第7話『子どもたちの未来、そして私たちの現在(いま)』
週末、七瀬家のリビングには大きな模造紙とカラーペンが広げられていた。
「将来の夢を書いてね!」という小学校の宿題に、8人の子どもたちは思い思いの“未来”を描いていた。
「僕は発明家になる!」
「私は保育士さん!」
「動物のお医者さんになりたい!」
「ママの会社の社長になるってアリ?」
「お父さんと一緒に働きたい!」
その中でも、長男・翔真の書いた言葉に、悠真は思わず手を止めた。
『お父さんみたいに、誰かを守れる人になりたい』
「……なんか、泣きそうになるな」
「ふふ、それって最高の褒め言葉じゃない?」
美咲が笑いながら背中を撫でると、悠真は恥ずかしそうに頬をかいた。
「でもさ、8人もいると、本当にいろんな個性があるんだなって思うよ」
「それが“家族”ってことでしょ。誰ひとり同じじゃない。でも、全部が愛おしい」
その夜、子どもたちが寝静まった後――
ベランダにふたり並んで、コーヒーを片手に話す時間があった。
「……ねえ、悠真。もしも私が、この会社を辞めたら、どう思う?」
「え?」
「いや、辞めるってわけじゃなくて。ちょっと考えてるだけ。
ほら、子どもたちもこれから進学とか、いろいろあるじゃない? そうなると、社長としても母親としても、いろんな決断を迫られる」
「……でもさ、美咲。俺はあなたが社長をしている姿、すごく好きだよ」
「ありがとう。でもね、今みたいに夜にふたりでゆっくり話せる時間を、もっと大事にしたいなって。贅沢かな?」
「贅沢じゃないよ。むしろ、それが“贅沢”なんじゃなくて、“理想”なんだと思う」
そう言って、悠真は美咲の手を握る。
「君がどんな未来を選んでも、俺は隣にいるから」
「……ありがとう。ほんと、あなたで良かった」
そのあと、いつものようにリビングの灯りを消し、寝室へ。
寝室では互いにスーツ姿ではなく、パジャマ姿。
けれど、服の厚さよりも、心の距離が近かった。
「ねえ、今日はキスしてから寝たい」
「いいよ。……少しじゃ足りないけど」
「じゃあ、少しじゃ済まないのをお願い」
ゆっくりと、深く、静かに交わされたキス。
甘くて、少しだけ切ない――けれど、確かな“今”を包み込むキスだった。
夜の静けさの中、ふたりは互いを抱きしめながら、
「次の未来」について語り合っていた。




