第10話『肩書きよりも、あなたの隣で。』
月曜日の朝。
本社ビルの大会議室には、200人を超える社員が集まっていた。
年に一度行われる「経営方針説明会」。
今年は、復帰を果たした七瀬美咲社長が壇上に立つ初の場でもあった。
「……皆さん、おはようございます」
その一言だけで、会場の空気が一変する。
懐かしさと、緊張と、そして確かな信頼。
「私はこの数年、育児と両立しながら会社を離れたり戻ったりする中で、ひとつ強く思ったことがあります」
「“肩書き”や“立場”より、もっと大切なものがある。
それは――人を信じて、任せて、支え合えることです」
社員たちは皆、静かにその言葉を受け取っていた。
「だからこそ、これからの私の経営方針は“共有”です。
能力も、時間も、家庭も、夢も。
どれも一人で抱えるものではない。“共に生きる”ことを、会社でも大切にしていきたい」
そして最後に、美咲は言った。
「私は社長である前に、母であり、妻でもあります。
でもこの会社にいる限り、全員が“家族のように信頼し合える存在”であってほしい。
これからも、どうぞよろしくお願いします」
会場からは大きな拍手と、なにより静かな尊敬の空気が広がった。
*
数日後。土曜の午後。
七瀬家には、陽だまりの中、のんびりとした時間が流れていた。
子どもたちはリビングでゲームをしたり、絵を描いたり。
美咲はキッチンでコーヒーを淹れ、悠真の隣に腰を下ろした。
「ねえ、私たちって……最初の頃から考えると、よくここまで来たよね」
「うん。でも、たぶんまだ“途中”なんだろうな」
「そうね。これからも、いろいろある。でも、何があっても――」
彼女が言い切る前に、悠真が口づけをした。
長く、甘く、優しく、けれど深くて熱いキス。
「……“肩書き”とか“社長”とか、全部なくなっても、俺はずっと君の隣にいるよ」
「……それ、すごくいいセリフ。ねえ、今夜もそれ、もう一回言って」
「キス付きで?」
「もちろん」
夜――
子どもたちが眠ったあと、寝室の灯りを落としたふたりは
静かに、そして深く抱きしめ合った。
言葉はいらない。
触れるだけで、信じ合える。愛し合える。
これからもずっと、会社でも家庭でも――
“肩書きよりも、あなたの隣で。”
そう思える時間が続くようにと、祈るようにキスを重ねた。
美咲と悠真。
ふたりの物語は、これからも続いていく。
──完──
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