第10話『未来へ――そして、またふつうの朝がくる』
梅雨が明けたある静かな夜。
橘家のリビングには、8人の子どもたちの寝息が満ちていた。
時計は22時を回り、美咲はキッチンで食器を片付け、悠真はリビングのソファで資料に目を通していた。
「……今日、穏やかだったね」
「うん。静かだと逆に怖いくらい(笑)」
ふたりは並んでソファに腰かける。
長い時間を共に過ごしたはずなのに、こうして並ぶといつも新鮮な気持ちになる。
「ねえ、悠真……」
「ん?」
「久しぶりに、“ふたりだけの時間”……もらってもいい?」
その声に、悠真は手にしていた資料をそっと置いた。
美咲の視線は、優しく、どこか甘えているようだった。
*
寝室のドアが閉まる音。
その瞬間から、ふたりの空気が変わった。
静かに向き合い、言葉もなく唇が重なる。
最初は優しく、次第に深く――
息が混ざり、熱が重なり、心と心が素肌の距離で寄り添う。
悠真の手が美咲の背中にまわり、
美咲はその首に手を絡ませる。
「悠真……」
「……美咲……」
キスは何度も重なり、熱を帯びていく。
唇だけでなく、頬、首筋、鎖骨……
そして互いの服を静かに脱がせ合い、
やがてふたりは、裸のままシーツの中で抱き合った。
「……私、あなたに出会えて本当に良かった」
「俺も、美咲と出会って、全部変わった」
互いの肌を確かめながら、互いの鼓動を感じながら――
ふたりは、時間を忘れ、ただ愛し合った。
やがて夜が深まり、
ふたりはぴたりとくっついてベッドに眠った。
その姿は、恋人でも、夫婦でも、人生の“伴走者”だった。
*
翌朝。目覚ましの音が鳴る前に、美咲は目を覚ました。
「……やば、起きなきゃ」
「うん、子どもたち起きる前に」
互いに裸のままベッドから出て、
急いでバスルームでシャワーを浴びる。
そして、鏡の前でスーツに袖を通し、髪を整える。
「……これで、“社長と社員”に見えるかな」
「完璧。まさか昨夜、ベッドで裸だったなんて誰も思わない」
「ちょっと、それ言うのやめて(笑)」
リビングに出ると、まだ誰も起きていない。
その静寂の中で、ふたりはいつものようにキッチンをすれ違いながら、
最後の確認。
「行ってきます、社長」
「行ってらっしゃい、主任」
そして、ほんの一瞬――
他人には見えない場所で、
静かに、けれど確かに、唇を重ねた。
短くも甘い“夫婦のキス”。
この日もまた、“ふつう”が始まる。
*
エレベーターで社長と主任に戻り、
子どもたちは祖母に預け、
会社では互いに敬語と距離を保ち、
家に戻れば夫婦と家族。
それが、彼らの――“秘密で、ふつう”の生き方。
だけどその“ふつう”は、
誰よりも温かくて、誰よりも幸せに満ちていた。
――そしてまた、朝が来る。
これからも、愛と笑顔と8人の子どもたちと共に。
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