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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
『狩人を狩れ。』
13/20

EPISODE 13「神狼・覚醒」

自身の式神『神狼』に身体を委ね、謎の刺客「死神」へと立ち向かうが相手の方が一枚上手であり、返り討ちにあってしまう。


 「死神」がトドメを刺そうとするが、雷牙と花が駆けつけ、事無きを得た。

その後「死神」は撤退し、そして二人は急いで風雅を連れて一時離脱した。


           ー八雲邸ー


雷牙は寝室に風雅を寝かせ、作戦室で鴉丸司令官と合流する。

花は誰よりも風雅のことを心配し、風雅の座る「壱」と書かれた円卓に突っ伏している。重たくなった頭を起こして花は鴉丸に質問をする。


「鴉丸さん…風雅くんのあの姿って何…?」


「あれは…“武装アームド”という技術だ…。全ての妖には式神という分身が付き、調伏すれば自分の体に武装することが可能となる。それが“武装アームド”だ。」


「だが風雅が使っていたのは不完全な武装・激情態だ…まだ完全に式神を調伏できていないんだ…。」


その後、風雅には悪いがミッションは一時中断ということにして鴉丸司令官は代わりに担当してくれる妖狩エージェントを探すことにした。


その間雷牙と花はソファに座って一休みすることにした。

「風雅くん、どうしちゃったんだろ…。」


「そろそろ花ちゃんには話しとくか…アイツには…いや、俺たちにはトラウマがあるんだ…」


語らなくてはならない、忘れてはいけない双子の惨劇を…

彼らは「戦災孤児」である。

今から10年前、強大な力を持った超能力者たちが起こした大事件。そのせいで大勢の人間たちが犠牲になった。八雲兄弟もその犠牲者だった。


      その事件の名は「デイブレイク」


風雅が悪夢で見た光景はその妖たちの攻撃によって壊滅した都市と犠牲になった人間の姿だった。

そして犠牲の中で多くの新たな超能力者が覚醒した。


「俺たちは子供ながらに妖として覚醒し…とある研究施設に拉致された。俺たちは二人で幸せを掴むはずだった!」


「研究施設…。」


思い出すだけで地獄の日々を鮮明に思い出す。自分たちと同じ位の歳の子供たちは毎日人体実験を施され、ボロボロになりながら檻の中で過ごしていた。

だがある時、研究施設に侵入者が現れた。それが後の特異課司令官・鴉丸だった。人間ながらに妖もいる研究施設を壊滅させ、実験体となっていた子供たちを救出した。


「それで俺たちは鴉丸のオッサンの下、特異課を設立し、今に至るってわけさ。

風雅がデイブレイクのトラウマを乗り越えない限りは自分の式神を制御できないだろうな…。」


「そんなことがあったんだね…。私何も知らなかった…。」


「いや、知らない方が幸せだよ本来は…。できれば俺と一緒に弟を支えてやって欲しいんだ。」


「任せて!私も色々手伝うよ!」

「ありがとう…花ちゃん。」


その時、寝室で風雅を目を覚ました。幸い妖故、傷の治りは早く、「死神」に切られた足も腱までは到達してなかったので歩くことはできるようだ。


いち早く気づいた花はすぐに駆け寄り、すぐにミッションを続けようとする風雅を全力で止めようとする。自分よりも強くて身長の高い風雅に体当たりでぶつかって進路を妨害する。


「だ〜め!行っちゃだめぇ!!まだ休んでなきゃダメだよ!」


「ごめん花ちゃん、どうしてもやらなきゃだめなんだ!止めないでくれ…!」


「風雅、俺から頼む。今回のミッションは下りてくれ…!」


「兄貴まで…何故そこまでして止めるんだ!」


「風雅くんがこれ以上無理して死んじゃったら嫌だから!雷牙くんも鴉丸さんも私も心配してるの!」


それでも進む風雅に花は足にしがみついて歩みを止めさせ、雷牙は体にしがみついて止めているが、作戦室から鴉丸が上がってきて、二人を止める。


「そんなにミッションに行きたいなら、行けばいい…妖狩エージェント:『神狼』…。」

「!」


風雅はすぐに特殊防護服に身を包み、バイクに乗って「ヒョウ」のいる現場へと向かって行く。

雷牙たちは何故風雅を止めなかったのかと責めると、


「風雅は…今トラウマを乗り越えようとしているんだ俺たちが止める義理はない…。」


激情態となったことで僅かだが自分の式神と対話を果たすことができた風雅。黒い霧を発散させたからこれ以上暴走することはないと言う鴉丸。それでも二人は心配だった。


       ー警視庁 午後7時26分ー


ミッションのターゲット「ヒョウ」は警視庁内部に殴り込み、すでに多数の警官を殺していた。妖には並の銃は効かず、成す術もなく殺されていく警官たち、受付の女性警官も「ヒョウ」の爪で顔を執拗に切り裂き、どれだけの悪意が込もっているのが分かる。


