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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
『吸血鬼を退治しろ。』
3/20

EPISODE 3「夜警」

とある女性から友人を殺害した吸血鬼を倒して欲しいという依頼を受けた風雅と花は、コウモリの特徴を持った妖に遭遇する。


 コウモリ型の妖は「BAT」と名付けられ、歯をむき出しにして二人を威嚇する。


「お前…ターげットの女じゃなイ…!誰ダ!」


「特異超常現象捜査課の八雲 風雅。てめぇをぶっ殺す男の名前だ覚えときな!」


「お、男か、男の血は不味イ!男は殺ス…!」


「BAT」は羽をバタつかせながら風雅に向かって走り出すが、非力で細い身体はパワー特化の風雅に簡単に抑えつけられてしまった。


腕を抑えていた風雅だったが、ふと「BAT」の顔を見た時にとあることに気づいた。


歯の上から上書きするように二本の鋭く細い前歯が生えてきたのだ。


(こいつ、猫の爪みたいに歯を出し入れできるのか!前歯がカミソリみたいになってやがる…!)


コウモリの中でもチスイコウモリの特徴を持つ「BAT」の前歯は鋭く、血液を吸うことに特化している。

そして染み出た血液を舌で吸うのだ。


通常のチスイコウモリとは大きさが違うので吸われる血液もオリジナルの倍だ。


「このっ!」


風雅は拳に翠の風を纏わせて「BAT」の顔を殴り、腹を蹴る。


「こいツ、強い…はっ!紅いマフラー…お前『神狼』カ…!!」


「正っ解。何、俺は有名人なのか?」


「俺ヲ妖にした白い服着た男たチが言っていた…!黒い服と紅いマフラーを着けた男には気をつけロと!」


「白い服…だと!」


風雅はその単語を聞いた途端に青筋を立てた。


「そいつらはどこに居る、吐け!」


「知らなイ…忘れタ!俺は…ただ血を吸うだけダ!!」


「BAT」は踵を返して、汚いよだれと鋭い犬歯を剥き出しにして花へと襲い掛かろうとする。


初めて妖に襲われそうになる花は恐怖で体が固まってしまい受け身の体勢を取り損ねてしまう。

「BAT」が花の首に噛みつこうとした。


            ガブッ


花はもうだめだと覚悟したが、痛みは無かった。

恐る恐る目を開けた。


「あれ、痛くない…?、風雅くん!?」


「ぐっ…!」


花の目の前で風雅が「BAT」の牙をその腕に受け止めていた。

蜘蛛男の鋼糸でも傷つくことが無かった腕の装甲に「BAT」の犬歯が食い込んでいた。


「何で…!」


「君を施設から連れ出す時に言っただろ…俺がずっと護るからって!」

「キュン!」


「くソ、男の血だ…マズい、まずイ!口直しだ…!」


「BAT」は風雅から吸った血をぺっぺっと吐き出そうとした。


「くっ、苦い…口直しダ!一昨日の女が残っていたはずダ!」


「BAT」は口直しと称して飛び去ってしまった。

風雅はコウモリに噛まれた影響か、その場で倒れてしまう。


「風雅くんしっかり!」


「吸血の途中で牙が抜けたから血が止まらねぇ…。花ちゃんだけでもコウモリを追え、後は他の妖狩エージェントに連絡して引き継げばいい、そうすればミッション失敗にはならない!」


「でも風雅くんはどうするのよ!」


「俺はもういいんだ…別に妖狩エージェント一人減ったところで何も影響はないから…。」


風雅の肉体には抜かれて少なくなった血液と「BAT」が体内に送り込んだ毒があり、風雅に残されたのは死ぬ道だけなのだろうか…。


その時だった、風雅の弱った台詞を聞いた花の心臓がドクンと音を立て鳴り、脳はさらにシワを作ったのだ。


そして無意識下で勝手に手が動き、風雅傷口に手を当てる。


「花ちゃん…?」

「しっ、集中してるから…。」


風雅が抱かれているのは、いつも朗らかで笑顔が素敵な花ではなかった。

妙に冷静で、鋭い目つきをしている。


そして花が手を当てている所から出血は止まり、体からは紫色の煙が立ち昇る。


「あれ、体がダルくない…!まさか花ちゃんが?」


「え、何が?」


明らかに止血、解毒処置を施したのは花本人だが、本人にその記憶は無かったのだ。

まさかあれは花ではない別人だとでも言うのか。


気になるが今はそんなことを気にしている暇はない。一刻も早く依頼者を守らなければ。


風雅は花にお礼を言ってすぐにバイクに搭乗し、花も箒に乗ってすぐに通夜中の被害者宅へと向かう。


           ー被害者宅ー


 

