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「ゴースト・ウィンド」β版  作者: さだはる
シーズン1

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21「The eighth rising star(8番目の新星)」

風牙と琥珀が共に歩いていた時、人体をジグゾーパズルのピースに変えてしまう亜人と対峙し、風牙は危うく心臓をピースに変えて奪われかけた。


間一髪で琥珀が奪取し、男は逃走した。その直後八雲邸では多くの客人が訪れ大変な状況だと電話越しの花が叫ぶ。


ーーー


二人はすぐに帰宅し、どよめく客人たちを落ち着かせ、家の中に招き入れた。

客人は20代から50代までの六名の男女で、皆体の何処かに穴が空けられており、どれもジグゾーパズルのピースのようだった。


中には喉をくり抜かれた者もおり、呻く事しかできない。


「兄貴、状況説明。」


「この人たちは全員、“間田”という男に借金をしていたようだ。そして、これが…返済期日を守れなかった者の末路だと言う。」


「頼むよ特異課さん!あんたら不思議なことなら何でも引き受けてくれんだろ!?」


「たしかに不思議な事件を解決するのが俺たちの仕事さ。それは今回もそう…。

だけど、その後のことはあんたたちの仕事だ、それだけは理解しておいてください!」


風牙は腰を上げて、すがりついた客に指を指した。

客人に釘を刺したあと、この事件を引き受けた。


「あなたたちの欠けた穴、必ず俺たちが奪い返す…!」


ーーー


風牙たちは客を家路へと帰し、秘密基地であるガレージで作戦を練っていた。


「お前たちが会ったという男は人体をパズルにしてしまう能力を持っていたんだな?」


「あぁ、そいつが間田って奴だと思う。同じ術式を持ってる奴はいないからな…俺もさっき間田に心臓取られかけた。」


雷牙はためしにパソコンで間田という人物について検索してみた。

そして、ヒットした。


「凄腕マジシャン…ミスター間田…?名前の捻りが無いわね。」


安っぽい宣材写真にフリー素材かという程の顔。大して有名でも無さそうだ。

掲示板でも別に良いことも言われてないし、悪いことも言われてない。


だがこの数日、急に名声を上げ始めた。

人体解体マジックというのが大衆を惹きつけ、話題になり始めた。


「風牙くん、もしかしてこのマジック…。」


「あぁ、種も仕掛けもない…債務者を生け贄にして作り出した処刑マジックさ。」


おそらく処刑されたのも間田から金を借りていた内の一人なのだろう。


雷牙は机のタンスを漁って何かを取り出した。そして琥珀の手の平に乗せた。


「何よこれ。」

「中に特殊防護服を内包した指輪だ。最新のナノテクだ。」


雷牙が渡したのは風牙が着けている物と同じ銀の指輪であり、「8」という数字が刻まれていた。


ーーー


          ーとある廃ビルー


このビルの二階の窓には「ミスター間田」という名前がデカデカと書いてあり、自分から居場所をさらけ出しているようなものだった。


間田はソファに足を組んで腰掛け、煙管を吸っていた。

煙の間から見えるのは、今まで抜き取った被害者の体のパーツ。


「愉快、愉快…私のこの力があれば…私は頂点に立てる!」


「人を傷つけて食う飯は美味いか?」

「!?」


間田の座るソファの背後には風牙と琥珀がもたれかかりながら彼の耳元に囁いた。

間田はソファから飛び出して二人に警戒をした。


「貴様らどこから…!」


「普通に鍵が開いてたぜ。それと、自分の顔を堂々と出しすぎだ。」


風牙と琥珀は指輪をはめて特殊防護服へと姿を変えた。


「何故お前たちは私の邪魔をする…何も持たない者から奪って何が悪い!?奴らは所詮クズ、消えても問題ない命なのに!」


「別に何も無かろうと、何も残らなかろうと…無闇に消えていい命などない…!」


風牙は拳に風を纏って間田に殴りに掛かる。だが、身体をパズルのピースに変えて回避した。

だがそんなことは予測済み、風牙は琥珀に合図をした。


琥珀は指を下げて、散らばった身体のピース全ての上に重力を付与し、床に縛り付けた。


「ぎょわぁ!!」


「あの人たちの身体のピースを返しなさい!」


だが間田はピースの状態でもオーラを放出した。すると、琥珀の指先が段々とピースへと変わろうとしていた。


