ダンジョンナビゲーション?
収納庫でスニーカーを履くのって、ものすごく違和感があるんだけど。
収納庫だけど台所だしね。
けど、しかたないわよね。
だって収納庫だけどダンジョンなんだもの。
懐中電灯も持っていくわよ。
収納庫の入り口のココはダンジョンだけど、まだダンジョンじゃないのかな?
安全地帯ってやつなの?
セーフティエリアも同じこと?
ネットにそんなのがあるって書いてあったわ。
安全地帯やセーフティエリアには、魔物は入って来られないって。
まだ入り口だから電気があるけど、ダンジョンに入ったらたぶん電気の灯りは、届かないんじゃないかと想像する。
ネットで見たダンジョンって、洞窟みたいなのが多いみたいだったし。
あと遺跡みたいのとか。
ジメジメして暗いイメージ。
草原みたいなところだったら、爽やかでピクニック気分になれるかもだけどね?
いやダンジョンだからムリよね。
バールも持ったし、ジャージに着替えた。
家の鍵もかけた。
だって、ダンジョンにいるときに誰かきたら困るじゃない?
インベントリに水のペットボトルとクッキーも入れておいた。
念のためよ。
スニーカーの紐もキッチリしばって、さぁ行ってみようか!
って、こっちでいいのかな?
若干腰が引け気味だけど、収納庫の奥に向かって、慎重に歩く。
あっ、階段がある。
ここを降りろってことよね?
20段ほど階段を降りると、外と繋がっていた。
外!?
いや、緑川家の外じゃないわよ。
こんな景色、見たことないもの。
日本の古き良き田舎の風景、みたいな感じ?
なぜか田んぼが広がってるんだけど?
苗植えたばかり?
えっ!?
ダンジョンって異世界みたいなものじゃないの?
これは…タイムスリップ的な?
いや、でも人はいないけど。
いないわよね?
じっと見回して誰かいないか探してみる。
『スキル【索敵】を取得しました』
えっ!?索敵?
今ので覚えたの?
簡単に覚えられていいけど、ネットの物語では、すごい訓練とか練習とかして身につけてたけど。
そんなこともないのね?
覚えたなら使わないとね?
索敵って、何かいるかわかるのかな?
何かいる?
あっ、なんかレーダーマップみたいの出た。
ところどころに何かいるみたい。
魔物?
1番近いのは、左側の田んぼの横のところね?
ゆっくり近づいてみる。
「スライム?」
これは有名なヤツでしょ?
私でもわかるくらいだもの。
鑑定してみよう。
鑑定
スライム レベル1
最弱の魔物
核を壊せば、倒すことができる
ちょっと待って?レベル1で最弱なの?
私レベル0なんですけど!?
えっ!?私、これ倒せる?
核ってどれ?
あの真ん中に浮いてる?石みたいなヤツ?
あれを壊せばいいの?
とりあえずバールで殴ってみる?
よし行け私!
ガンバレ私!
「せーの!」
振り上げたバールをスライムに叩きつけた。
ちゃら〜ん!
って音がした。
なんの音?
『メグミハントダンジョン初回討伐特典が贈られます』
『ギフト【マッピング】が贈られました』
マッピングって何?
今いる場所の地図を作れるの?
すごくない!?
『レベルアップしました』
レベルアップって?
レベル0じゃなくなったってこと?
『緑川蓮のレベルが1になりました。レベル2にアップするには、経験値2が必要です』
魔物倒すと、レベルアップするの?
経験値って何?
『討伐したスライムから【ダンジョンナビゲーション】がドロップしました』
ダンジョンナビゲーション!?
なにそれ?
このタブレットみたいなヤツのこと?
私はそれを拾い上げた。
『はじめまして、こんにちは!ボクに名前をつけてね!』
ぎゃっ!?
しゃべったわよ!?
びっくりして放り投げるところだったわ。
って、えっ!?また名前?
