『夫婦だけの記念旅行 ― 企画とキスと、ふたりきりの時間』
「じゃあ、行ってきます。みんな、いい子にしててね!」
「パパ、ママ、気をつけて〜!」
祖父母に子どもたちを預け、美咲と悠真は**久々の“ふたりきりの記念旅行”**へと出かけた。
目的地は、静かな海辺のリゾートホテル。
ここは結婚10周年を祝う節目として、数ヶ月前から美咲が自ら選んでいた場所だった。
チェックインを済ませ、オーシャンビューの客室に入ると、白い波音と潮の香りが心を緩ませる。
「……この静けさ、ほんと贅沢ね」
「8人もいると、どれだけ騒がしかったか実感するよな……」
ベッドの縁に腰かけた美咲が、悠真のネクタイをゆっくり緩める。
「このタイミングでキスしたら、たぶん……今夜まで止まらないかもよ?」
「それでもいい」
彼の言葉に、美咲が少し微笑む。そして――
最初のキスは、ソファの上。
朝からの移動でやや疲れた体を預けながら、唇をゆっくりと重ね合う。
長く、静かに、そして次第に熱を帯びる口づけに、時間がほどけていく。
*
夕食後、海辺を散歩しながら2人で仕事の話に花が咲く。
「ねえ、来月の秋フェアの企画、見た?」
「うん。若手社員のアイデア、なかなか面白いね。デジタル×体験型のやつ」
「そうそう。“子ども目線で大人を楽しませる”ってテーマ。私、ちょっと感動しちゃった」
「……それ、うちの子どもたちの影響じゃない?」
「……かもね」
笑い合いながら、波打ち際で足を止める。
月明かりが彼女の横顔を照らすそのとき――
二度目のキス。
夜風に包まれながら、静かに唇を合わせる。
肩を寄せ、指先を絡めて、ふたりは何も言わずにただ、キスを続けた。
*
夜。バスタブにふたりで浸かる時間。
「お湯の音と、あなたの声しか聞こえない。なんか不思議」
「俺は、君の声だけで十分だけどな」
三度目のキスは、お湯の中。
湯気に包まれながら、まるで時が止まったかのような優しいキス。
「……また筋肉つけたでしょ?」
「またバスト大きくなってない?」
お互いをくすぐり合いながら、笑い声が響く湯船の中。
“社長”でも“取締役”でもない、ただの“夫婦”の時間。
*
寝室――
シーツの上、美咲が静かに指を絡ませる。
「ねえ、今日って……まだあと1回くらい、キスしてもいい?」
「何回でも」
四度目のキスは、眠る直前の深いキス。
優しく、甘く、深く、そしてゆっくりと愛を確かめるように。
ふたりはこの夜、仕事からも肩書きからも離れて――
ただ、恋人同士のように眠りについた。
翌朝、朝日が差し込む窓辺で、
もう一度だけ、五度目の“おはよう”のキスを交わしながら、
「またこういう時間、作ろうね」
「もちろん。また何年でも何十年でも、一緒に旅をしよう」
そう約束するふたりだった。
──特別編:完──
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