EPISODE 15「妖しき毒針」
関西の妖狩からの要請で急遽大阪へと向かうことになった風雅一行。そこで明石という妖狩と捜査を開始したのだが…
ー大阪 道頓堀ー
風雅たちはたこ焼き、お好み焼き、串カツ等とあるゆるグルメを食べ歩きして大阪を満喫していた。
最初はビルの上で風雅と花は豚まん片手に双眼鏡を持って街を見下ろしていた。
次は住民がほとんど居なくなった廃れた団地。風雅はコロッケをかみしめながらジメジメとした暗い団地の中庭を歩く。
お次は街に戻り、子供があまり来ないタイプの寂しい公園でお好み焼きとたこ焼きを食べていた。
「さすが食い倒れの街…グルメの宝石箱や!」
「たこ焼き初めて食べた!おいしー!」
今までずっと黙っていたが、ついに明石は痺れを切らして二人に大声を出す。
「ちょっと二人とも!なに捜査ほっぽり出して満喫してんですかっ!」
「俺はちゃんとお好み焼きにソースがかかってるか捜査してるぜ?」
「私はたこ焼きに本当にタコさんが入ってるのか捜査してます!」
明石は頭を抱えてベンチ座り込んでしまった。風雅は串カツを食べながら明石の傍に近づく。
「お前俺たちが何でここに来たのかまだ察せないのか?」
「察せって…ただ飲み食いしに来ただけちゃうんすか…?」
「ここは、写真にうつってたお前の仲間たちが「スコーピオン」に殺された公園だ。」
「!?、写真を見ただけで場所を特定したですか!」
「大体は兄貴が調べてくれてる。俺はただそれに従って買い食いしながら来ただけ…。」
「買い食いは変わらないんすね…。」
「今まで殺されたアンタの4人の仲間…そのどれもが人気の無い場所で殺されている。残りは一つ、路地裏さ。」
今まで訪れたのはビルの屋上、団地、子供が少ない小さな公園の3つ。たしかに人目につかず暗殺にはもってこいの場所ではある。
次に向かう4つ目の場所は路地裏だ。
風雅は再び豚まんを買って食べながら路地裏を進む。
先程巡った三箇所よりも空気が重く、暗く、ゴォォと換気扇が回る音が響く。
明石は二人の後ろについて歩き、路地裏をキョロキョロと見渡している。
薄暗い道を進み、入ってきた所の光が見えなくなった所で風雅は突如足を止めた。それに釣られ、二人も足を止める。
「どしたん?風雅くん。」「しっ…来るぞ…。」
三人の背後からガリガリとアスファルトを削り這う金属物のような音が聞こえた。次第に音は早くなり、ガリガリという重い音は徐々に地面から離れ、ガリッカリッと音が高くなったと思えば、風雅はいきなり振り返り、食べていた豚まんを花に向かって投げつけた。
グサッ!
花は何が起きたか分からず目を閉じてしまったが、恐る恐る開けてみると豚まんが宙に浮いて止まっていた。
「ほへ?」
「やっぱりアンタだったか…明石!」
豚まんを貫いたのは例の蠍の尻尾。その根本をたどるとその尾を生やしていたのは明石だった。
「なんや…バレとったんかい。いつからですか?」
「確証は持てなかったけど、最初から。俺は鼻が良いんだ、アンタと話してる時すごく嫌な匂いがしたよ。」
「ちっ、それは想定外やった…!」
「兄貴にお前のことを調べてもらったんだ…特異課に明石なんて奴いなかったよ…お前どこのスパイだ!」
大阪の妖狩たちを葬ったのは、わざと自分の「スコーピオン」としての姿を見せ、誘い込み、明石と名乗る同僚に扮して同行。そして同じ手口で4人を暗殺した。
大阪に配属された5人は同時に知り合ったため、不審がる者はいなかった。それだけが幸いだった。
しかし鴉丸ならば存在しないはずの明石をすぐに見破れたはずだが…
「言ったらスパイの意味ないやろ、どアホ!」
明石は正体がバレたと同時に豹変し、尻尾の先から豚まんを抜いて再度花にその毒牙を向ける。
風雅は咄嗟に花の前に立ち、右腕で毒針を受け止めた。
顔には痣が、右腕には拳型の模様が浮かび上がる。
「へぇ…武装か、面白い!」
「『神狼』・“武装”!!」
模様は右腕の上にガントレットとして装備され、両サイドに取り付けられたブースターで加速し、「スコーピオン」の顔面を殴って市街地へと吹き飛ばした。
一般人たちは阿鼻叫喚し、悲鳴を上げながら一斉に逃げ出した。
「ったくうるさい肉どもや!」
「よぉ、ドライブしようぜ?」
風雅は東京の作戦室から持ってきたバイクに跨り、エンジンを吹かす。そして「スコーピオン」に突進し、彼を前に乗り上げさせながらバイクに乗せながら何処かへと走る。
