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『秘密のエグゼクティブ・ラブ』〜社長、恋してはいけませんか?〜  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
本編続編 『そして、家族は“ふつう”になる。』
28/77

第5話 『高梨課長、育児相談を受ける』



金曜の夕方。

社内の空気に少しだけ緩みが漂い始める時間帯。

TSグローバル経営企画部では、いつも通り黙々とPCと向き合う主任・橘悠真の背中があった。


その後ろから、気配を感じた。


「橘くん……ちょっと、いい?」


声をかけてきたのは、直属の上司であり、30代後半のしなやかな知性と包容力を兼ね備えた女性――高梨有紗たかなし ゆさ課長。


「はい。何でしょうか?」


「……ちょっとだけ、社長室に同行してくれる?」


「……社長室、ですか?」



ふたりで社長室へ向かうと、すでに涼やかな顔で迎えてくれたのは美咲。


「高梨課長……?」


「ごめんなさい、社長。実は……少しだけ、相談があって」


美咲は頷き、悠真に目配せすると、「大丈夫」とだけ口元で伝える。


美咲の淹れたコーヒーを手に、高梨は少しだけ視線を伏せ、静かに語り始めた。


「……私、妊娠したの」


一瞬、室内の空気が凍りつく。

だが次の瞬間、美咲が柔らかく微笑んだ。


「……おめでとうございます。すごく、素敵なこと」


悠真も思わず「本当に、おめでとうございます」と続ける。


けれど、高梨の表情はどこか沈んでいた。


「でも……正直、不安で。

私、課長として責任あるポジションで、

チームにも迷惑かけたくないし……

それに、結婚もしてなくて……ひとりなんです」


一瞬の沈黙。

だが、それを破ったのは美咲の言葉だった。


「私も、社長で、8人の母よ。

“無理して完璧”を目指すより、“頼る勇気”の方が、ずっと強い」


「……頼る勇気……」


美咲は続ける。


「あなたには、チームがいて、会社があって……

それに――私もいる。

ひとりで抱えなくていい。まずは、生まれてくる命を信じて」


高梨の瞳が、ほんの少し潤んだ。


「……社長……いえ、美咲さん。ありがとうございます」


「課長、たまには“肩書き”も外していいのよ。

ここは、あなたの味方しかいない場所だから」



その後――


夜。悠真が帰宅すると、リビングの美咲は静かに語った。


「有紗さん、泣いてたわ……でも、最後は笑ってた」


「……あなたの言葉、きっと支えになる」


「私は社長だけど……同じ“働く母”として、背中を押してあげたかったの」


美咲の手を、そっと握る悠真。


「あなたの強さは、誰かの安心になる。

俺がそうだったように、ね」


美咲は黙って頷いた。

その瞳には、またひとつ、母としての確信が灯っていた。



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