EPISODE 18「超重力」
東雲 琥珀。彼女も戦災孤児の一人だった。
10年前、新たな西暦2000年という年に起きた妖と人間の戦争。覚醒した百人余りの超能力者たちが東京を中心とした主要な都市で大規模テロを決行。
死者は全国合わせて1000万人近くにのぼり、幸か不幸かその中から新たな妖が覚醒してしまう。八雲兄弟や琥珀もその一人だ。
両親を亡くし、4歳という若さで荒れ果てた街を彷徨っていた琥珀は偶然風雅たちと出会い、研究施設に捕まり、実験される時までも行動を共にしていた。
とある任務にて深い傷を負い、妖狩としては活動できないと宣告された彼女はその事実を受け入れ、記憶を消され普通の中学生として暮らす道を選んだ。
そしてそんな平和だった日常をぶち壊すように突如現れた「雀蜂」と名称された妖。この男は百合園学園に潜入し、校長を殺害。さらに体育館へと乗り込み、生徒の目の前で教職員二人を殺害。
さらには生徒たちに「鬼ごっこ」という名のデスゲームを仕掛ける。
極悪非道な「雀蜂」は武装した右腕から針を発射し、学生たちを貫いていく。
妖狩としての記憶を取り戻し、目の前で友人を殺され怒りに燃える琥珀は一人体育館でゲームマスターを迎え撃つのだ。
「雀蜂」は琥珀に向けて針を発射するが、針は彼女の目の前で静止し、物を引っ張る動作をすることで「雀蜂」をこちら側へと引き寄せた。
目の前に迫ってきた所で鋭い蹴りを食らわし、体育館中央まで吹き飛ばした。
「妖狩:『猫又』。ミッションを遂行する…!!」
怒りに燃える琥珀は黒い霧を吹き出し、その黒い霧は特殊防護服へと変化した。
「雀蜂」は立ち上がり、針を発射しようと右腕を琥珀に向けるが、次に琥珀は指をクイッと下げる。
すると「雀蜂」はまるで上から何かに押しつぶされるように床に張り付き、身動きが取れなくなった。
「これは…“重力”か!」
「正っ解っ!」
さらに重力は増し、「雀蜂」の体中の骨が軋むほどの威力を発揮する。
ー「“超重力”」ー
東雲 琥珀の術式。重力を操り、空を飛んだり、壁に張り付くことができ、猫のように自由な行動が可能だ。
・縦横無尽に働く力「“重力”」
・浮遊する力「“反重量”」
・弾く力「“斥力”」
・引き寄せる力「“引力”」
計4つの系統の力を使いこなすことが出来る。
琥珀は床で潰れている「雀蜂」を無重力で浮かせ、怒りのままに壁や天井へと叩きつけ、大ダメージを与える。
「このガキ!」
「“斥力”!」
宙ぶらりんの状態からでも針を発射。しかし琥珀に弾かれてしまう。このまま有利の状態で勝負が決まると思った矢先だった。琥珀の体から黒い霧が吹き出し、一瞬怯んでしまった。
その一瞬の隙をついて、「雀蜂」は宙ぶらりんから脱出し、その顔を雀蜂の仮面に変えた。
「ガキの中に同類がいるとは思わなかったよ…。さ、本気出そうか…!」
「雀蜂」の仮面の目は光り、先程とは比べ物にならないほど動きは俊敏になり、琥珀の目では追いきれない。
黒い霧に苦しんでいる状態では瞳孔を猫のように縦長にして集中力を高めても術式を与えることは困難。
「ほーら、狙い撃ちだよ!」
高速で移動する「雀蜂」は完璧に琥珀に狙いを定め、右腕から針が発射された。琥珀はギリギリで針に気づき、 横に跳んで回避しようとするが、脇腹を針が貫通してしまう。
「雀蜂」の術式 ー「“二撃必殺”」ー はたとえ、一撃目の貫通を耐えたとしても、二撃目の猛毒が体を蝕み、完全に相手を殺すことができる。
そして二撃目の猛毒が琥珀の体全体を回る頃であろうか、貫通された激痛と猛毒により意識を失い倒れてしまった。
「これで邪魔者はいなくなった…君は最後に殺してるあげる…!」
「雀蜂」は翼を生やして飛び立ち、学生たちが逃げ込んだ中等部の校舎へと向かっていく。
一方、校長室にて妖の断罪者『死神』と相対した教育実習生の風雅と花。
『死神』は風雅目掛けて刃を向け、風雅は籠手で受け止め、部屋は一瞬でボロボロになる。傍で見ていた花に危険が及ばぬよう、警告し、逃がすことにする。
「放ちゃん、ここから離れろ!俺より生徒の皆を、琥珀の所に行ってくれ!」
「わかった!」
花は校長室を出て体育館目指して走り出す。
『死神』は刺突、袈裟斬り、一文字斬りと攻撃手段を切り替えながら風雅を切りつけ、回避するが、そのまま窓を切り裂き、二人は転がって外へ出た。
「どうした…激情態にはならないのか…?」
「誰があんなのになるかよ…代わりにとっておきを見せてやるよ!“武装”!」
風雅は右手に『神狼』のガントレットを装備し、『死神』と対峙する。ガントレットに付いたブースターから風を放出し、エネルギーを貯める。
ー中等部 校舎ー
校舎に乗り込んだ「雀蜂」は逃げ惑う生徒を見つけるとすぐに針を発射し、次々と殺害していく。さらに羽を高速で震わせて校舎の壁を切り裂きながら生徒の首を切断していく。
そこで勇敢な男子生徒たちが箒などの掃除道具を持って「雀蜂」に立ち向かう。
「ぼく鬼ごっこって言ったよねぇ…相手から来るのは解釈違いなんだよなぁ…あぁもういいやぶっ殺そ!」
針を3発連続で発射し、男子生徒の眉間を撃ち抜き殺害。
余裕たっぷりで廊下を歩いていた時、家庭科室の前で止まった。
家庭科室では女子生徒二人が机の下に隠れ「雀蜂」が校舎から去るまで息を潜めていた。
「私たち…死ぬの…?」「死なないわよ、絶対に…大丈夫、隠れていればきっと…。」
「ぼくに見つからないと思った?」「っ!!」
「キャアァァァ!!!」
家庭科室から二人の悲鳴が聞こえたあと、身体を赤く染めた「雀蜂」が出てきた。そして鼻歌まじりで教室棟へと潜入し、虐殺は続くのだった。
EPISODE 18「超重力」完
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