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それから。
美生さんは寝込んだ。自室で閉じこもり、ずっとベッドの上で横になっていた。
そんな彼女の頭を撫でて、抱きしめて、慰める言葉を吐いて。
彼女の長い睫毛が閉じるまでそれを続けて。
僕は思う。こんなことに意味があるのだろうかと。弱っている彼女を救えるのは言葉じゃなくて、状況である。僕の甘美なだけの言葉を浴びた所で、彼女が立ち直ることはない。そんな言葉は無力だから、価値が無い。
僕は自室に戻り椅子に座って、これからのことを考えてみる。彼女が奪われたものを、今後僕らはこの世界でどう取り繕えばいい? 元の世界に戻ればきっとまだ、新しい人生を始めることはできる。今よりは絶対、前を向ける。
だけど、その為の解決の糸口は未だに見付からない。もう一度物理学やら科学を勉強し直して、この世界から抜け出すのに挑戦してみる?
馬鹿馬鹿しい。努力すれば救われるなんて妄言と一緒だ。だって僕らは、この現象が起きた原因の特定すらできていない。
八方塞がりだなとため息をつく。僕はカーテンを開けて、なんとなく外を見た。街灯に照らされた本来なら真っ暗なはずの住宅街。きっと街灯の光が無ければ、どこにどう歩いていいか分からないぐらい何も見えない。今の僕らと同じぐらいに。
だから、光が必要だった。聖書でも光は神様の性質や心理を表すシンボルである。そんな光。こんな状況でも、地に足を付けて目的地にたどり着くための光。彼女が夢中になって、溺れられるぐらい、まばゆい光。彼女にとっての光だったアイドルに代わるほどの、超新星のまばゆきを。
だけど、それってなんだろう。もちろん、僕にはすでにそれがある。ノートを手に取って眺めれば、僕はその世界に赴ける。
……これを見せれば、美生さんも新しい光を見つけられるのか。
いや、悲しいけれど、それはない。だって、僕の神論はまだまだ未完成で、正直人に見せられる出来ではない。知識が圧倒的に足りないからだ。だけど、地球、いや宇宙は神様が作ってくださったものという証拠は、この星について調べていくだけでいくらでも見つけられる。
だって、この惑星は僕らが生存していくのに非常に都合がいい。いや、この惑星が出来た経緯だってそうだ。偶然の偶然の偶然の偶然の……。そんな宝くじの一等を連続で当てるような確立を乗り越えて、僕等は今何千年もの積み上げてきた歴史の上に立っている。
美生さんだって、それを感じ取れば光を見つけられるに違いないのだ。アイドルグループに代わる、新しい光。この暗闇の中で明滅する、確かな輝き。
あぁ、神様……。これも試練なのでしょうか。彼女が失った『光』の代わりに、あなたという壮大で尊大な『光』を与えろという。その信仰心で、『光』を浴びて強くなった心で、元の世界に戻ってこいという強い意志を、神様から感じる。この星で立っている僕には、感じられる。
それなら!
僕はノートを広げてスマホを手に、この地球の歴史を調べる。神様が世界を創ったという証拠を、築き上げるために。