【風雅、今走っているその先に地下駐車場があるはずだ…「スコーピオン」は死亡と同時に強酸性の物質を撒き散らす可能性がある!鴉丸や政府に許可は取った、思い切りやってやれ。】
「了解…妖狩:『神狼』ミッションを遂行する…!」
さらに加速し、地下駐車場へと向かうが「スコーピオン」もただでは転ばない。毒針の付いた尻尾を駆使し、運転中の風雅に攻撃を仕掛ける。
すぐに首を傾げて回避し、右腕のガントレットで受け止めたりもした。
「何で当たらへんねん!」
「お前が殺した人たちと俺とじゃ経験の差が違うんだよ!」
「後輩が殺されたんやぞ悲しくないんか、俺が憎くないんか!?」
「たしかにムカつくさ。でもその感情を出すにはまだ早い…お前をぶっ飛ばした後だ…!」
バイクと自分に風を纏わせ、さらに加速し、ついに例の地下駐車場へと入っていく。駐車場の奥まで来て、急ブレーキを掛ける。
そして「スコーピオン」を吹き飛ばした。
「くそ…ここまで来たのに!もう少しでおまえら妖狩全員殺せると思ったのにっ!!」
「そうか…じゃあ今からお前が殺そうとしてる奴の底力ってやつを見せてやるよ…。」
「上等や、俺の毒で秒殺じゃ!!」
ー「“毒針”」ー
「スコーピオン」の術式。背中に毒針を仕込んだ巨大な蠍の尻尾を武装し発動。刺すだけで相手を一瞬にして溶かしてしまう強酸性の毒液を注入する。
風雅は自身のオーラを最大限放出し、彼の頭上に翠色の狼が浮かび上がり、「スコーピオン」に向かって咆哮する。
「スコーピオン」はその迫力に萎縮し、冷や汗と洗い息づかいをして、一歩足を引いた。
「おいおいこれくらいでビビってちゃ困るぜ?俺より強い奴はたくさんいるのに…!」
「このクソぉぉぉぉ!!」
「スコーピオン」は完全に怯え、体全体に式神を武装し、両腕を蠍の爪にして、地面を殴りながら風雅に襲い掛かるが、軽々と回避する。
そして爪を受け止めて「スコーピオン」の腹部に強烈なパンチを一発かまし、さらに軽やかな前宙でキックを繰り出し頭を強打。
「スコーピオン」は蠍の尻尾を伸ばして遠くから刺し殺そうとしたが、風雅はその尻尾の上を走り抜けジャンプ。
背後に回った後、地面に着地する間の宙に浮かんだ状態で回し蹴りを放ち“鎌鼬”を発動。自慢の毒針付きの尻尾を切断した。
「お前の敗因は…相手を知らなかったことだ。」
「スコーピオン」はすぐに振り返り、すぐに防御しようと顔を塞いで守る。
風雅は右腕に風を集めて「スコーピオン」の腹部に強烈な一撃を叩き込む。
「“烈風弾”!!」
風雅の得意技「“疾風弾”」は最小のコストで最大威力の攻撃を繰り出すが、
この「“烈風弾”」は最大のコストを払い、最大威力の一撃を相手に繰り出し一撃で屠る上位互換とも言うべき技である。
見事「スコーピオン」の腹部が凹むほどの一撃を与え、声も上げられない程の苦痛を味わう。
「指摘その2、お前のもう一つの敗因は、明らかな実戦不足!」
【風雅、今すぐそこから離れろ!毒が来るぞ!】
「やっべぇそうだった!!」
風雅はすぐにバイクに乗って地下駐車場から退避した。
「スコーピオン」は訳が分からず「待てぇぇ!」と発狂しながら爆発四散し、地下駐車場内に大量の強酸性の毒液が弾け飛んだ。
許可が下りたのはすでに使われていない地下駐車場。強酸性の毒液は壁や天井などにも飛び散るが、幸い完全にコンクリートを溶かすことはなかった。
「ミッションコンプリート!あっぶねぇ!」
風雅は無事に地下駐車場から脱出し、道路を走り抜け、花の元へと向かって行く。
そしてその様子をビルの上から見る者がいた。体が見えない大きさの黒いローブを身に纏い、顔にはペストマスクを付けた謎の人影だ。
「蠍くんの毒液に気づくとはねぇ…中々やるね。」
その後風雅たちは東京の作戦室に戻り、ミッション内容を鴉丸に報告。
「兄貴、何であいつの中に毒液あること知ってたんだ?」
「あぁいう毒使いは体内に液体を溜め込む器官があるんだ。そういう事案が昔あったからな。」
しかし以前からミッションに関して不審な点があった。サラセニアの件での非情な内容。そして今回の明石。
警備システムが厳重な特異課ならばすぐに気づくはずだがそのまま大阪へと配属させたのだ。
鴉丸に報告書と共にその事について問い詰めると、
「今度調べておく」と一言言って、作戦室から去っていった。
「はい「今度調べとく」って発言今回で5回目ー。」
EPISODE 15「妖しき毒針」完
次回 第16話




