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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
『蜘蛛を止めろ。』
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EPISODE 1「妖狩」

       

         時は2010年の日本


手始めにこの世界について説明しよう。この世界にある日本は貴方たち読者が住んでいるものと変わらない。

しかし、この世界にはあらゆる超常現象、怪人、未知の遺物が存在しているのだ。


そして超常現象を起こし人々の笑顔と自由を奪う怪人・あやかしが猛威を振るう。そんな奴らを倒す者たちがいる、そんな彼らの活躍を共に覗いていこう。


         ー東京 AM11時30分ー

 

 今東京ではとある事件が発生していた。

とある工業地帯の工場にあるガレージにて大きな蜘蛛の巣が張られ、その中には大量の繭が吊り下げられていた。


そのガレージの前にはパトカーと特殊部隊の車両複数台が止まっている。


特殊部隊はスコープ付きライフルを構えながら恐る恐る潜入する。


「この繭なんでしょうね…」「切り開いてみよう。」


隊長と隊員の二人はナイフを持って、近くの繭を切り裂いた。


すると中から謎の液体と共に人間だったであろう何かがぬるっと滑り落ちた。

全身の骨や筋肉が溶けてしまいもはや皮だけになっていた。

さすがの隊長も驚き、情けない声を上げてしまう。


「こ、こんなの人間ができることじゃない!気をつけろお前たち、ここには…ここには…ヤツがいる!」


            ガタンッ


工場内のクレーンが揺れた。薄暗く、さらに溶けた人間が入っている繭に怯える隊員は音がする方にすぐさま銃を構える。


六つのウェポンライトが工場内を照らす。音は様々な所から鳴り、部隊を恐怖と不安に陥れる。


突然ガシャン!と音がなってガレージの照明が点き、全ての繭が明るみになった。


「これはこれは警察の皆様ごきげんよう!」


ガレージの中央に立っていたのは、白い制服に蜘蛛の顔という不気味な容姿をした男だ。蜘蛛の顔は仮面なのか、後ろは長い黒髪が剥き出しになっている。


「お前、何者だ…!」


隊長は銃を男の顔に構えて尋問する。しかし蜘蛛男は指先かれクモ糸を出して銃口を塞いでしまった。


「“人”と話すときは物騒な物は向けないでください。失礼ですよ。」


「黙れバケモノ!何故罪のない人を殺す!」


「人間は我々にとっては餌にしかならないんですよ。私たちのように異能を扱えないものなどこの世界に生きる価値はないのです。」


蜘蛛男はどうぞ銃で撃ち抜いてくださいと言わんばかりに両腕を上げて胸を張る。


「う、撃てぇ!!」


特殊部隊は全員で蜘蛛男に向かい発砲を開始する。しかしそんなこと彼にとっては弾丸の速度などスローモーションに等しいだろう。


蜘蛛男は右手の五本の指先から極細の糸を出し、軽く振るった。

すると弾丸が真っ二つになったかと思えば、同時に隊員たちの上半身にも切れ込みが入り、ズルリと落ちた。


一人生き残った隊長は腰を抜かしながらも必死に足を引きずってガレージから抜け出した。


外にいた警官は隊長の手を取って避難させようとするが、シャッターを糸で切り裂いて現れた。


「おやおや、餌がこんなに。私満腹になっちゃいますぅ…。」


警察官たちは物怖じせずに拳銃を発砲するが蜘蛛男にはまったく効かない。

飛んできた弾丸をクモ糸で作ったネットで受け止め、全て警官たちの眉間に返した。


「さぁ…最後はあなただけですよ隊長さん…ンフフ。」


援護に駆けつけた別部隊ですら斬り裂く糸で車両と首を同時に切り飛ばされてしまう。


蜘蛛男は挑発めいた態度と両手を広げながら、腰の抜けた隊長に近づく。


すると遠くからバイクの走行音が聞こえてきた。それも次第にこちらへと近づいてくる。そんなことにも気づいてない蜘蛛男はさらに隊長へと距離を詰めていく。


切り裂く鋼糸を指先から垂れ流し、「さぁ、私の養分になりなさい!」と手を挙げた時だった。

彼の顔を一人のライダーがバイクのホイールで轢いたのだ。


白いバイクに搭乗しているライダーは黒いスーツに身を包み、紅いマフラーを首に巻き、暗い緑色の髪に所々に白髪が混じり、サングラスを掛けている。


「どうもー“特異課”でーす。」


「何者ですかあなた…!」


          「“妖狩エージェント”だ!」


この世界には超能力を操り、人々の笑顔を奪うあやかしという怪人がいる。