「ヒョウ」が右手に着けているデジタル腕時計のタイマーは20分に設定され、今の時点では3分経過しており、残りの時間は17分だ。


「さぁここにいる警官全部出てこいよぉ!ぶち殺してやる…!くそ、右目が潰れて思うように術式が使えねぇ…あの狼野郎!」


「狼野郎が何だって?」「!?」


「ヒョウ」が振り返った先にいたのは、警視庁入り口でバイクに跨っている風雅だった。

そして「ヒョウ」は風雅によって傷付けられた右目を覆う包帯を手で鷲掴みにしてビリビリに破り捨てた。


「お前のせいで俺の右目が…俺の右目がなくなっちまったじゃねぇか!!」


すると「ヒョウ」の体から風雅と同様の黒い霧が現れた。そして「“武装アームド”!」と叫び、体表がヒョウの毛に覆われ、顔も獣に変化、両手には金属製の爪を装備していた。


「なぁ、お前も使えよこの力!あのでっかい黒いやつになれよぉ!」


「すまないけど、俺はもう黒いやつになる気はねぇよ…。」


そして風雅は大きく息を吸って、ゆっくりと目を閉じる。「ヒョウ」は好機と見て爪を鳴らしてこちらへ走ってくる。

その間、風雅は深層心理の中で『神狼』と対話する。


深層心理の世界では、「デイブレイク」のせいでボロボロになった東京の街と灰化した死体が転がる風景が映し出される。

その中央に二人は立っている。


『また俺の力を使ってくれる気になったか?嬉しいねぇ!』


「俺はみんなの笑顔と自由を守る…そのためにお前の力を使う。お前は俺だ…だから考えは一緒だろ?」


『言うようになったじゃねぇか…俺!』


      「さぁ、お前の力を寄越せっ!!」


深層心理での対話を終えた風雅は、見開いた瞬間に目元に風を表す痣が出現し、右腕に拳を表す模様が浮かび広がる。


「死ねぇ!」


「ヒョウ」が自らの爪を風雅目掛けて突き刺そうと拳を繰り出した。しかし、風雅は模様が浮かび上がった右腕を盾にして爪を受け止めてしまった。

そして視界にノイズが入り、激情態と同様に崩壊した街と死体が映り込む。

だが、もう溺れる風雅ではない…自分の力を受け入れ、覚悟を決める時が来たのだ。

風雅は強大な力に負けず黒い霧さえも払い除け、視界のノイズは消滅した。


「はぁぁぁぁぁ!!」


右腕から風が巻き起こり、「ヒョウ」を吹き飛ばした。

模様は立体になり、右腕を包み込む。重厚なガントレットを構築したのだ。


         「『神狼』“武装アームド”っ!」


深い緑色のガントレットで銀色の爪を装備し、両サイドにはバイクのマフラーを模したブースターが付いている。普通の武装だと油断している「ヒョウ」はすぐに立ち上がり爪攻撃を仕掛ける。


爪で切りつけようとするも風雅はガントレットを盾にして防ぎ、風を纏った強烈なパンチを繰り出す。その威力は通常の2倍であり、たった一発で「ヒョウ」は吹き飛び、警視庁の壁を破り外まで放り出された。


「何だよお前…何でそんな物…!」


「俺は妖狩エージェント:『神狼』…ミッションを遂行する…!」


「ヒョウ」は暗い廊下をゆっくりと歩いてくる風雅に怯え、足を引きずって逃げようとする。一方の風雅は先程よりも強烈な風を纏い走り込んで来る。


「ヒョウ」は自慢のスピードを使って風雅の目の前から消失し、背後に回っていた。

武装していない背中を爪で貫こうとするが、そんな作戦はすでに妖狩エージェントには想定済みだった。

風雅は振り返り、武装した右手で「ヒョウ」の顔面に問答無用の会心の一撃を繰り出す。

          

          「“疾風弾”っ!!!」


「ヒョウ」は声を上げる間もなく、風を纏ったガントレットの一撃で顔面を粉々に粉砕され、大爆発を起こした。肉片は飛び散り、爆煙が辺りを包んだ


「ミッション…コンプリート…!」


花と雷牙は遅れて警視庁に辿り着き、風雅がロビー奥にぶち開けた穴に向かって走る。外へ出ると。爆煙の中に佇む背を向けて立つ風雅を発見した。


「風雅くん!」「風雅!」


「!」


二人の声に反応した風雅は振り返り、右手の“武装アームド”を解除し、笑顔でサムズアップをして応えた。

いつもの風雅だと安堵した花は一気に力が抜けて座り込んでしまった。


「帰ろ、花ちゃん。」


「うん!」


             EPISODE 13「神狼・覚醒」完

           次回 第14話

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