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『秘密のエグゼクティブ・ラブ』〜社長、恋してはいけませんか?〜  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『とある大企業の秘密の家族生活:After 5 Years』
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第8話:一通の手紙、そして“社長の過去”を知る者


ある日、TSグローバル本社に届いた一通の封書。

宛名は「社長室 七瀬美咲様」。差出人の記載はない。

しかし、手書きの文字にどこか見覚えがあった――


「……この字、まさか……」


美咲が指先で触れたその筆跡。

思い出したくなかった“過去”が、脳裏をよぎる。


――十数年前。

まだ学生だった美咲が、家業の経営を継ぐか悩みながら過ごしていた頃。

とある起業サークルで出会った一人の青年・片瀬尚人かたせ なおと


彼は美咲と一時期、未来のビジョンを語り合い、将来の夢を一緒に描いていた――が、

経営方針の違いをきっかけに決裂。美咲が家業を継ぎ、彼は海外へと去っていた。


(……なんで今さら、私に?)


開封すると、そこにはシンプルな文章が記されていた。


「今でも、君のことを“あの頃の美咲”としてしか思えない。

会って、確かめたい。君が、どんな“社長”になったのか」


その夜。

自宅の書斎で、悠真にすべてを打ち明けた。


「……ただの“友達”だった。でも、私が社長になると決めた時、“裏切られた”って言われたの」


「……会うの?」


「わからない。でも、今の私は――“誰の目にも、堂々と見せられる私”でいたい」


悠真は、静かに彼女の手を握った。


「どんな過去があったって、今のあなたを変えることはできない。

……あなたが戻る場所は、ここしかないんだから」



数日後。

都内の小さなホテルラウンジにて、美咲は尚人と再会した。


「……相変わらず綺麗だな。

でも、ずいぶん“遠い存在”になったなって、正直思ったよ」


「そう見えるのは、お互いに進んできた道が違うから。

私は、誰かの隣じゃなくて、自分の足で立てる場所を選んだの」


尚人は少し苦笑して、言った。


「そうだな。昔の俺は、自分の理想を他人に押し付けてたんだと思う。

君に謝りたくて、ずっと連絡しないでいた」


美咲は言葉を選びながら、ゆっくりと答えた。


「謝らなくていい。

あの時のあなたがいたから、私は迷わず“社長”になる覚悟を持てたの。

……だから、ありがとう」


帰り際。尚人はふと、美咲の左手に目をやった。


「君の隣にいるのは……どんな男なんだ?」


美咲は、少し微笑んだ。


「――世界で一番、私の価値を信じてくれる人よ」


その言葉に尚人は静かにうなずき、別れを告げた。



帰宅後、美咲はリビングにいる悠真と8人の子どもたちの姿を見て、心の奥に静かな安心を感じた。


もう、自分を証明するために誰かに会う必要はない。


今の自分は――

「社長」であり、「母」であり、そして「愛される妻」なのだから。



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