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『秘密のエグゼクティブ・ラブ』〜社長、恋してはいけませんか?〜  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
休養・復帰編『肩書きよりも、あなたの隣』-そして2年後も…
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第6話:継がれた想い、繋がる未来



「社長としての美咲さんは――“信じる勇気”を持つ人でした。」


会議室でそう語ったのは、常務代行として業務を担っていた広瀬誠一。

朝の重役会議で、若手部長陣の提案に対して結花が慎重姿勢を崩さない中、

誠一は過去を思い出すように言葉を紡いでいた。


「利益が確実でなくても、“人が動きたいと思えるビジョン”があるなら賭けてみる。

七瀬社長は、そういう人だった。たとえ失敗しても、それを取り返すだけの“信頼”を社員に与えてた」


会議室が静まる。

視線は、取締役の橘悠真にも向けられていた。


結花は深く頷き、ゆっくり口を開いた。


「……私も、代行を任された以上、逃げるつもりはありません。

けれど、彼女のように“人を信じる強さ”を持てるかは……正直まだ、怖いです」


その言葉に、悠真は静かに言った。


「……彼女も最初からそうだったわけじゃありません。

でも、誰かが支えてくれたから、信じることができたんです」


「それは……橘さん、あなたですね?」


「……はい。僕です。

だけどそれ以上に、“信じてくれる社員”がいたから彼女は立てたんです。

そして今、あなたもすでに“信じられている”人ですよ、結花さん」


結花の目がわずかに揺れる。


「――ありがとうございます。

社長が戻ってくるその時まで、私なりにこの椅子を守りたいと思います。…恐れずに」


会議室に温かな空気が広がった。

それは、かつて美咲が築き、悠真が守り、

今また次の世代へと“継がれていく信頼の形”だった。



その日の午後、誠一と結花は執務室で短く言葉を交わした。


「……娘さん、よく頑張ってるな」

「……ありがとうございます。父にそう言われるのが、一番、嬉しいです」


誠一は、微笑みながら机に目を落とす。


「会社も、少しずつ“彼女”の不在を埋めるように回ってるが……

やっぱり、トップの器はひとつしかない。

あの人が帰ってきたとき、会社が“あの頃の温度”を取り戻せるように――今が正念場だ」


結花は深くうなずいた。


「――その時は、笑って“おかえりなさい”って言いたいです。

……社長、やっぱり“七瀬美咲”じゃなきゃ駄目だって、私は思うんです」



一方その頃――

療養施設の美咲は、ようやく「復帰後のリズム」をノートに書き始めていた。


「週3日から少しずつ」「朝会議は当面控え目に」「子どもたちとの時間を優先」


無理はしない。けれど、完全にもどる。


その時、扉がノックされた。

届けられたのは――悠真からの小さな宅配便。


中には社員たちが作った“寄せ書きアルバム”。


『社長、いつでも帰ってきてください。

椅子も、温度も、空気も、ちゃんと空けてありますから』


美咲はその場に座り込み、また一筋、涙を流した。


「……本当に、ありがとう」


そして心の中で、はっきりとつぶやいた。


「帰ります」



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