 案の定「BAT」は被害者宅へと飛来し、一昨日楽しみにととっていた依頼者へと襲い掛かる。


「女、女だ!」


「嫌、離して!!」


被害者女性の両親も依頼者を守ろうと立ち向かうが相手は超能力を扱うバケモノ、刃が立つわけでもなく軽々と倒されてしまう。


部屋もボロボロになり畳は「BAT」の爪で傷つき、葬儀屋も一瞬にして殺されてしまった。


「吸わせロ…血を吸わせろ!」


「助けて…!!」


依頼者は両手を「BAT」に掴まれて抵抗することができなくなる。助けを求め、涙を浮かべたその時だった。


妖狩エージェント、ミッションを完遂する!」

「!?」


風雅改め妖狩エージェント・『神狼』がバイクに乗りながら被害者宅へと突入する。


「その人から離れろコウモリ野郎!」


風雅は先程ド◯・キ◯ーテで買ったニンニクのネックレスを「BAT」の顔の前に突きつける。


「げっ、ニンニクだト!?やめろ、俺ハニンニクが苦手なんだ!」


「うそ、効いてる…?」


「おぉ、やっぱり効果あるんだな。ニンニク。」


嫌いなニンニクの臭いを嗅いで鼻を抑える「BAT」は口の形を筒のような形に変形させて、耳を折りたたむ。まるで大砲のような頭部へと変わった。


「コウモリ…はっ!みんな耳を塞げ!!」


風雅の声で花、依頼者、被害者の両親はすぐに耳を塞いだ。 


           キィィィン!!


筒状の口から放たれた高音の超音波とそれによって起きた衝撃波で家にあるものは人間だろうが棺桶だろうが吹き飛ばされてしまう。


風雅は耳を塞ぐ動作が遅れ、鼓膜が破れてしまい、両耳から血を吹き出してしまう。


           ー超音波ー

コウモリ特有の超音波を攻撃型の能力に独自にアレンジを加えた「BAT」の術式。さらに超音波と共に衝撃波も放つ。


さらに追い打ちを掛けるように超音波+衝撃波の攻撃を放つ。


風雅は倒れる花たちの前に立ち、両手を前に出して軽減させようとする。


衝撃波の影響で両腕の骨、筋肉は軋む。ついには膝をついて倒れてしまった。


「このマまでは…俺は殺サレる!ここハひとまず退却ダ…。」


「BAT」は自分の敗北を悟ったのか、翼膜を広げて家から飛び去っていく。


「逃がしてたまるかよ!花ちゃん、箒借りるよ。」


「はい!」


花は空飛ぶ箒を渡し、風雅は箒をバイクの後ろにくっつけ、夜の空に逃げた「BAT」を追いかけた。


 

 さらに高く上昇し続ける「BAT」をついに捉えた風雅はバイクを走らせながら箒の馬力を借りて「BAT」が飛んでいる位置まで飛び上がる。


「何っ!?」


遂にはシートの上に立ち、そこからさらに高く跳び上がる。


「“疾風弾”!!(キックVer)」


右脚に風を纏わせて翼膜を羽ばたかせながら必死で逃げる「BAT」の背中に風雅の渾身の飛び蹴りが炸裂。

そのままあまたの女性を襲ってきた吸血鬼は強烈なキックを受けながら地面に衝突した。


空き地へと落下した時には、地面に巨大なクレーターと衝撃波が発生した。

風雅が放ったキックは「BAT」の背中に食い込み、足を抜こうとすればその足は血まみれになり、滴っていた。


花と依頼者は風雅を追いかけ、衝撃波の出来た空き地へと追いついた。


依頼者が見たのはクレーターの中で吸血鬼の体を貫き、血が滴った足で歩きながらこちらへと歩く風雅の姿だった。

「BAT」は完全に死亡し、身体は灰化し消滅した。


「よし、ミッションコンプリートだ。」


「あなたも…アイツと同じバケモノなの…?」


依頼者は相手を衝撃的な方法で殺害した風雅にも怯えてしまう。


「そうだよ。俺もコイツと同じバケモノだよ…帰ろう花ちゃん。」


「うん…。」


「これで防衛ミッションは終わった。晴れてあなたは夜でも安心して歩くことができる、ご友人はお悔やみ申し上げます。」


妖狩エージェント二人は背を向けて帰ろうとする。


「風雅くん、弁明しなくていいの?」


「いいさ、仕事柄バケモノと呼ばれてるのは慣れてる。」


慣れてると言っていても、風雅はどこか淋しげな表情を浮かべていた。そのまま帰ろうとした時だった。


「あの、ありがとうございましたっ!」


依頼者は深々と頭を下げていた。バケモノと呼んでしまったが二人にお礼を言ってくれた。

風雅は固くなっていた顔が緩んで優しい笑顔でサムズアップを見せた。


           「良い夢を!」


                 EPISODE 3「夜警」完


           次回 第4話

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