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『秘密のエグゼクティブ・ラブ』〜社長、恋してはいけませんか?〜  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『肩書きよりも… あなたの隣』あれからまた二年後。
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第4話『好きな人ができました』



その日も橘悠真は、社内の会議資料を整理しながら、静かな午後を迎えていた。

社員食堂での昼食を終え、デスクに戻ろうとしたとき――背後から声がかかった。


「橘さん、ちょっとだけ……いいですか?」


振り向くと、そこにいたのは若手社員の**佐伯里帆さえき りほ**だった。

両手を不器用に重ねたその仕草から、彼女が何か迷っていることを悟った。


「……少し、外、歩きませんか?」



外は秋風が心地よく、敷地内の並木道には落ち葉が舞っていた。

ふたりは社内の目を避けるように、駐車場の裏手にある小さな休憩スペースへ向かう。


缶コーヒーを買い、ベンチに腰掛けると、佐伯は意を決したように切り出した。


「私……好きな人が、できました」


悠真は一瞬まばたきをし、佐伯の顔をまっすぐに見た。


「そうなんですね。……それは、素敵なことですね」


佐伯はふっと笑った。


「……でも、簡単じゃないんです。その人、私に全然気づいてなくて」


「そういうものですよ。想いって、伝えなきゃ届かないことも多いから」


「うん……分かってるんです。だけど――」


佐伯は小さな声で言った。


「私は……橘さんみたいな人が、好きなんです」


その言葉に、空気が静かに揺れた。


「優しくて、まっすぐで、家族を大切にしていて。

子どもたちと向き合って、奥さんのこともずっと愛してる。……そんな人に出会ったこと、なかったから」


悠真は少しだけ目を閉じ、静かに息を吐いた。


「ありがとうございます。そう言ってもらえるのは、素直に嬉しいです」


「でも……私は、それを“羨ましい”って思ってるだけかもしれません」


佐伯は立ち上がり、背筋を伸ばして微笑んだ。


「だから、決めました。次に誰かを好きになったら……ちゃんと、伝えようって。

隠れたままじゃ、幸せにはなれないから」


悠真も立ち上がり、彼女に向かって一礼した。


「応援してます。あなたなら、きっといい恋ができる」


「ありがとうございます。……あ、あとひとつだけ」


「?」


「子どもたちと、また会わせてください。あの子たち、きっと私の“勇気”になるから」


その日の夕方、佐伯は部署に戻ると、同僚の男性に自然な笑顔で話しかけていた。

その相手こそ、彼女が本当に「好きになりつつある」若手社員――まだ何も始まっていない関係。


でも、彼女の中で“前に進む準備”は、確かに整っていた。


夜、美咲は悠真に優しく抱きつきながら尋ねた。


「……佐伯さん、元気だった?」


「ああ、恋の相談を受けたよ」


「ふふ、それはまた、すごい相手に」


「でも、ちゃんと“応援する側”に徹したよ」


「じゃあ、そのご褒美に……」


美咲の唇が、彼の頬にそっと触れる。


「……甘いキスをひとつ、あげる」


悠真は目を細めながら、彼女を優しく引き寄せた。


「じゃあ、もうひとつ、今度は僕から」


夫婦の会話と、穏やかな夜の時間。

そのすべてが、未来に続いている――



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