そしてその妖から人々の笑顔を守るために戦う妖狩エージェントがいる。


          『蜘蛛を止めろ。』


「ほう、あなたが噂の妖狩…これ以上私の同胞が葬られないためにも此処で始末してあげましょう!」


「やっぱお前らは自分のしたことに何の責任も感じてないバケモノだな。さぁ、ミッション開始だ!」


蜘蛛男は余裕の表情で妖狩に向けてクモ糸を指先から発射した。


「ふんっ!」


突如クモ糸は宙に止まって、壁の方に着弾した。

クモ糸を止めたのは風のバリアだった。続いて蜘蛛男は糸玉を発射するが、それも風のバリアによってまったく違う方向へと飛ばされてしまう。


青年の名前は“八雲 風雅ふうが”。風を操る“妖”だ。


妖の扱う超能力は“術式じゅつしき”と言われ、その能力はそれぞれ違うのだ。

蜘蛛男ならば蜘蛛の特徴を持った ー「“鋼糸”」ーという名前だ。


風雅は徐々に速度を上げながら歩き出し、蜘蛛男に蹴りを一発食らわせる。

負けじと蜘蛛男は鋼糸を出して切り裂こうとするが、風雅の身に付けている特殊防護服にはまったく効かなかったどころか傷一つ付いていなかった。


風雅は拳に風を纏わせて蜘蛛男の腹部に強烈な一撃を与える。

腹を押さえて千鳥足になりながら仮面の中から凄まじい量の血を吐いた。


          ー「“疾風”」ー

妖狩エージェント・八雲 風雅の使用する風を操る術式。風を纏っての攻撃や攻撃を跳ね返すバリアを作ることもできる。


「ふ…ふふ…素晴らしい!なんと素晴らしい破壊力!」


「なーに笑ってんだ気持ち悪い。」


「あなたは何故このような力がありながら…人間を守るために使うのです!?」


「お前らみたいな奴の為に、これ以上誰かの涙は見たくない…俺は、皆の笑顔と自由を守るためにこの力を使う!ただそれだけのシンプルな理由だ!」


風雅は右の拳に風を集めて後ろに引き、左手で被せる。そして目を深く閉じる。


風雅の脳裏に浮かぶのは破壊され、崩壊した世界と涙を流す一人の少女の姿だった。


「死ねぇ妖狩エージェントぉぉぉぉ!!」


目を瞑った風雅はガラ空きだと思ったのか蜘蛛男は鋼糸の網を作って風雅をサイコロステーキにしようとする。

土埃を立てながら網は前方から進んでくるが、

風雅のオーラが浮かび上がる。


そして蜘蛛男は今までもかいたことのない汗を出す。

それは恐怖そのものだった。

今までは自分が捕食者だっただが、この一瞬で自分が被食者に変わった。

風雅のオーラはまさしく翡翠の狼。オーラの狼が吠えると風雅に迫っていた鋼の網は全て千切れた。

そして瞼が開く。


           「“疾風弾”!!」


右手から放たれた疾風の拳には狼が宿り、弾丸のような速さと全てを一瞬で破壊する一撃を繰り出す。


風雅の放った“疾風弾”により蜘蛛男は一瞬で腹部を抉られた。


「が…がぁぁぁぁ!!」「風に散りな。」


突如蜘蛛男の体は色を失い、膝から倒れると身体は灰化して文字通り崩れ落ちたのだ。

これが妖の末路である。生命を失った妖は身体が灰化して消滅してしまうのだ。


風雅は灰となって散った蜘蛛男に向けて黙祷をした。

いくら悪人と言えども命は命なのだ。


「ミッションコンプリートだ。」


風雅は蜘蛛男を一瞬にして倒し、唯一生き残った隊長に手を差し伸べようとするが、すでに亡くなってしまっていた。


隊長の首元に手を当てて脈がないことを確認した風雅は再び黙祷をした。

バイクを引いて道路に出た所で空から彼を呼ぶ声が聞こえた。


「風雅くーーん!」


「おっ花ちゃん!」


空飛ぶ箒に乗りながら空から現れたのは黒髪で血のように赤い瞳を持った少女・“緋月 花”。

出会ったのは半年ほど前で、訳あって風雅に助け出されて以来彼を「風雅くん」と呼び、付き従っているのだ。


「風雅くんミッションどうだった?」


「今終わったよ。箒の扱いもだいぶ慣れてきたね!」


風雅は花に向けてサムズアップをした。花は一瞬キョトンとしたが、すぐにサムズアップを返してくれた。


「そうだった、笑顔のサインだったねコレ!グッ!」


「今日もいい笑顔だね花ちゃんは。」


「あっ、そうそうここに来た理由忘れてた!司令官がすぐに戻ってこいだってー。」「え、」


司令官の名を聞いた途端に風雅の笑顔が凍りついた。

            

            続

                 

                EPISODE 1「妖狩」完


           次回 第2話

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