EPISODE 26「失う覚悟」
女性に噛みついて毒死させる妖『コブラ』と対峙した妖狩:『猫又』こと東雲 琥珀は怒りを燃やし、一方的に『コブラ』に攻撃を仕掛ける。
しかし腕を蛇にして噛み付かせる攻撃を得意としていた『コブラ』は奥の手として蛇の仮面を取って犬歯から毒霧を発射。
毒霧は『コブラ』が独自にブレンドしたものであり、顔の右半分に受けた瞬間に毒状態になり、目眩、激痛、吐き気に襲われた。
『コブラ』はその隙に琥珀の首筋に噛み付こうと一気に距離を詰めるが咄嗟に自分の右腕を盾にして『コブラ』の犬歯を受け止めたが、腕の中に猛毒を流し込まされてしまった。
琥珀はそのまま噛み付かせて『コブラ』を固定し、重力で重くした足で腹を蹴り飛ばして脱出した。
しかし琥珀が受けたのは致死量の猛毒。毒霧を受けた箇所の皮膚は紫色に染まってしまい、肝心の腕は血と毒液が染み出している。
「はぁ…はぁ…ぐっ!!」
蹴り飛ばしただけでかなりの体力を使い、息も荒く必死で激痛に耐えている。
特殊防護服の袖を引きちぎって確認すると、顔の紫色の痣とは比べ物にならない黒紫色に変色していた。
さらにその毒は指先まで侵食していた。
「馬鹿だねぇ首を守るために腕を出したんだろうけど、毒受けちゃ元も子もないね☆」
「即死よりはマシよ…!」
「でもその分キミは苦しむことになる…クヒヒ!腕を見てご覧!☆」
「…!?」
言われた通りに腕を見てみると、噛まれた跡の黒紫色の痣が前腕から徐々に広がり、すでに二の腕ギリギリまで迫っていた。
「その毒は全身に回り、やがて死ぬ。激痛を伴いながらね☆前腕はすでに毒が回り壊死している…!」
【琥珀ちゃん戻って!】
【今からでも戻ればお前の腕は治せる、一次撤退だ!!】
「二人とも…ごめんだけど…それは無理!」
一体どうするのか?答えは簡単だ。壊死したならば切除すればいい。
二の腕に毒が回る前に、琥珀は手刀で自らの右腕を切断した。
【琥珀ちゃん!】
「ちょいちょいちょ〜い…それは俺も予想外だよ☆!イカれてるねキミ…。」
「イカれてなきゃ…妖狩やれないわよ…アタシとお母さんは“あの日”…瓦礫に潰されてアタシだけが生き返った、たくさん死んだ人を見た…その頃の痛みに比べれば腕の一本どうってことないわよっ!!」
それでも痛みで涙が出る、切断面から血がドバドバと出て止まらない。
「『猫又』、“武装”!!」
琥珀は“武装”を展開し、二又の尻尾の内の一本で右腕を縛り付けて止血し、引きちぎった特殊防護服の袖を包帯代わりに巻き付けた。
「じゃあ次は何処狙おったかな〜。」
「狙ってみなさいよ…その瞬間アンタの首が消し飛ぶわよ?」
「上等!」
『コブラ』は両腕を伸ばして琥珀を捕まえようとするが、二又の尻尾を駆使して、電柱に捕まって飛び上がったり、壁を足場にして妖を翻弄する。
片腕が無くとも驚異の機動力を発揮し、死角から『コブラ』を切りつける。
琥珀は尾の先端にクナイをくっつけ、斬撃と体術で『コブラ』にダメージを与えていく。
体術では殴る寸前に重力で重くして与えるダメージを増やしている。
蛇の腕が体に噛み付きに来るなら“斥力”を使って腕を弾き、“重力”で落とす。
さらに“引力”で相手ではなく自分を引き寄せて蹴りを繰り出す。その際青いスパークが発生し、通常の約3倍の威力を叩き出した。
さすがの『コブラ』も軽口を叩く余裕が無くなり、これは命を掛けた真剣勝負であると気持ちを切り替え、吠える。
「邪魔しやがって…邪魔しやがってぇぇぇ!!!」
再び『コブラ』は口の犬歯から毒霧を吹き出し、超スピードで動く琥珀に当てようとする。
すぐに危機を察知した琥珀は回避しようとするが回避した時に左耳と、左足に少量掛かってしまい、さらに毒が回ってしまう。
怯んだ隙に術式無しで拳を琥珀の顔にぶつけようと振るうが、琥珀は瞬時にその場から姿を消した。
「どこ行きやがった、何処だ!!」
何を思ったか無意識に上を向くと、月をバックに自分の元へと近づいてくる二又の尾を生やした少女が見えた。
好機と見た『コブラ』は腕を伸ばして琥珀を捕まえようとした…はずだった。
瞬きをすると月をバックにして落ちてくる少女なんていなかった。
「あれぇどこ行ったー?」
「それがアンタの最期の言葉よ…!」「っ!」
琥珀は『コブラ』の首にクナイを突き付け、一瞬ではねた。首を失った後すぐに体も倒れ、腕の蛇もぐったりと地面に顔をつけた。
「ミッション…コンプリート!ぐっ、あっ…!」
そうして身体は灰化して崩れ落ちた。
同時に片腕を失いながらも戦い抜いた琥珀もついに限界が来て倒れてしまった。
【琥珀!兄貴行くぞ!!】【…!】
インカムから聞こえる二人の慌てる声はかすかに意識を保っていた琥珀の元に聞こえた。そして涙を流し、「ありがとう…」と呟いた後、気を失った。
EPISODE 26「失う覚悟」完
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