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『秘密のエグゼクティブ・ラブ』〜社長、恋してはいけませんか?〜  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『その隣にいる意味 ― 41歳、社長と夫と、私たちの未来へ。』
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■第8話「社長退任?」



重役会議室に静かな緊張が漂っていた。

長年、美咲が率いてきた企業が、次のステージへ進む準備を始めている。


議題のひとつ――「次期社長選出の検討」。

それは、婉曲ながらも、現社長・七瀬美咲の“勇退”を促す意味を含んでいた。


「……七瀬社長。あなたがこれまで築いてきたものには、深く敬意を払っています。しかし、企業として持続可能な経営体制を……」


専務の広瀬誠一ひろせ せいいちが慎重に言葉を選ぶ。


続けて、常務の古賀結花こが ゆいかが静かにうなずいた。


「……これまでの貢献は私たち全員が認めています。ただ、今後の更なる事業拡大を考えると、“次”の形も視野に入れるべきかと」


美咲は何も言わず、ゆっくりと手帳を閉じた。


その場は一旦解散となったものの――

重い空気のまま、彼女は社長室に戻った。



数分後――社長室のドアがノックされる。


「入って」


入ってきたのは、3人の“味方”たちだった。


副社長であり高校時代からの親友・涼子。

そして副社長の席に並ぶ重役であり、数少ない結婚の秘密を知る、古賀結花と広瀬誠一。

さらには、社外取締役として社内に戻ってきたばかりの――高梨有紗。


有紗が口火を切った。


「……誰も言わないなら、私が言う。あんな会議、流される必要ないわ」


涼子も言葉を続ける。


「社長のイスは“年数”じゃない。信頼と覚悟の重みで決まる。私たちは美咲の下でまだ走ってたいのよ」


古賀もまた、静かに立ち上がった。


「私は“退任”ではなく、“再起動”の時期だと思っています。社長が走り続けるなら、それに付いていきます」


美咲は言葉を失いながらも、胸の奥が熱くなるのを感じていた。


そのとき、再びドアが開く。


「失礼します。……俺も混ぜてくれる?」


悠真が入ってきた。


彼の姿に、有紗、涼子、古賀、広瀬の4人はふっと笑みを見せる。

――この秘密を共有する、たった4人。


室内が静かになる中、悠真は美咲の前に立つと、スッと手を伸ばして彼女の指を握る。


「……俺も、辞めてほしくない。まだ君の“そば”で、君が“トップ”でいる姿を見ていたい。だって……誰よりも、その背中が好きだから」


美咲の目に、熱いものがこみ上げる。


そして、ふたりは自然と唇を重ねた。


「んっ……ふぅ……」


誰も何も言わない。

ただ静かに、そのキスの深さと意味を――見守っていた。



夕方。自宅では、長男・翔真を筆頭に、子どもたち全員が何かを察していた。


「ママ……社長、辞めちゃうの?」


詩音の問いに、翔真が言葉を続ける。


「……辞めないでほしい。オレたち、ママが頑張ってる姿、ずっと見てきた。だから、続けて」


律真も小さく頷いた。


「ママがどんなに忙しくても、俺、誇りに思ってる。友達に“七瀬美咲の子ども”って言われるの、嬉しいよ」


澪、結翔、紗良、葵、大地――全員の思いが、美咲の胸に沁みた。



そして、次の朝――。


出勤前、スーツを着た悠真がリビングで一息ついていたとき。

美咲がキッチンからふらりと近づき、何も言わずに悠真の膝の上に座った。


「……どうした?」


「……キス、して」


「今朝は甘えモード?」


「……お願い。……あたしに、エールをちょうだい」


悠真は微笑み、ゆっくりと顔を近づける。


「……美咲。まだ、社長続けて。……君がそうであることが、俺にとっても誇りなんだよ」


そして――


「んっ……ん……ぁ……」


熱く、深く、甘いキス。


美咲はそっと頬を赤らめて、言った。


「……行ってくるわ。“まだ、頑張ります”って言いに」



午前10時、再び重役会議室。


全員がそろう中、美咲はまっすぐ顔を上げた。


「先ほどの提案、確かにありがたく受け止めました。でも――私はまだ、ここで“社長”として、やるべきことがあると思っています。……まだ、続けさせてください」


一瞬の静寂のあと、涼子が拍手を打ち鳴らした。


「その言葉を、待ってた」


そして、その日――社長・七瀬美咲は、“続投”を正式に宣言した。


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