第5話『家族と、もうひとつの家族』
日曜の昼下がり――
七瀬家の庭には、穏やかな春の光が降り注いでいた。
「ママ〜!見て見て!シャボン玉、めっちゃでっかくなったよ!」
「こっちは、こっちは跳ねて割れた〜!」
庭のあちこちを駆け回るのは、七瀬家の8人の子どもたち。
長男の**翔真と次男の律真は、すっかり頼れるお兄ちゃんになり、
三女の紗良と四女の詩音**は、ドレス姿で手作りの紙ティアラをかぶってお姫様ごっこ。
五男の**結翔と六男の大地はお揃いの虫取り網を振り回しながら、蝶を追いかけていた。
そして末っ子の双子、七女の葵と八女の澪**は、ハンモックに揺られてお昼寝中。
「は〜、元気ね……さすがにこの人数はすごいわ」
と、庭の縁側で少し驚いたように呟いたのは、美咲の親友で副社長の相川涼子。
その隣には、涼子の夫――海外赴任から帰国したばかりの穏やかな青年、**神谷誠が座っていた。
涼子の腕の中には、まだ1歳になったばかりの涼子の第一子(女の子)**が小さな声で「あーうー」とご機嫌な様子。
「これが涼子ちゃんの赤ちゃん?名前なんていうの?」
と、律真が質問すると、涼子は嬉しそうに笑って答えた。
「**心結**っていうの。心と心を結ぶ、って書くのよ」
「可愛い名前だね!心を結ぶ……って、なんか詩音っぽい~」
詩音が照れくさそうに笑う。
「……でも、赤ちゃんって、ほんとにちっちゃいねぇ」
と呟いたのは、長男・翔真。
「でも、お兄ちゃんって感じがして、なんかいいな」
それに対し、翔真の弟・律真はぽつりとつぶやいた。
「俺らの弟や妹がもういないのが……ちょっとだけ、寂しい気もする」
その一言に、美咲と悠真は顔を見合わせて、笑った。
「……今でさえ、いっぱいいるのに?」
「うん。でも、なんか……賑やかが、好きなんだと思う」
そんな何気ない一言が、家族の愛情を映していた。
その後、子どもたちは涼子の娘・心結を囲んで輪になり、みんなで「おててぽん!」や「いないいないばあ」遊びを始める。
特に女の子たちは「ママ役」「保育士さん役」を取り合って、お世話ごっこが止まらない。
ふと、涼子が夫・誠の耳元でささやいた。
「ねぇ、これ……あまり大きな声じゃ言えないけど。
この家の“関係”を知ってる人、社内でもまだ6人しかいないの。あなたも含めて、7人目」
誠は驚いた顔を見せながらも、微笑んでうなずいた。
「……大丈夫。僕は口が堅い方だから」
「信じてる」
涼子はそのまま、誠の手に自分の手をそっと重ねた。
その日の夕暮れ、美咲がふと涼子の横に並び、静かに尋ねた。
「……ねえ。私たち、ちゃんと家族やれてるかな?」
涼子は少し笑って、美咲の肩に頭を預けた。
「こんなに子どもたちが笑ってて、旦那さんが君のことばかみたいに好きで、
副社長が遊びに来てる家で、“ちゃんと”じゃないわけがないでしょ」
その言葉に、美咲は少し涙をこぼしそうになりながらも、頷いた。
その夜、食卓には賑やかな笑いとカレーの香り。
まるで親戚が集まったような、穏やかな「日曜日」がそこにあった。




