ダンジョン1階層の戦利品
お米〔メグミハント〕。
めちゃくちゃ美味しかった。
これはヤバいですよ。
それじゃなくても、鑑定さんに体重増加で焦り気味とか鑑定されてるのに、美味しくてご飯を食べる手が止まらないのよ。
これはランチも食べにいかないでおにぎりに変えようかな。
ランチ代も浮いて一石二鳥?
でもね?
ダンジョンで魔法使うとお腹空くのよ。
そこに美味しいご飯だよ?
食べちゃうでしょう?
「蓮ちゃん、ちゃんとお休みできたみたいね」
月曜日、出勤したら同僚で同期の咲ちゃんにそう言われた。
「本当だ!蓮さん顔色良くなってるし、なんか表情もスッキリしてる?」
隣の席の後輩の舞ちゃんにもそう言われた。
「そうかな?たくさん寝たからかな?」
たぶん、ヒールポーションを寝る前に飲んでるからだろうな。
肌の調子だけじゃなくて体調もすこぶる良い感じがするもん。
これはヒールポーションは常備しておきたいところだわ。
「今日はランチどこ行きます?」
「あーごめん、今日はおにぎり持参してるの」
両手を合わせて謝る。
「珍しいですね」
舞ちゃんに言われるくらいには、今までお弁当持参したことがなかった。
だって重たいし、傷んだらイヤだしね?
でもほら、今はインベントリがあるから!
「知り合いから貰ったお米が美味しかったからおにぎり持ってきちゃった」
「なんてお米ですか?」
「それがわかんないのよね。どうも自分たちが食べるために作ったのを分けてくれたみたいで」
ってことにしておこう。
「じゃあ、わかったら教えてくださいね」
「りょうかいよ」
インベントリの中で、タブレットが鳴ってる?
頭の中で電話のコール音が響いてる。
って言うか、インベントリに入れてても連絡来たのわかるのね。
ビックリだわ。
後で折り返そう。
仕事の合間に冴木さんに折り返し連絡してみたら、魔石とお米の査定が終わったから、ダンジョン課に来て欲しいと言われたので、帰りに寄ることにした。
実は職場から都庁まではそこそこ近いんだよね。
で?
そもそも都庁のどこにダンジョン課ってあるの?
都庁に着いたら、再度連絡くれとは言われたけど…
わかんないから言われた通りに連絡しましたよ。
あっ、来たついでに魔石を買取してもらおうと思ってる。
買取予定の魔石は、ちゃんとインベントリから出してあるわよ。
100円ショップで買った巾着袋に入れてある。
忘れないで買取してもらわないとね?
いくらになったのかはこれから聞くんだけど。
「緑川さん、お待たせしました」
ビシッとスーツの黒縁メガネの冴木さんがいましたよ。
今日もいい声の男前ですね。
眼福耳福ですね。
「冴木さん。こんちには、お迎えありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ来ていただいてありがとうございます。こちらへどうぞ」
連れていかれたエレベーターにD階なるボタンが存在していた。
D階?
ダンジョンのD?
ダンジョン課のD?
「ダンジョンナビゲーションのタブレットを持っている人だけが押せるボタンなんですよ」
「なるほど」
タブレットを念のためカバンに入れといてよかった。
冴木さんがD階ボタンを押してくれる。
「買取の時はこのエレベーターでD階に行けばいいと言うことですか?」
「そういうことになります。着いてから買取の説明とかさせてもらいますね」
「お願いします」
〔ダンジョン庁ダンジョン課へようこそ〕
エレベーターを降りたら、そんな文字が目に飛び込んできた。
なんだろうね?
歓迎されてるの?
反応に困るね。
「みなさん、えっ?って顔されますね」
冴木さんも苦笑いだし。
「最初にダンジョンが出来た20年ほど前から、あるらしいです。だからここはダンジョン庁ダンジョン課なんですよねぇ」
ってことは、ダンジョンに名前決められてたってこと?
役所なのに?
マジですか。
ダンジョンって20年くらい前から存在してたのか。
全然知らなかった。
冴木さんは、ダンジョン庁ダンジョン課の扉を開けて入っていく。
私もついて行く。
おいていかれても困るし。
入った部屋は、役所っぽいけど何か違う雰囲気がある。
「冴木さん、お帰りなさい。そちらの方が?」
受付?なのかな?
女性の方が冴木さんに話しかけている。
冴木さんは頷いてから、
「会議室空いてるよな?」
あら、ちょっと話し方違うのね。
部下の人なのかな?
「はい、大丈夫です」
「では、緑川さんこちらにどうぞ」
冴木さんが歩き始めたので、私は受付の方に頭を下げて、冴木さんの後に続いた。
8人くらいで満席になりそうな会議室に案内された。
もっと小さいところはなかったのかな?
2人じゃ広すぎない?
そう思っていたら、私のあとから2人ほどやってきた。
だれ?
冴木さんの顔を見ると、紹介してくれた。
「まず白衣の方が、斉藤と言いまして、魔石買取担当の責任者です」
「斉藤です」
魔石買取担当?
「もう1人が、安藤と言いまして、食品買取担当の責任者です」
「安藤です」
食品買取担当?
「で、こちらがダンジョン所有者の緑川さんになります」
「「よろしくお願いします」」
と、頭を下げられたので、私もよろしくお願いしますと頭を下げる。
なんで責任者とか出てきちゃうの?
冴木さんが、いくらいくらになりましたってだけじゃないの?
