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『秘密のエグゼクティブ・ラブ』〜社長、恋してはいけませんか?〜  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
本編続編 『そして、家族は“ふつう”になる。』
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第4話 『初めての8人連れ外出』




梅雨が明けた7月中旬、日曜日。

晴天の下、橘家は「家族全員での初めての外出」を迎えていた。


目的地は、都内の大型ショッピングモール。

映画館、フードコート、ゲームセンター、キッズパークに子ども服売場までそろった“ファミリーの聖地”。


「よし……行くぞ。みんな、名前を呼ばれたら“ハイ!”って返事な!」


悠真が号令をかける。


「翔真!」「ハイ!」

「律真!」「ハイ!」

「紗良!」「ハイ!」

「詩音!」「ハーイ!」

「結翔!」「……はい!」

「澪!」「ハイッ!」

「葵!」「ハー……ふぇ……」

「大地!」「ふぇぇ……(指しゃぶり)」


一番下の双子(第7・8子)はベビーカー。上の6人はリュックを背負って整列。

まるで小学校の課外授業に向かうような風景に、近所の人も思わず笑顔を向けた。



「ねぇパパ、あのアニメ観たいー!」

「ママ、お腹すいたー!」

「ねぇねぇ、こっちのお店も見ようよー!」

「赤ちゃん、泣いてるよっ!」


ショッピングモールに着いて10分。

案の定、全方向からの要求が殺到。


悠真は冷静にハンカチで汗を拭きつつ、瞬時にプランを立てた。


「よし、ママと下の4人はベビールームとお昼の席取り。

パパは上の4人連れて、フードコートのメニュー確認!」


「了解、主任。いえ、旦那」


夫婦の間に流れるコンビネーションは、

もはや“経営陣”に近い。


子どもたちの欲求と混乱を交通整理しながら、

なんとかお昼までの行程をこなした。



フードコート。

悠真は8人分の注文を抱えて戻ってくる。


「……ハンバーグカレー、うどん、ミニラーメン、お子様プレート……やっぱ多いな、これ」


「あなた、腕の筋肉ついたの、ここ数年の買い出しのせいでしょ」


「間違いない」


一斉に食べ始める子どもたちを眺めながら、

美咲は静かに笑った。


「ふたりで出かけてた頃が、嘘みたいだね」


「なつかしいな。美咲がスタバの新作頼んで、俺が一口もらおうとして怒られた日」


「……覚えてるの?(笑)」


「忘れるわけないだろ、俺の“初キス”のあとだったんだから」


「なによそれ、いまそんなこと言わないでよ」



昼食後は、ベビーカーを押しながらキッズパークへ。


6人がはしゃぎ、2人が眠る。


誰かが転んで泣き、誰かがトイレを漏らし、誰かがコーラをこぼす。

だが――夫婦は疲れた顔を見せなかった。


それよりも、“この瞬間を見逃したくない”という想いが強かった。


ふと、美咲がぽつりとつぶやいた。


「……うちって、変じゃないよね?」


「ん?」


「こんな大人数で、どこ行くにも目立って……だけど、これが私たちの“ふつう”なんだよね」


悠真はうなずき、ベビーカーに眠る澪を見ながら答えた。


「目立つかもしれないけど、誇れる“日常”だよ」


その言葉に、美咲は優しく笑った。


そして――そっと彼の手を握る。


まわりに人がいても、目立っても、

“家族”の形は、いつもそこにある。


それが、彼女たちにとっての“ふつう”なのだ。



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