ダンジョンナビゲーションって言ってたし、呼びやすそうだからナビィでいいわよね?
「ナビィ。ナビィにするわ」
『安直ですね』
うるさいわね。
どうせセンスなんかないわよ。
センスのない私に名付けさせるんだから、最初から覚悟しておきなさいよ。
「それなら、ナビ太郎とかナビ助とかナビ子とかにする?」
『…ナビィでお願いします』
「最初からそう言いなさいよ」
で、この話してるタブレットは何?
「で、ナビィは、なんなの?」
『ボクは、マスターをダンジョンでナビゲートする有能なナビゲーションのナビィです』
あんまり有能そうには思えないけど。
「ダンジョンのこと聞いたら答えてくれるの?ってか、マスターって何?」
『マスターはボクのご主人様です』
「それって私のことなのかな?」
『他に誰かいますか?』
いないのなんかわかってんのよ!
「まぁいいわ。で、ダンジョンってなによ?いきなり出来たんだけど!?」
『ダンジョンはダンジョンですよ?』
はぁ?こいつホントに有能なの!?
イラっとするわね。
「捨てて帰ろうかしら?」
ボソッと言ったら、ナビィが焦って言った。
『あー、捨てないでください、マスター!!』
「ならマジメに答えてくれる?」
あんまり舐めた態度取ってると分解するわよ?
『はい、このメグミハントダンジョンは、見ての通りこの階層はいずれお米が手に入ります』
「それはこの階層だけ?他の階層は?」
『他の階層も何かしらの食料?食材?が手に入るはずです』
ホントに!?
物価高でも給料は上がらないから、色々きつかったのよね。
お米が手に入るだけでもありがたいわね。
「さっきスライムを倒したら、ナビィがドロップ?したけど、これからも魔物を倒したら何かがドロップするの?」
『もちろんです。このメグミハントダンジョンは恵みと付けられたので、何かしらの食料?か食材?がドロップするはずです』
なんと、ダンジョンの名前にそんな意味が?
そんな仕様なら宝箱ダンジョンとか、なんかお金に困らなさそうなダンジョン名にすればよかったわね。
まぁ、知らなかったからしかたないけど。
でも、両親の名前から付けた私、グッジョブよね。
恵み(メグミ)を捕獲するダンジョンってことでしょ!?
なるほどなるほど。
食べるのには困らなさそうよ?
「ねぇ?ネットで調べたら、魔物からは魔石がドロップするとかって書いてあったんだけど、このダンジョンでは関係ない感じかな?」
『いえ、食料とともに魔石もドロップします』
えっ?魔石もドロップするの?
「魔石ドロップしても使い道なくない?」
『売れますよ?』
売れるの!?
「どこに?」
誰が買うの?
『この国ですけど?』
当然でしょ?みたいに言われたけど、ダンジョンって公表されてるの!?
「えっ?世の中の人って、ダンジョンがあること知ってるの!?」
私、知らなかったけど。
『いえ、ダンジョンの所有者と国のトップの人たちだけですね』
はっ!?
めちゃくちゃ限定的じゃないのよ!
「そもそも、なんでここにダンジョン出来たの?」
『あー、それはたまたまとしか…』
たまたまなの!?
たまたま緑川家なの!?
「他にもダンジョンの所有者がいるってことよね!?」
『そうですね』
「その人達は、国に魔石を売ってるってこと?」
『そういうことですね。他のドロップ品も買取してくれるものもあるようですよ』
なるほど?
けど、ここのダンジョンは食料なのよね?
私が食べたら終わりなのでは?
「もしかして、ダンジョン出来ましたって、申告しなきゃダメなの!?」
面倒な上に、国とかと関わり合いになりたくないですけど!?
『あっ、それは大丈夫です。ボクがドロップした時点でダンジョンネットワークが繋がるので、すでに国は把握してます』
なんですって!?
面倒なこと確定じゃないのよ。
「ウソでしょ?」
全然大丈夫じゃなーーーーい!!!