「まず座りましょうか」
私の隣に冴木さん。
私の向かいに斉藤さん。
その隣に安藤さんと言う席になった。
「緑川さんのダンジョンからドロップする魔石ですが、とても魔力の純度の高い魔石であることが判明しました」
魔石の魔力の純度?
「あのすみません。魔力の純度とは?」
「そうですね、なんと説明するとわかりやすいですかね?魔力が濃縮されていると言うか、圧縮されてたくさん魔力が詰まっていると言うか…」
?
「他のスライムの魔石より魔力が多いって感じで合ってますか?」
濃縮だと味濃いみたいなイメージ?
圧縮だとギュッて押し込まれて詰まってるイメージ?
なんか多い?って認識でいいのかな?
「ざっくり簡単に言うとそんな感じですね」
専門的なこと言われてもわかんないから、そんなんでいいよ。
私は頷いた。
「その上で、属性がついていたので希少価値が高いと判断しました」
えっ?希少価値?
倒したら必ず属性ついてくるのに!?
えっ?今日もそこそこ持ってきちゃったけど?
「今回貸し出していただいた、火水風土の属性付き魔石は、1個につき買取価格を2,500円とさせていただきたい」
2,500円!?
スライムの魔石って1個100円じゃなかった!?
「緑川さん、いかがでしょうか?」
「税金分引かれてその価格と言うことですか?」
「もちろんです」
マジですか。
「それで問題ないです。むしろ高すぎじゃないですか?大丈夫ですか?」
「あははは、高すぎじゃないかとおっしゃったのは、緑川さんが初めてですね」
えっ?
だって、1個2,500円って。
「では、この価格で契約してよろしいですか?」
冴木さんに確認されたので、頷いた。
破格じゃないの?
「もし、他の属性の魔石がドロップした時にはまた査定させていただきますので」
「あっ、はい。よろしくお願いします」
他にも出るのかな?
「続きまして、お米〔メグミハント〕の買取価格ですが、1袋2,000円でいかがでしょうか?」
はっ!?
「高くないですか!?あれ3キロとかですよね!?」
「緑川さん、ダンジョン産の食材は数が少ないので総じて高額になりやすいのです。今回は150袋ありましたので、比較的安い買取価格になってしまい申し訳ないのですが」
えっ!?これで安いの!?
私が絶句していると、
「お米〔メグミハント〕には、魔力が含有されています。ダンジョン所有者は喉から手が出るくらい欲しい食材なのです」
意味がわからないんだけど?
「?どういうことでしょうか?」
お米に魔力が含まれてるの?
含まれてると何がいいの?
「ダンジョンでは魔法使いますよね?」
「そうですね、魔法撃ったりしますよね」
「そうした時に魔力が減ります。その魔力を早く回復できるようになるのが、魔力を含有した食材なのです」
へぇー。
「あー、お米ならおにぎりとかで持参できますもんね」
なるほど。
「そうなのです」
「ですので、今回は2,000円ですが、次回はまたその時の状況で価格が変化すると思います。ただ最低ラインは2,000円となってます」
えっ?次回、買取価格上がるかもってこと?
ホントに?
「この価格で問題ないでしょうか?」
「大丈夫です。問題ありません」
みんながなぜかホッとしたようだった。
もっと高くって言われると思ってたのかな?
「それで最後なのですが」
まだなんかあったっけ?
「ヒールポーションの買取価格になります」
あっ、忘れてた。
自分で飲もうと思ってたから、買取のことすっかり忘れてた。
「実は既存のポーションとは、性能が違いすぎまして、価格で揉めていまして…」
「揉めてる、とは?」
「性能に合わせて買取価格を30,000円くらいにするべきだと言う者と」
はっ!?30,000円!?
ウソでしょ!?
「様子見で10,000円くらいにするべきじゃないかと言う者ですね」
様子見で10,000円!?
私、いっても倍の3,000円くらいだと思ってたんだけど!?
あんまり高額だと怖いから。
「安い方、安い方でお願いします」
「緑川さんはそう言うかなと思ってましたけど、ホントによろしいんですか?」
冴木さんにも念押しされたけど、10,000円でも高いと思ってるから、それで大丈夫だから!!!
私はコクコク頷いた。
預かり証をカバンから取り出して渡す。
買取金額を計算してくれる。
買取
魔石8✕2,500=20,000
お米150袋✕2,000=300,000
ヒールポーション2✕10,000=20,000
合計340,000円
はぁっ!?
1ヶ月の給料より多いんですけど!?
お米がでかいのね。
あっ、忘れてた。魔石。
「あの、魔石追加で買取お願いしようと持ってきているんですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
冴木さんが言ってくれたのでカバンから巾着袋を取り出して、冴木さんに渡した。
巾着袋の中を覗いた冴木さんが、
「これはまた大量ですね」
ダメだった?
「多すぎましたか?」
「いえいえ、大丈夫ですよ。数えさせてもらいますね」
布の敷いてあるケースに魔石を取り出して数えている。
確か40個のはず。
あれ?40個✕2,500?
10万円!?
「40個ですね、では先ほどの合計にプラス10万円を銀行の口座に振り込みしますね」
「それって大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ、〔トクベツカ〕からの振り込みになります。トクベツカのことは税務署なども知っていますので」
そうなんだ。
ならよかった。
「次回からは受付で名前をおっしゃっていただければ、緑川さんの対応はキチンとさせていただきますので」
なんか大事になってる?
「はい、あのよろしくお願いします」
買取の書類にサインして、帰宅した。
あー疲れたーーー。
まだ月曜日なのに…
1週間乗り切れるかな…




