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『秘密のエグゼクティブ・ラブ』〜社長、恋してはいけませんか?〜  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『その隣にいる意味 ― 41歳、社長と夫と、私たちの未来へ。』
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■第5話「子供達のバトン」



夏の終わりが近づくある日。

美咲が朝の支度をしていると、ダイニングにて律真(りつま・中学2年生)と紗良(さら・中学1年生)の兄妹が、こそこそと話していた。


「…詩音と結翔にも声かけといた。あとはパパとママにバレないように進めるだけ」


「うん。澪も手伝ってくれるって言ってたよ。大地と葵もお菓子係!」


そんな会話を背に聞きながら、美咲は小さく微笑む。


(……ああ、また何か計画してるのね。こういうときの子どもたちの団結力って、本当にすごいわ)


とはいえ、母親として知らぬふりも難しい。

ただ、それが“親に内緒の何か”ではなく、“親のための何か”であることは――不思議と分かっていた。



それから数日後――


「ママ、日曜日は空いてる?」


翔真(しょうま・高校2年生)が夕食時にふと訊ねた。


「ええ、たまたま取材も会議も入ってないわ。どうして?」


「ちょっとさ、全員分の時間を合わせたくて」


そう言って、翔真は何も言わずに笑うだけだった。


悠真もそのやり取りを不思議そうに見ていたが、どこか懐かしいような顔をしていた。



■日曜日――朝10時。

七瀬家のリビングには、8人の子どもたちが全員集合していた。

翔真を中心に、手にそれぞれ何かを持っている。


「パパ、ママ、今日は……僕たちからの“ありがとうの日”です」


「えっ……?」


「結婚して10年以上、家族でいられてありがとう。ママが社長で忙しい中、家を守ってくれてありがとう。パパがいつも優しくてありがとう。だから今日は――子どもたち主催の《家族感謝祭》!」


そう言って、詩音しおんが手作りの式次第を読み上げる。


・第1部:ありがとう作文発表会

・第2部:みんなで写真を撮ろう!

・第3部:パパとママの“ラブラブクイズ”対決

・第4部:サプライズ手紙


「……なにこれ……もう、泣いちゃうんだけど」


みおがティッシュを配りながら、にやっと笑った。


「ママ泣くの早すぎー。でも最後までちゃんと聞いてね」



作文発表会。

あおいが読み上げる。


「ママはすごい人です。社長ってかっこいい。だけど、僕にとっては“おなかの音が鳴るママ”でもあります。仕事でどんなにカッコつけてても、夜お腹空いたらカップラーメン食べてる。そんなママが一番好きです」


大地だいちが笑いながらうなずいた。


「パパは僕の友だちです。秘密の特訓してくれたり、ママにバレないようにアイス買ってくれたり。パパがいるから、僕は毎日楽しいです」


その一つひとつの言葉に、美咲も悠真も、涙をこらえながらただ静かに聞き入っていた。


そして最後のサプライズ――


律真が代表して二人に手紙を渡した。


「これ、8人全員で書いた“未来への手紙”。

10年後も、20年後も、家族でいたいって書いてあります。ママが仕事を続けても、パパが家のことやっても、みんなが一緒にいたらそれでいいって」


それは、子どもたちからの“バトン”だった。

受け継ぐのは、未来への信頼。そして、ふたりへの愛情だった。



その夜、美咲はリビングで手紙を何度も読み返しながら呟いた。


「……もう、こんなのズルい」


「うん。泣かないのは無理だわ」


悠真は美咲の肩をそっと抱きながら言った。


「でも、こういう日があるから、頑張れるんだよな。たぶん、これからも」


「……ねえ、悠真」


「ん?」


「私たち、いい子どもたちに育てたね」


「違うよ。あいつらが、勝手に“いい子”になってくれたんだよ。俺たちが必死で背中見せてただけ」


「……キスしていい?」


「……もちろん。何度でも」


ソファの上、静かに唇を重ねる二人。その先に、またひとつ確かな未来が灯っていた。


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