ダンジョン課と秘匿案件
「これはまた…」
冴木さんが、絶句している。
すみません。
魔導具を作れてしまったので、扱いを相談したい旨を連絡したら、すぐに時間を取ってくれた。
マジックバッグとは言えなかったのよ。
だって、マジックバッグ作った人はいないって聞いてたし、ドロップもほとんどしてないみたいだし。
ドロップして秘密で持ってる人もいるのだろうけど、表に出ているマジックバッグはほとんどないとのことだったからだ。
だからマジックバッグとは言わずに、魔導具と伝えたのよ。
で、巾着袋の茶の間サイズと茶の間半分サイズを出して見せたら、冴木さんの動きがとまった。
鑑定したのよね?
なんかホントごめんなさい。
「あの、冴木さん?」
声をかけると、ハッとして、
「すみません、まさかマジックバッグだとは思わなくて」
ですよねぇ。
「なんかマジックバッグって言えなくて…魔導具とだけお伝えしてしまいました」
「どうしてマジックバッグを?いや、どうやってマジックバッグを?ですかね?」
錬金術ってのは、さすがに伝えても良いよね?
それじゃないと説明出来ないもんね。
「あの、錬金術で作りました」
「錬金術!?スキルってことですか?」
「はい、2階層の特典でした」
あーなるほど!と冴木さんは納得したようだ。
納得出来るんだ?
「それでマジックバッグが見たいとおっしゃってたんですね?」
バレるよね。
「はい、その通りです」
「で、作れてしまった。と?」
私は頷いた。
「マジックバッグの大きさが2種類なのは?」
「大きいほうが、今の私の魔力で作れる最大ですね」
「んっ?マジックバッグの容量には魔力量が関係するのですか?」
「そうみたいです。魔力量が増えたらもっと大きい容量のマジックバッグが出来るんだと思います」
「なるほど、で小さい方は?」
「あっ、それは実験ですね。魔力量を調整出来ないかな、と」
色んなサイズがあれば、いーかなーと思っただけなんだけどね。
「なるほど。これ以外のサイズは?」
「レベルが足りないのか、やり方が違うのか、練習が足りないのかムリでした」
ホントにムリだった。
レベル上げないとムリっぽい気がするけど。
「こちら売り出しますか?」
「売れますか?」
「間違いなく売れます」
売れるんだ?
まぁ、そうかなって気はしてたけど。
「でも、私が作ったとかは知られたくないです。入手方法とか製作者とかが漏れなければ…」
「そこは厳重に管理します」
冴木さんがそう言うなら、
「わかりました」
「オークションに出しましょう!良い値がつくと思いますよ」
なんで冴木さんが嬉しそうなの?
でもそれ、練習用だったからなぁ。
「その巾着袋100円ショップのなんですけど、大丈夫ですか?」
「その辺は落札者が別のカバンに入れればいいだけなので、問題ないでしょう」
そういうものなんだね。
「あっ、あとこんなのもあるのですが」
指輪とブレスレットも見せてみた。
「マジックリング!?これにも収納出来るのですね!?」
「はい、試しにやってみたら出来ました」
冴木さんは、指輪とブレスレットを見ながらキラキラした目ですごいですよ!と。
「これもオークションに出しましょう!」
冴木さんは売れると判断したのかな?
それならお願いしちゃおう。
「そうですね、お任せします」
もう使わない指輪とブレスレットだしね。
そう言うと、冴木さんはお任せください!と、胸をひとつ叩いた。
マジックバッグの巾着袋10個とマジックリングの指輪とブレスレットの預かり証を書いて渡してくれた。
「お野菜とかの査定は、たぶん明日くらいにはご連絡できると思います」
「あっ、はい。わかりました」
あー、忘れてたー。
野菜とかお米とか魔石とかミドルヒールポーションとか預けてあったんだ。
「明日、ダンジョン課に行った方がいいですか?」
仕事帰りになるけど。
「そうしていただいてもよろしいですか?お仕事帰りですよね?」
「はい。遅くて申し訳ないですけど」
定時後だからねぇ。
残業させて申し訳ないです。
「大丈夫ですよ。明日お待ちしてますね」
「はい、お願いします」