ダンジョンバカなの?
「あおいー?」
「んー?何?」
「毎日晩ご飯食べに来るなら、もう引っ越しして来たらどうなの?」
うわー、やましいことありますって感じ?
思いっきり目を逸らすのは止めようか?
「やっぱり奥さんとか彼女さんとかいるんじゃないの!?」
そこに帰っていくんじゃないの?
やっぱり私、騙されてるんじゃないの?
「違う!それは絶対違うから!」
「ならどうして?」
「それは…」
奥さんでも彼女さんでもないなら、
私には、ちょっと思い当たることがあるんだけどなぁ。
「もしかして、家に帰らずにダンジョン課に戻って仕事してる?
それか都庁ダンジョンに潜ってない?」
あっ、正解みたいね?
「なんで?」
やっぱりかー。
「だって、蒼ってば、仕事とダンジョンに潜るのが趣味でしょう?」
口をパカーンと開けて動きが止まった。
「…なんで、それを…?」
あっ、しまった。
勝手に鑑定したの忘れてた。
「かなり前に人を鑑定出来るのかを、蒼で試しました。ごめんなさい」
「俺も仕事とかに戻ってるの、黙っててごめんなさい」
2人で頭下げあった後に、
「少しこれからの話をしないかな?」
私はこう言ってみた。
「わかった」
まずは大前提として、
「蒼は私と結婚する気は、本当にあるの?」
「もちろん!って、そこからなのか?」
「ここが大前提だからね」
「わかった。もちろん蓮と結婚したいです」
「ここに住むのは問題ない?」
「ない。むしろここに住みたい」
ダンジョンあるからねぇ。
「それはダンジョンがあるからってこと?」
「いや、蓮と一緒にいたいからだけど?」
そうなの?
ジトーって見てたら、
「いや、まぁダンジョンがあるのも嬉しいけど」
でもなぁ、うちのダンジョンはたぶん私のためのものだからなぁ。
「蒼のレベルだとうちのダンジョンは、物足りないんだよね?」
視線を左右に行ったり来たりさせなくてもいいって。
「うん。俺、蓮にもらった経験値5倍と10倍の魔導具で、レベル40超えたんだよ」
レベル40!?
「すごいね!」
私はレベル10になってから、魔導具ばかり作ってる?
あれ?あんまりダンジョン入ってない?
マズイかな?
明日はダンジョンに行こう。
「あの魔導具がすごいんだと思う。
ずっとレベルアップしてなかったのに、
アレ身につけてるだけで3つくらいレベルアップしたんだぞ?」
それはすごいね。
「ってことは、50倍になってるのかな?」
「確認しようがないからわからないな」
あっ、そうか。
ステータスって、私にしかないんだっけ?
「そうだよね。それで結婚した後、ダンジョンはどうするつもりでいるの?」
「それは今までみたいに、夜にダンジョン潜るのか?ってことか?」
「そうだね」
「行きたいけど、蓮がイヤなら、行かない」
すんごい我慢してるね。
「行きたいなら行っていいんだよ。止めないよ?」
そんなに行きたいのにヤメさせたら、ストレスでハゲちゃうじゃない。
「行っていいのか?」
私は頷いて、ただし、と続けた。
「行ってもいいけど、ちゃんと帰ってくること。
そのまま仕事に行かないで、朝ごはんも一緒に食べること。どうかな?」
「わかった!ちゃんと帰ってくる!ありがとう蓮」
お礼を言われるようなことでもないんだけど。
「あと、夕飯で食べたいものがあったら、
前日までにリクエストして?」
蒼が驚いた顔で、
「食べたいもの言っていいの?」
なんでダメだと思ったのかな?
「えっ!?いいよ?当日だとムリなものもあるから、
前の日に言ってもらえるとありがたいかな」
当日に豚の角煮とか言われてもねぇ?
煮込む時間ないじゃない?
「なら、明日の朝ご飯に、玉子焼きが食べたいとかって言うリクエストも、あり?」
「全然ありだよ」
良い笑顔だね。
「あと、聞きたかったんだけどいい?」
「なんでもどうぞ?」
「ダンジョン課の人がダンジョン所有者と結婚したら扱いはどうなるの?」
「あー、今までも確かに担当してる所有者の人と結婚した人はいるんだけど、みんなダンジョン課を辞めてるんだよな」
えっ!?そうなの!?
「蒼が辞めると私、困るんだけど。うちのダンジョン秘密だらけだし」
「だよな?俺も辞める気はないかな。都庁ダンジョンにも行きたいしな」
ブレないねぇ。
「結婚しても、今まで通りで大丈夫なのかな!?」
「そこはなんとかするから、心配しなくていい」
よかった。
「それならお願いね」
一通り話終わったかな?
いやまだだったね。
「で、蒼はいつ引っ越しする?」
「あー、あのさ。今日からでもいいかな?」
「荷物は?」
「インベントリに入ってる」
えっ?
「今まで住んでた部屋は?」
「あー、先週更新だったんだけど、更新しなかったんだ」
って、えっ!?
「じゃあ1週間どうしてたの!」
「ホテルとかダンジョンとか?」
もーバカなの?
ダンジョン好きすぎるでしょう。
「なんでうちに来ないのよ。何やってるのよ!」
「ごめんなさい。だけどまだ結婚してないのに、
住まわせてくれってお願いするのも、違う気がしたんだ」
バカだなぁ。
「それに夜、ダンジョンに潜ってること内緒にしてたから」
あー、そうだよね。
「理由はわかった。
2階の空き部屋を蒼の部屋にしちゃおう。
書斎とか別にいる?」
「書斎とかはいらないよ。家で仕事とかしないし」
「了解。部屋に鍵とかないけど必要だったらつけよう」
「いや、大丈夫」
大丈夫なんだ?
「あのね?一昨年父が亡くなってから、
1人で暮らしてたから、他の人と暮らすのに慣れてないんだよ。
生活する上で困ったこととか、
その都度相談してルール決めたりするんで大丈夫かな?」
「問題ないよ。俺はご飯とか作れないし、でも出来ることはやるから」
「わかった。力仕事とかダンジョン関係は、
まるっとお願いすることになると思うけど」
ダンジョン関係は今までと同じだけど。
力仕事はお願いしたいよね。
「了解した。そんなのはいつでもやるよ」
「ありがとう」