「!?」


「危機感を感じたな?その僅かな危機感を…!」


琥珀はピースに変えられる危機感から間田を拘束していた重力が消えてしまった。

一瞬の内に結合して、完成した足で風牙の腹を蹴飛ばして、完全体に戻った。


「我が魂に刻まれたこの能力の名は「“血肉パズル”」。触れた人体や見つめた人体を全て等しくパズルのピースへと変える。

そしてこれが…このパズル完成への最後のピースだ!」


間田が取り出したのは青い液体の入った注射器。どこかで見たことがあるはずだ。

その注射器は財団から贈られたプレゼント。


彼はそれを喜びながら胸に針を刺し、液体を注入した。


「この力は『授与者(プレゼンター)』より頂いたもの!…ここでお前らに消される訳にはいかない!」


全身に強力な妖力を漲らせた間田は指を動かすと、二人の心臓に当たる部分がピースとなって抜き取られてしまった。


「このピースを潰されたくなければ私に二度と関わるなよ…!」


それでも近づこうとすると、片手で二つのピースに力を入れて、二人の体に激痛が走る。


「そんなに死にたいか…ならば瀕死にした上、最後にピースを砕いてやろう!」


大きく膨れ上がったオーラを纏って、灰色の床に手を付けた。

すると、ビルの床全面に歪な模様が刻まれ、そのなかの一つをつまむと、そのままビル全体が崩れ始めた。


「術式の真化…まさか、人体以外もピースに!」


二人の身体は宙に浮き、そのまま落下してしまう。

風牙は風を操るが飛ぶことはできない。


落ちていく風牙を見つけた琥珀は精一杯に手を伸ばす。このままでは落下してアイツの思う壺となってしまう。

その焦燥に駆られながらも諦めかけたその時、心の中で猫の鳴き声が聞こえた。


『浮きなさい、新人ちゃん♡』

「!、「“無重力(アンチグラビティ)”」発動!!」


紫色のオーラが体表を覆い、紫色の茨が風牙の手の平を貫くと、彼の身体は宙に留まった。


真化した間田はピースを足場にして琥珀たちの元へと近づき襲いかかるが、琥珀は弾く「“斥力(リパルジョン)”」で遠くまで吹き飛ばした。


「風牙、ここはアタシに任せて…!」

「あぁ…やってやれ、『猫又』!」


ーーー


新たに「“無重力(アンチグラビティ)”」に覚醒した琥珀はゴースト『猫又』を“武装”して、間田を追いかける。


力いっぱい踏み込んで、溜めた力を一気に解き放った。

それによって生じたスピードは凄まじく、手足と頭の炎は揺れる。

今の彼女には上は下に、下に上の力が働いている。



      だから今の彼女は“上に落ちている”。



「たかが重力がなんだ!今の私にはお前たちの心臓がある!!えぇとどれだったかな…コレだ!」


間田は吹き飛ばされながらも片手で琥珀の心臓のピースを握った。

案の定琥珀の身体には激痛が走り、ポッカリと空いた胸に手を添える。


「はぁ…はぁ…アンタ、そのおっきい力扱い切れてないんでしょ?アタシと同じ。だからもうすぐ自壊するわ!!」


「知ったことを…」


その刹那、間田の脇腹は十字に切り裂かれた。

琥珀の両手にクナイを持ち、落下と同時にそのスピードを利用して一瞬にして傷をつけた。


「小娘め…!」


「下に落ちなさい!」


間田は猛スピードで工事現場に落下、土煙が立ち昇る。

クナイを回してオーラを全開に引き上げ、同じく落下する。いや、“下に昇る”。

そしてクナイをしまって爪に全てのオーラを集中させ、間田を十字に切り裂いた。


「ぐあ…あぁぁ!!!!」


まだ覚醒したばかりの小娘の斬撃は確実にヒットしたが、致命傷にはならなかった。

琥珀は全ての力を使い果たし、ガス欠になって倒れてしまった。


間田は勝利を確信して、琥珀をピースにしようと近づくが、その瞬間に間田の血管は浮き出て、発狂しながら爆発した。


「だから言ったでしょ…自壊するって…!」


ーーー


ビルに残された風牙は被害者のピースが落下しないように保管していたが、間田が爆散したと同時刻、パーツは光となって飛んでいき、元の持ち主の穴にハマったらしい。

そして二人の胸にも心臓がカチッとハマり、事なきを得た。


それと「“無重力”」も解除され、風牙は風をクッションにして倒壊したビルに降り立ったが、そこで液体を無くし、空になった注射器を拾い上げた。

          

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