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文化祭
文化祭当日、写真を撮る流れになったとき、遥斗の気持ちに薄々気づいていた涼太が遥斗を茶化した。
「おー、紗月と遥斗じゃん!ツーショット撮っちゃえよ!」
「やめろって……」
やめろとは言いつつも遥斗は内心、紗月と二人で写真を撮れたらな…と思っていた。
そんな時、紗月はそっと小さな声で呟いた。
「……ほんとはツーショット嬉しいんだけどな…」
遥斗以外に聞こえないくらいの声で呟いたその一言に遥斗は動けなくなった。
やっぱり紗月は僕のことを...?
そう思っても勇気のない遥斗はそれ以上踏み込む勇気もなかった。
もし違ったら?この関係すらダメになるかもしれない。
その感情が遥斗をどんどん弱くさせた。
互いにあと一歩が踏み出せない。
それが苦しくてたまらなかった。
結局二人は「好き」という言葉が言い出せないまま
あっという間に年が明け、受験目前。
駅前の本屋で偶然紗月を見かけた。
「……紗月!」
「遥斗くん!」
その日はまた雨で
ふたりで小さなカフェの軒先で雨宿りをすることになった。