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『秘密のエグゼクティブ・ラブ』〜社長、恋してはいけませんか?〜  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
本編続編 『そして、家族は“ふつう”になる。』
24/77

第1話 『ふたたび、社長室にて』



8人の子どもたちに囲まれた朝は、慌ただしくて賑やかで、だけど幸せだった。


「パパー!お弁当箱、入ってないーっ!」

「ママー!この靴、サイズきついよ〜!」

「おにいちゃん、ランドセル、そこじゃないよっ!」


朝6時半のリビングは、もはや戦場。

それでも悠真はシャツのボタンを留めながら一人ひとりに声をかけ、

美咲は冷静に、お弁当・お茶・連絡帳・忘れ物確認を同時進行でこなす。


「行ってらっしゃい、気をつけてね!」

「ママもパパもお仕事がんばってね〜!」


ドアが閉まり、子どもたちの元気な足音が階段を降りていく。


ふたりは顔を見合わせ、同時にため息。


「……今日も、戦争だったな」

「でも……幸せな、戦争よね」



午前9時。

TSグローバル本社・社長室。


出社直後の社内はすでに活気づいていたが、

その中心に、育休から復帰した“社長”が帰ってきた。


七瀬美咲、36歳。

8児の母。大企業の社長。そして、部下である橘悠真の――妻。


「おかえりなさいませ、社長」

「お戻り、嬉しいです!」


総務部や秘書課、各部署から次々と声がかかる中、

美咲は笑顔で頷きながらも、社長としての“顔”をきちんと取り戻していた。


社長室に入ると、デスクには副社長・相川涼子からのメモ。


「全体経営報告書と、新年度の予算案は机の中に。

おかえり。戦地から帰ってきた戦士へ――心から拍手。」


思わず吹き出しそうになるが、

美咲は少しだけ目を潤ませながら、そのメモをそっと胸ポケットに入れた。



同じ頃、経営企画部フロア。


悠真は静かにPCに向かっていた。

いつも通りの表情、主任としての仕事ぶり、そして誰にも悟らせない“彼女”への想い。


だが今日、彼の胸の奥は少しだけ高鳴っていた。


(……また、あの場所で、彼女が社長として戻ってきたんだな)


社内ではふたりが“夫婦”であることは、まだ秘密。

知っているのは、ごく一部の重役とごく近しい社員たちだけ。


それでも、会議室で目が合えば心が緩み、

エレベーターホールですれ違えば、指先が無意識に触れそうになる。


「橘主任、午後の全体戦略会議、同行お願いできますか?」


「はい、承知しました」


彼女の声を“社長”として聞きながら、

“妻”である彼女を思う。

ふたりが積み重ねてきた、深くて静かな愛を。



夕方。全体会議後の社長室。


資料を戻しに来た悠真に、美咲は小さく囁く。


「……ありがとう。今日のサポート、助かったわ」

「こちらこそ。社長、お疲れ様です」


ビジネスライクなやりとりの裏に、

ふたりだけに通じる絆がある。


美咲は軽く髪を耳にかけ、

ふとだけ、瞳に柔らかい光を宿した。


「ねぇ……今夜、キッチン任せていい?」


「もちろん。“8人分”のスパゲッティ、腕によりをかけます」


ふたりは、笑いあった。


社長室と家庭――

どちらも彼らにとっては、“ふつう”の場所だった。



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