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『秘密のエグゼクティブ・ラブ』〜社長、恋してはいけませんか?〜  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『その隣にいる意味 ― 41歳、社長と夫と、私たちの未来へ。』
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■第7話「父親としての覚悟」



夏休みも終盤に差し掛かるある日。

リビングでは翔真(しょうま・高校2年)が静かにスマホを見つめていた。


「……どうしたの? さっきからずっと黙ってるけど」


ソファで本を読んでいた悠真が声をかけると、翔真は一瞬、目をそらした。


「……別に。ちょっと、友達とLINEしてただけ」


その「ちょっと」の一言には、父として察するものがあった。


「……好きな子のことで悩んでる?」


「……っ、なんで分かんだよ」


「いや、俺にもそういう時期があったからな。顔見てりゃ分かるさ。……で、何があった?」


翔真は、数秒の沈黙のあと、口を開いた。


「好きな子、いる。でも、あの子……俺のこと“社長の息子”としてしか見てない気がして。なんか、“七瀬美咲の息子”ってだけで話題にされてる感じがして、イヤなんだ。……俺、自分のこと、ちゃんと見てほしいのに」


その言葉に、悠真の表情がふと曇る。


(――またか。やっぱり、美咲の背負ってるものは大きすぎるほど、大きい)


「……なあ翔真。パパも昔、お前のママに恋してたとき、ちょっとだけそう思ったことがあるよ。“あの美人で敏腕な女性の、旦那にふさわしいのか?”って。でもさ、結局は“俺がどうありたいか”だった」


「……どういうこと?」


「周りがどう見るかじゃなく、自分が“この人を大切にしたい”って本気で思ってるかどうか。それがあるなら、堂々といけ」


翔真は少し照れたように、でもしっかりとうなずいた。


「……うん。パパ、ありがとう」



そんな夕方。

洗面所の前で、今度は詩音(しおん・小学6年)がみおとこそこそ話していたのを、美咲が偶然耳にする。


「だからさ、結翔くんのこと……ちょっとだけ、好きかもって思ってる」


「えー! お姉ちゃん、それマジのやつじゃん!」


美咲は思わず足を止めてしまった。

(結翔って……うちのじゃなくて、隣の子よね……)


詩音の初恋。小さな成長に、少しだけ寂しさと嬉しさが混ざる感情。


夜、美咲がその話を悠真にそっと伝えると、悠真は深く息をつきながらつぶやいた。


「……詩音の彼氏かぁ……ぶっちゃけ、パパ複雑」


「でも、あなた、翔真には“堂々と行け”って言ったのよ?」


「うっ、それはそうだけど……」


苦笑する悠真に、美咲は肩を預けた。


「ねえ、悠真」


「ん?」


「あなたの言葉、子どもたちの支えになってる。私にはない“父親の覚悟”、ちゃんとあるのよ、あなたには」


「……俺、頑張れてるかな」


「頑張れてる。私はちゃんと、見てるから」


そっと唇を重ねる二人。

その背中の先に、8人の未来が広がっている。



数日後、翔真は思い切ってその女の子に手紙を渡し、詩音は「お姉ちゃん!」と照れながら結翔にお礼を言って、2人とも少しだけ“大人”になったような表情を見せていた。


それを見守る悠真は、そっと呟いた。


「……ちゃんと、自分の足で立っていくんだな。子どもたちは」


そして――


「……だから俺も、大人として、男として、もっと成長しなきゃな。美咲に恥ずかしくないように」


そう言いながら、パソコンを開き、次の企画書に静かに手を伸ばしていた。


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