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『家族、またふたり増えました。』 ―「社長として、そして母として、あなたと共に」



梅雨入りを目前にした、ある初夏の朝。

いつも通り目覚め、ふたりで支度をし、子どもたち6人を見送ったあと。

ふと、美咲は洗面所で鏡を見つめていた。


「あれ……少し、遅れてる」


手元のカレンダーと体調の違和感。

思い当たる節がある。いつもの直感は、外れたことがない。


しばらくして、リビングから悠真の声が響く。


「……美咲?」


「……出た。陽性……また双子、かも」


その一言で、悠真の顔が一瞬にして引き締まった。

だが次の瞬間、彼の口元に笑みが浮かぶ。


「すごいな……これで8人目……!」



昼過ぎ、副社長室にて――


「えっ、また妊娠? ……ていうか、何人産むつもりなの?」


涼子は書類を置きながら、苦笑交じりに呆れる。

だが口元は緩んでいた。


「……で、また社長代行をお願いしたいんだけど」


「はいはい、もう慣れてるわよ。そろそろ私が“社長の補佐育成担当”になった方がいいかもね」



その週末、美咲は入院準備を整え、母に6人の子どもたちを預ける。

悠真は会社で仕事を終えたあと、病室へ向かい、

他の妊婦たちと和やかな会話を交わした後――


病室にふたりきりになった美咲と悠真は、

誰にも見られない穏やかな時間の中で、そっとキスを交わした。


「……ありがとう、いてくれて」


「……俺のほうこそ、あなたがいてくれてよかった」



その夜――会社では残業組が残っていた。


経営会議の資料を調整する悠真に声をかけたのは、常務・古賀だった。


「……また、産まれたんだってな。何人産むつもりなんよ、ほんとに(笑)

でもまあ、無理はするなよ。お前が倒れたら奥さんが怒るぞ」


続いて、専務・広瀬も背後からひと言。


「これで8人目か。いやぁ、凄いな大家族(笑)

主任のまま終わるつもりないんだろ? 昇進、頑張れよ。

でも、家族も大事にしろ。無理するな」


さらに副社長・涼子が近づいてきた。


「で、今回は帝王切開? それとも……」


「いえ、経腟分娩です」


「え……なにそれ。普通に産むやつ?」


「……はい、自然に出産する方法で――」(医学的に説明中)


涼子は途中から目をそらしながら「あーもう、聞かなきゃよかった」と小声で呟いた。



9ヶ月後――


産声が、分娩室に響いた。

悠真は手を握り、美咲の額を拭い、声をかけ続けていた。


「頑張ったな……ありがとう、美咲」


生まれたのは、男の子と女の子の双子。

結翔と澪に続く、第7子・第8子。


医師に抱かれたふたりの赤子を見つめながら、

美咲は微笑んだ。


「また……家族が、増えたね」



数日後、自宅。


子どもたち6人は、まだ出産のことを知らなかった。


玄関で美咲が赤ちゃんを抱いて現れた瞬間――


「えっ!?」「ええええ!?」「ほんとに!?」「また双子!?」


翔真「パパ……ママ、すごいね……」

律真「赤ちゃん、かわいい……」

紗良「ママに似てるね」

詩音「でも、泣きそう……」

結翔「ぼく、おにいちゃんまたふえたの?」

澪「みんなで、なかよくする……!」


家中が笑顔と泣き声で満たされた。



そして数ヶ月後――


美咲は再び社長として戻った。

全体朝礼で、いつものように淡々と、だがどこかあたたかく。


「……私が不在の間、皆さんの努力に感謝しています。

この会社が前へ進んでいたのは、私ではなく皆さんのおかげです。ありがとうございます」


その隣で――

悠真は変わらず、主任として資料を持ち、静かに立っていた。


それが、ふたりにとっての“いつも通り”だった。



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