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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
『毒蛇を駆除せよ。』
27/35

EPISODE 27「神の手」

女だけを狙う妖『コブラ』と対峙した琥珀。しかし戦闘の最中に腕を噛まれ、猛毒が右腕を侵食してしまう。


妖狩エージェントとしての覚悟を決め、上腕に毒が回る前に右前腕を手刀で切断した。


何とか『コブラ』を撃破したものの、体内に残った毒と切断した時の激痛で気を失いその場で気絶してしまった。


風雅たちはすぐに作戦室の扉から琥珀の元までワープしてすぐに抱き上げる。


「琥珀ちゃん、しっかりして!琥珀ちゃん!!」


「すぐに“本部”に運ぼう兄貴!」「あ、あぁ…。」


雷牙は下を向いて地面や側溝を見つめ、琥珀が切断した右腕を探していたが、どこにも無かった。

おそらく毒で溶けたか、壊死した故に灰化して消滅したかだろう。

惜しいがここは諦めて琥珀を“本部”とやらに連れて行くことにした。


風雅は作戦室で琥珀を背負って扉の行き先を“本部”に設定し、走る。


       ー特異超常現象捜査課・本部ー


4人が辿り着いたのは京都にあるという特異課の“本部”。巨大な施設で妖狩エージェント以外の職員たちが書類作業に明け暮れていた。

風雅たちはすぐに医務室がある方へ走り、とある部屋の引き戸を勢い良く開けた。


「先生!」


「おや、久しぶりだね風雅くん。今日はどうしt…!?琥珀くん何があったんだい!」


風雅が入った医務室には白衣とメガネを掛けた青年がいた。しかし目の下には濃い隈が出来ており、かなりお疲れの様子だ。

琥珀の容態を見た青年は一瞬で顔が青ざめ、すぐにベッドへ寝かせるように指示した。


彼の名前は 「椿つばき」 。特異課で唯一の医者であり、特異な術式を持っているため、組織では重宝されている。


ベッドに寝かせられた琥珀の身体を見た椿は風雅に事の発端を聞く。


「こんなになるまで…一体何があったんだい…?」


「毒使いの妖と戦ったんです。でもその時に腕噛まれて、自分で切ったんすよ。」


「なるほど…でも見た所妖を倒したせいか毒は消えているね。問題はこの腕だ。すぐに取り掛かろう…。」


「珍しいな。滅多に自分の力使わないくせに…。」


雷牙は壁にもたれて椿に言う。風雅も「うんうん。」と相槌をうつ。

花は心配なのかずっと風雅の袖を握っている。


「風雅くん、琥珀ちゃん治るかな…?」


「治るさ。椿先生の術式は少々珍しいんだ…“神の手”と言われ現代医学の全てを覆す能力さ…。」


「“神の手”なんて大袈裟な…ただ私は、私と同じ日にこの力を得た君たちを助けたいんだ。さぁ始めるよ!」


椿は琥珀の欠損した部位に手を当て、力を込め始めた。

当てている部分から緑色の光が湧き出し、徐々に光は強くなる。

そして腕があった部分をなぞるようにゆっくりと手を動す。すると動かした後から腕の形が創られていく。


「腕が…戻ってる!」


「先生の術式 ー「“万物復元リカバリー”」ー 。全てを復元するインチキ術式だ。物や人を治す(直す)術式は中々ないんだ。それ故重宝されている。」


「空気中の“妖力”を触媒として発動し、欠損した部位、破壊された部品全てを復元することができる。」


            ー妖力ー

妖力は全ての妖のエネルギー源である。術式は妖力を消費して発動される。血液と共に体内を循環している。術式の酷使で妖力が焼き切れると弱体化、生命活動の低下というデメリットが起こる。


椿の術式 ー「“万物復元リカバリー”」ー は妖力の消費が他の術式よりも激しく、

一度使うだけで三日分休憩なしの運動をした時と同じくらい疲弊してしまう。


琥珀の新たな右腕が完成するまであと一歩の所で椿は咳き込み始めた。鼻血も出始めた。


「あんた…もしかして前も使ったろその力。充分に休んでないくせに無理すんなよ。」


「私は医者だ!傷ついた命を見殺しにすることなど絶対にしたくない…君たち妖狩エージェントも同じだろ。」


そして琥珀の右腕は完璧に再生し、体内に残った微量な毒素も消え失せた。

椿は大量の汗をかき、手で鼻血を拭った。

毒も消え、腕も治り、穏やかな顔をして眠っている。


「このまま安静にしていれば直に目を覚ますでしょう…。風雅くん、君も怪我をしているね治してあげよう。」


椿は風雅の肩に向かって手を伸ばすが、風雅はその手を払った。


「いいよ、俺もう治りかけだしそれにあんたさっき術式使ったろ、そろそろ死ぬぞ!?」

「治りかけならあまり消費しないだろう?」


椿は風雅の肩に触れ、術式を使用。骨折などの怪我が全て回復し、完全な状態に戻ったのだ。

だが花は一つの違和感を発見した。


「あれ、でも顔の傷は元に戻らないんだね。」


「私の術式は時間の経った傷までは戻せない。唯一の欠点だよ。君が花くんだね…“今は幸せ”かい?」


「え、えぇ…風雅くんたちがいるから今すっごく生きてて楽しいです!」


椿の意味深な質問に一度困惑したが、笑顔で応えた。彼女のその笑顔を見てまた笑顔で返した。


「琥珀くんは私が見ていよう。まだ安静にしておいたほうが良さそうだからね。」

「そうか…頼んだ先生。」



風雅たちは琥珀を椿に任せ、医務室を後にした。彼らが去った後もう一つのベッドの上に椿は気を失うように座り込んだ。

やはり無理をしていたのだろう。一日に三日分の疲労が伴う術式を連続で二回使ったのだ。六日分の疲労が一気に押し寄せ、そのまま椿は眠った。


その頃風雅たちはしばらく本部の中を歩くことにした。初めて来た花に見せるために。


「この本部は京都のどこかにあるんだ。正確な場所は君にはまだ秘密。」


「人はそんなにいないみたいだね、書類作業してるけど。」


「最近人手が少ないんだよ、初期メンの方の妖狩エージェントは俺入れて“9人”しかいないし。書類は世界各国から寄せられた妖、呪物、怪奇現象の報告をまとめてあるんだ。」


半分ブラックな職場に見えるかもしれないがこれが特異課の現状だ。

花は椿のことが気になり、風雅に彼のことを聞く。


「椿先生…何で私にあんなこと聞いたんだろう。」


「先生もさ、デイブレイクの被害者なんだよ。それで奥さんと生まれたばかりの子供を目の前で亡くした。

自身も妖となり社会からは死人扱い、医師免許も剥奪。おまけに俺たちと一緒に施設に収監されて人体実験の繰り返し…。

花ちゃんも似たような経験してるから聞いたんだと思うぜ。」


「そっか…椿先生も幸せだといいな。」

「最近よく笑うよあの人。たまに飲みに誘ってんだ。」


その時風雅たちのケータイに一件のメールが入った。送ってきたのは鴉丸司令官。


「本部の司令室に集まれ」とだけ書かれており、すぐに向かうことにした。


               EPISODE 27「神の手」完 

           次回 第28話

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