷い込んだ女性の書き込みによると、ゴールはあの山だ。」
風雅が指を差したのは、線路を辿ってその先のトンネルを抜けた先にある大きな山だ。その山へと向かって歩き出す。
一度立ち止まって草や空気に手を触れさせる。
「空間は不気味に赤いが空気は俺たちの世界の物と変わらないな…普通に息できるし。だがこの閉鎖的な空間だ食料が無けりゃ詰むな。」
不気味に浮かぶ赤い月の光が線路沿いを走る風雅を照らし出す。
そろそろトンネルに差し掛かるというところで、風雅の背後から誰かが声を掛けてきた。
「おいおいそこは危ないよー。」
それは中年男性のような声色であるが、彼とはまったく面識のない声だった。
「誰だ…もしかしてあんたもここに迷い込んd…!?」
線路の上に立つその男に声を掛けたが、風雅は男の姿を見て言葉が詰まってしまった。
その男には片足が無かった。片足が無いにも関わらずブレずに真っ直ぐ直立し、笑顔で手を振っている。
「この世界の住人か!」
片足の男は徐々に跳びながら近づいてくる。風雅は逃げ出そうと踵を返そうとしたが、そこで今朝見た夢を思い出してしまう。
全身が焼けただれた人間たちに群がられて苦しんだ悪夢と片足の無い男が重なってしまい、足が地面にくっついたように離れられなくなってしまった。
さらに過呼吸を風雅が襲う。
「はぁ…はぁ…はぁ…!来るな、近づくな!!やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」
風雅が膝をついたところに、体から突如黒い霧が吹き出し、彼の体を覆うとしていた。
「やめろ出てくるな…!」
「おーい、大丈夫かーい。オジサンもうすぐ着くよー。」
徐々に男の声が近くなってくる、風雅は苦しみを我慢し、下を向いているため男に気を割けない。
「風雅、聞こえるか風雅!」「風雅くん!」
「!?」
今まで途切れ途切れになっていた無線の音がこの時だけははっきりと聞こえた。二人の声が耳に入った風雅は気を取り戻し、黒い霧も無くなった。
改めて踵を返して片足の男から逃げ出すことに成功した。
そして暗いトンネルをくぐり抜けるといきなり山の入り口へとたどり着いていた。
「え、もう?」
振り返ると自分は高所に立ち、トンネルは下に鎮座していた。
仕方なく上を向くと山の頂上が発光していた。
風雅は山を登りながら先程の怪異を振り返り、改めて「きさらぎ駅」の感想を報告書に書く。
「空気は正常、瘴気はなし。だが怪異に遭遇すれば
完全な安全性は保証できない…。」
風雅は前に迷い込んだ女性の前例がある故山に出口があることは分かったが、知らずに迷い込んでしまった人は何も出来ずに怪異の餌食になるだろう。
その後は何事なく、風雅は山頂にたどり着き光に包まれた後、
彼は見知らぬ土地へと飛ばされていた。現界へと帰ってきたのだ。
「風雅、聞こえるか?」
「!、あ、あぁ聞こえるよ。帰ってきたのか…。」
「無事で帰ってきて何よりださすがは俺の弟。ミッションコンプリートだ。」
そして風雅は特異課に今回の調査内容をまとめて提出。
よって、
・「きさらぎ駅」自体の空間に毒素や瘴気などは確認されなかった
・しかし片足の男や突然移動するトンネルなどの怪異を確認。
・そして午後4時44分の列車に乗らないこと。
この報告を受けて数日後、特異課は午後4時44分に走る列車を捕捉し、間髪入れずに即破壊。
しかしこれが「きさらぎ駅」への入り口を断絶したとは限らない、もしかしたら我々の生活の中に新たな時空の歪みが生まれ、異界の駅への道が開かれるかも知れない…
EPISODE 5「如月」完
次回 第6話




