三つの花嫁衣装
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──一つは、髪を彩る花飾り。
それは祝福の証。常春の楽園へといざなう、百花のかぐわしさをまとったもの。
──二つは、身を包む純白のドレス。
それは清純の証。穢れなき乙女が誓う、白き陽のまばゆさを象ったもの。
──三つは、瞳を潤す宝石。
それは永久の証。輝石の煌めきが願う、結ばれた二人の未来を祈ったもの。
「その三つの花嫁衣装。わたしの前にそろうことが叶えられたのならば、いますぐにでも……あなたとの愛の誓いを交わしましょう」
従者に背を向けて、令嬢は神の像へと両手を重ね合わせる。静かに頭を垂れて、敬虔な祈りをささげる……ふりをした。
愚かな従者の役目。
それは最高の舞台のための、衣装探しだ。
(祝宴の場にただ乱入しただけでは、芸がないもの。いっそのこと、美しく着飾ってやりましょう。わたしこそが公爵家のエリオール・シルクスにふさわしい、『真の花嫁』であることを主張するために)
背を向けているのをいいことに、フィオナはほくそ笑む。
男を手玉に取る、悪い女にでもなった気分だ。いままで貴族令嬢として品行方正に生きてきたぶん、反動が出たのだろう。悪の道に染まるのも、不思議と心地よい気がした。
衣装がすべてそろったとき、改めて従者ディオスはお役目ご免となる。
恋に狂った男の末路は悲惨だ。愛した者の手によって、ぽいっと捨てられてしまうのだから。
(あなたのことは忘れないであげる。かわいそうな、わたしの騎士……華の剣……)
顔に微笑を張りつけたまま、フィオナは振り返る。
「花嫁衣装探し、お願いね」
「御意」
令嬢の願いに、従者は二つ返事で了承する。
かくして、呪われた侯爵令嬢フィオナ・ベルベットによる、恐ろしき復讐計画が幕を開けた。




