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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
『狩人を狩れ。』
10/20

EPISODE 10「黒い霧の式」

       八雲 風雅は再び夢を見る。


ボロボロになった街の中を風雅は誰かの肩を借りながら歩いている。辺りを見渡せば建物は跡形も無く崩れ落ち、灰化した人間の死体があちらこちらで見られる。


「風雅…俺たちで、俺たちで幸せになるんだ!」


「兄貴…。」


風雅が肩を借りているのは幼き兄・雷牙だ。雷牙の服 もボロボロで、火傷が痛々しい。雷牙は風雅に「大丈夫だ。」「必ず生き残れる。」「俺がついてる!」と声を掛け続けた。


しかし風雅の右手から黒い霧が立ち昇り始めた瞬間に風雅は目を覚ました。


「はっ!」


今までは大量の汗と動悸と共に起床したが、今回は今までとは違った。右手にかすかな痺れがあったのだ。

悪夢の現象は日に日に酷くなっている。昨日もカマキリとの戦闘中に黒い霧に体が蝕まれ始めた。


果てには日常生活にも支障をきたすのではないかと心配しながら朝ごはんの準備をした。

花が挨拶をすると自分は辛いはずなのに笑顔で応える。

雷牙が「おはよう」というと割った卵の殻を割とマジな顔で投げつける。


そして夕飯の買い出しのために花と共にスーパーへと出かける。風雅がカゴを持って花が彼の欲しいと言った物を探してカゴに入れる係だ。


「んーじゃあニンジン持ってきてー。」「はーい!」


花の体は大人だが、精神はまだ子供のように幼い。軽やかな足取りで野菜コーナーから良い感じのニンジンを取ってきて、風雅のカゴに入れる。


「じゃあ次は…ぐっ!」


花に声を掛けようとした時だった。突如視界にノイズが走り出し、カゴを握ったまま膝をついてしまった。それに気づいた花は血相を変えて風雅に駆け寄る。


「風雅くん!大丈夫…、お腹痛いの?」


「あ、あぁ大丈夫…あれれぇ疲れたのかな?ちょっと目眩がしただけだよ。」


「じゃあ早く帰ろ?あとで雷牙くんと私でもう一回買い物するからさぁ!ね、帰ろ?」


こんなに心配されたのは雷牙以来だ。花は会計はせずにカゴに入れた物を戻し、彼女の言う通りに風雅は家に帰った。


           ー八雲邸ー


家に戻った風雅はソファに寝そべり脱力していた。一方花は雷牙を暗い部屋から連れ出して再度買い物に出かけた。


ソファで寝ていようがお構いなしに再び視界にノイズが走る。さらに今度は全身に激痛が走り、ソファの上でもがき苦しみ始めた。

足でソファを押し上げて端にかけてある毛布ですらもグチャグチャになってしまっている。


苦しむ中で身体から再び黒い霧がかつてないほどの量で立ち昇り、ついに風雅と黒い霧が分離した。

分離したことで苦しみは和らいだ。


黒い霧は次第に形を成し、二足歩行であるが獣のようなシルエットに変化した。それはまるで狼だった。

風雅はソファから起き上がってその黒い霧に問う。


「お前は…誰だ!」


『前も言っただろう…俺はお前だ八雲 風雅!』


言われてみればこの前風雅が見た夢の中に出てきた巨大な影と同じだった。さらに狼型の影は自らの名を明かす。


『俺の名は“神狼”。鴉丸のオッサンから散々呼ばれてるから知ってるだろ?』


『神狼』というのは鴉丸が風雅に与えたコードネームだ。そして風雅は一つの答えにたどり着く。


「お前、“式神”か…!」


式神とは。妖に覚醒した際、異能“術式”の原動力となる自分の分身だ。その形は十人十色であり生前の経験や感情から作られる。


しかし多くの妖は自身の式神に精神を支配され、自身の欲望を叶えるために力を行使させるのだ。


『なぁ、俺の力を使って、今までよりも強くなりたくないか?』


「誰がお前の力なんか…」

『お前じゃない、俺の力だ。今まで勝ててたのはお前の努力の賜物じゃねぇ俺が上手く力を調節してやってただけだ間抜け!』


『さぁ俺の力に身を委ねろ。人間の笑顔とやらを守りたいんだろ?緋月 花の笑顔を守りたいんだろ?』


『神狼』は風雅の心にズキズキと響くような言い草をしながら誘惑を仕掛ける。ましてや自分自身に言われているようなもので余計に心が揺さぶれる。しかし、


「嫌だ…俺はあんな化物達みたいな姿にはなりたくない!」


風雅が今まで戦ってきた蜘蛛男、BAT、カマキリの姿は実は自らの式神を装備した結果の姿だったのだ。そのせいで人間離れした怪人寄りのデザインになっている。


だがそういう輩は自らの強大な力に溺れ、平気で人に危害を加えることしか頭にないイカれた連中ばかりだ。


「『神狼』、お前の望みは何だ…!」


「誰も傷つかない平和な世界だ…ヒヒッ。」

「この!」


風雅は『神狼』に向かって風を纏った拳を繰り出す。


『おいおいどうした。急に殴りかかって…。』


「今すぐ俺の身体から出ていけ!」


『それは無理だ!言ったろ、俺はお前だ。一つでも欠ければ妖の体は崩壊し、何が起こるか分からねぇぜ?』


それでも風雅は終始『神狼』を睨み続ける。


『おぉ怖い怖い…俺はそろそろ帰るぜ…じゃあな“人の皮を被ったバケモノさん”よ。』


そして黒い霧は溶けて消えてしまい、居間にノイズが走り、風雅が困惑した刹那、彼はソファの上で目が覚めた。


「…また夢か。」


風雅は一度安堵した。しかし日々力を増す黒い霧の正体は自身の式神である『神狼』だった。

『神狼』の望みは風雅自身の無意識の望みである。


そんな時だった、風雅のケータイに一件のメールが入った。


          『狩人を狩れ。』


                 「黒い霧の式」完

          次回 第11話

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