表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『秘密のエグゼクティブ・ラブ』〜社長、恋してはいけませんか?〜  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『その隣にいる意味 ― 41歳、社長と夫と、私たちの未来へ。』
68/77

■第1話「それでも、私は社長です」


『その隣にいる意味 ― 41歳、社長と夫と、私たちの未来へ。』より





朝の会議室、ホワイトボードには若手プロジェクトチームの名前が並び、資料に添えられたリーダー一覧を見つめる美咲の視線が止まる。


「……知らない名前ばかりね。」


誰に言うでもなく、静かに呟いた。41歳、社長就任から10年目。育ててきた社員の多くは今や管理職。現場を支える顔ぶれは、いつの間にか自分の知らない名前で埋まっていた。


部下の報告を受けながらも、心のどこかがぽっかり空いていた。


エレベーターに乗ると、そこに偶然乗ってきたのは――夫、悠真だった。


ふたりきりになった箱の中。静寂の中で、美咲がふとため息をつくと、悠真が小さく笑う。


「……名前を覚えてないこと、落ち込んでるんだろ?」


「……聞こえてた?」


「うん。で、美咲は忘れてるかもしれないけど……みんなが“七瀬社長”って名前、憧れて入社してるんだよ。」


「そんなの、昔の話でしょ」


「違う。今もだよ。背中見てる人、いっぱいいるよ。だからさ――社長って肩書き、誇っていい。俺も、そういう美咲が好きなんだから。」


その瞬間、美咲は不意に悠真の腕を掴み、ゆっくりと身体を近づけた。


「……ここ、監視カメラないわよね」


「え?……ちょ、美咲……」


言葉を遮るように、美咲は悠真の唇に深く口づけた。


長く、熱く、甘く。


「……このまま社長室、来てくれない?」


「もちろん、喜んで。」



数分後――

社長室。静まり返ったフロアに、ドアが閉まる音が響いた。


「この資料……次の企画の草案。まずは君に見てほしかった。」


悠真がスーツの内ポケットからファイルを差し出すと、美咲はそれを手に取り、開くこともせず、悠真のネクタイをそっと引っ張った。


「……あのエレベーターじゃ足りないの。」


「え?」


「我慢できないの。……15分だけでいい、キスさせて?」


「……ったく、社長命令には逆らえないな。」


それは言葉というより、契約に近い。


再び唇が重なり合い、二人は机の前で抱き合った。夫婦であり、上司と部下であり、かけがえのない同志でもある二人の距離は――この10年、変わるどころか、むしろ濃く、深くなっていた。


「ねえ……私はまだ、大丈夫かな? 社長として。」


キスの合間に、美咲がぽつりとつぶやく。


「うん。……世界一、俺が尊敬してる社長だよ。」


そう言って見せた悠真の笑顔は、10年前と何ひとつ変わっていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