ダンジョン庁ギルド課
ブーイングが起こったらしい。
ダンジョン課の出会いに繋がらなかった6人から。
なんでも、
「結婚相手もいるだけでもズルいのに、なんか若くなってねぇか?」
って事らしい。
蒼だけならまだしも、松山さんと遠野さんもとなるとマスクと眼鏡だけでは、カムフラージュにはならなかったようだ。
そう言われてもねぇ?
あれをこれ以上、世に出すのはなぁ。
蒼は、ほっといていいからとは言うけど。
ちょっと気にはなるよね。
彼女でも出来れば、いいのかな?
私には紹介出来る人いないけどね。
でもさ、確か相川さん、木村さん、渡辺さんは、ダンジョン課からギルド課に異動になったんじゃなかったっけ?
ギルドの統括とかやってるって、蒼から聞いたけど、そこに女性陣はいないのかしらね?
「蓮、温泉に行かないか?」
「温泉?」
蒼が突然そんな事を言い出した。
「そう、温泉」
「突然どうしたの?」
今まで温泉の話なんかしたことがあったかな?
「千変万化に温泉ダンジョンが発生したんだよ。攻略は終わってるからいつでも行けるぞ」
なるほど!
蒼のダンジョンに温泉が!
それは魅力的ね。
実は私、1度しか温泉に行ったことがない。
もっと行きたかったのだけれど、この胸がネックになっていた。
同性からでもガン見されるのは、ちょっとね…。
しかもヒソヒソとデカいだの作り物だの言われたら行くのを躊躇うわよ。
「3階層、全部が温泉なの?」
「各階層毎にいくつかあったぞ」
へぇ?
それはいいわね。
「行ってみたいけど、他の人はいないわよね?」
「もちろん、俺と蓮だけだが?」
そっか。
「それならいい」
ちょっとほっとしてると、
「もしかして、温泉嫌だったか?」
「違うの、温泉には行きたい。けど、ずっと前に行った時に女の人にガン見されて嫌だなって思って、それから行ってなかったから」
この胸のせいで、色んな事を制限されている気がする。
「むっ!?蓮の胸を見ていいのは俺だけなんだが!?」
はいっ!?
何を言ってるのかな?
ってか、変なこと考えてないでしょうね?
「蒼さん?」
思わずさん付けしちゃったわよ。
「良し、千変万化に行こう!温泉に行こう!今度こそ一緒に入ろう!」
ええーーーー!?
ちなみに、家と千変万化の家は、魔導具【虹橋の神道】で繋げている。
もちろん私と蒼だけだけどね。
だから瞬時に移動出来る。
封印するつもりだった【虹橋の神道】を活用出来る場があって、良かったのかな?
「蓮、温泉に入る前にあの右奥の温泉を鑑定してみてくれないか?」
「あそこ?」
私は、右奥の温泉?なんか砂漠のオアシスかと思わせるような見た目なんだけど?
温泉なの?
「そう、あの温泉」
「いいけど、蒼も鑑定出来るじゃない?」
そう言いながら、首を捻って温泉に近づく。
鑑定
癒しの温泉
1時間入ると肉体年齢が1歳若返る。
もしくは、15分でストレスが霧散する。
「はぁー!?何よこの温泉!?蒼!!」
ポーションを飲まなくても若返ることが出来るじゃないの!
「俺と松山と遠野は、ここに入ったってことにしたらどうだろう?」
なるほど?
ポーションのことは、隠せるってことね?
「そしたら、他の人も来たがるんじゃない?」
「なら連れてくればいい。俺のダンジョンだから、蓮には迷惑はかけないようにする」
蒼が、それからさ、と続ける。
「彼女は紹介してやれないが、少しくらいの若さならお裾分けしてもいいかなと」
なるほど。
「そうだね」
そのくらいはいいよね。
って言うか、これだけ温泉があるってことは…。
「ここの温泉って、全部バラバラの効果があったりする?」
「あるぞ」
あるんだ?
「この階層だと、ここが癒しの温泉だろ。あとは回復の温泉。美肌の温泉だな」
指差しながら教えてくれる。
あら、美肌の温泉はいいわね。
「2階層は、家族風呂みたいになってるぞ?夫婦円満とか金運上昇とかだったな」
へぇー?
そんな温泉の効果あるの?
まぁ、ダンジョンだしね。
「3階層は、」
そこまで言って、蒼はニヤリと笑って、私の耳元で囁いた。
「愛欲の温泉と子宝の温泉」
と…。
えっ!?
あいよく!?
こだから!?
まさか、これから行くのって…?
「あおい…今どこに向かってるのかな?」
イヤな予感しかしないわけだけど…。
「んっ?もちろん愛欲の温泉だが?夫婦の絆を深めるために」
やっぱりーーー!?!?
何をわかりきったことを?みたいな顔やめてくれる!?
「それなら、夫婦円満の温泉でいいでしょ!?」
「だって俺たちすでに夫婦円満だろ?」
いや、そうだけど、そうかもしれないけど、そうじゃないでしょおーーー!?
その後、のぼせたのは言うまでもない…。




