第6話 『涼子、副社長の結婚宣言!?』
月曜の朝。役員フロアの一室で、月例の執行役会が静かに始まっていた。
「では、次の議題に入ります――」
専務・広瀬が議事を進めるなか、静かに報告を聞く副社長・相川涼子の表情が、どこかいつもと違っていた。
何かを隠しているような、けれど、隠しきれない余裕と照れ。
それに最初に気づいたのは、誰でもない、美咲だった。
会議終了後、涼子を社長室に呼ぶ。
「涼子。……なにかあった?」
「え、何もないわよ」
「……嘘下手ね。
“なにか言いたくて仕方ないのに、言っていいのか悩んでる顔”してる」
涼子は目をそらし、小さく溜息をついてから、ようやく口を開いた。
「……実は、結婚することにしたの」
美咲は一瞬ぽかんとしたが、次の瞬間には大きな笑顔で立ち上がり――
「おめでとう! えっ、まさか、あの海外赴任してた彼?!」
「……そう。1年ぶりに帰国して、ね。
“そろそろ落ち着こう”って言われて……気づいたの。
私、ずっとあんたばっか支えてきたけど、自分の幸せ、後回しにしてたんだなって」
その言葉に、美咲はぐっと目頭を押さえた。
「涼子……ほんとに、おめでとう……。
でも、ちょっと寂しいのは、私だけ?」
涼子はからかうように微笑む。
「なによ。あんたなんて、先にバンバン子ども産んで、旦那もゲットして、
仕事も家庭も幸せも全部持ってってんじゃない」
「……確かに(笑)」
ふたりは肩を寄せ合いながら、笑い合った。
女同士の友情は、どんな時も強く、温かく、そして支え合っている。
*
その夜。
美咲は帰宅後、食卓で子どもたちに囲まれながら、
悠真にそっと報告した。
「ねえ、涼子が結婚するんだって」
「……ついにか。あの涼子さんが」
「嬉しいけど、正直、少しさみしいわ。
仕事でも、プライベートでも……私の一番近くにいてくれたから」
悠真は優しく笑って、美咲の手に触れた。
「でもきっと、これからも隣にいてくれる。
“家族”の形は変わっても、“仲間”であることは変わらないから」
美咲は、子どもたちの食べこぼしを笑いながら拭き取り、
テーブル越しに言った。
「……私たちも、そうやって歳を重ねていけたらいいね」
「うん。“家族”も“仲間”も、“ずっと”だから」
笑い声が響く食卓には、ひとつの幸せと、
またひとつの“祝福”が加わっていた。




