表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『秘密のエグゼクティブ・ラブ』〜社長、恋してはいけませんか?〜  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
本編続編 『そして、家族は“ふつう”になる。』
25/77

第2話 『パパ主任、家庭訪問を受ける』



6月のある平日午後。

TSグローバル本社にて、悠真は定時少し前に社長室のドアを軽くノックした。


「すみません、美咲……いえ、社長。今日は少し早く帰ります」

「……家庭訪問ね?」


笑いながらそう言った美咲の表情は、完全に“母”の顔だった。


「翔真と律真、先生との初対面……緊張するなあ」

「頑張ってね。パパ主任」



その日、橘家では双子の長男・翔真と次男・律真が小学校から帰宅し、落ち着かない様子だった。


「先生、本当に来るの? 家に?」

「ママ、僕の部屋、きれいにした方がいい?」

「パパ、スーツのままでいるの?」


「大丈夫。先生は、みんなのことを知りたいだけだから」

美咲がそう言うと、ふたりはちょっと落ち着いたように見えた。


やがて――チャイムの音が鳴る。


「こんにちは、担任の春日と申します」


30代前半の若い女性教師で、明るく親しみやすい雰囲気。

しかし、家に入ってから目にした光景に、目をまるくした。


「えっ……これ、全員……ご兄弟ですか?」


「はい。8人です」


「え、8人!? えっ……えっ!?」


リビングには、年齢も性格もバラバラな8人の子どもたちが勢ぞろい。

誰が誰の名前で、どの子が双子で、今何歳なのか。

先生は思わずメモを取り出して、整理し始めた。


「お父様は……会社員でいらっしゃいますか?」


「はい、一応。経営企画部で働いてます」

「社内では“主任”という立場で」


「……ご夫婦で、育児分担を?」


「うちは“完全タッグ制”です」


美咲の柔らかな笑みと、悠真の穏やかな口調に、春日先生は少しだけ首を傾げた。

どこか、夫婦の距離感が“ただの会社員夫婦”とは違って見えたのかもしれない。


「ちなみに……ご主人のご勤務先は?」


「ええと……TSグローバルです」


「えっ……社長と同じ……!?」


春日先生は、またも目を丸くする。

美咲が「偶然です」とさらりと流すが、微妙な空気が残った。


(……もしかして、このご夫婦、ただ者じゃない?)


春日先生の胸に、少しの違和感が残ったまま、家庭訪問は穏やかに終わった。



「どうだった?」


子どもたちが寝静まった夜。

ソファに並んで座る悠真と美咲。膝には各々の育児記録ノートと、仕事用タブレット。


「先生、びっくりしてた。8人って言ったら、もう“学校レベル”らしい」


「うん。でも……私たち、これが“ふつう”なんだよね」


「ふつう、だな」


互いに顔を見合わせて、ふっと笑った。


そこには、“秘密”を抱えながらも、堂々と家族を愛するふたりの姿があった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