表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

孤独

夜が更けて外が暗くなっても白銀はパソコンの前

から動こうとしない。


誠二はそんな彼にどう声をかけていいのかわからず戸惑っていた。


「誠二さん。パスワード解除してくれてありがとう。今日は疲れたでしょ?もう、休んでいいよ」


彼は後ろに振り向くとそう言って微笑んだ。


「わかりました…。白銀さん。あまり無理はしないでくださいね」


誠二は廃工場の奥に姿を消した。


一人になった白銀は大きくため息をつく。


「コルボノワールに関する情報は一切なしかぁ…」


彼は頭上を見上げると目を閉じる。


そして次に目を開けたとき彼は冷笑していた。


「一体どれだけ悪事を働いたらこんな風に表にでられなくなるんだろうな?」


白銀はパソコンを消してUSBを抜くとそれを懐にしまった。


そして廃工場の窓から見える外を見て拳を強く握りしめる。


「コルボノワール。絶対に探し出して消してやる…」


そう言った彼の表情は眉間に皺を寄せながら不気味な笑みを浮かべていた。




翌日、誠二は目を覚ますと腕を上げて伸びをする。


廃工場の中は白銀が住んでいるおかげか以外と綺麗だった。


寝所も天井や壁が空いてないところに布団が敷かれている。


誠二は起き上がると白銀の姿を探した。


少し歩くと椅子の上に座っている白銀が目に

入る。


「白銀さん」


誠二は小さな紙のようなものを宙に掲げて見ている彼に声をかける。


白銀はその声に振り向くとにこやかな顔で言った。


「おはよう。誠二さん」


「さっきは何を見ていたんですか?」


誠二の言葉に立ち上がると彼は手に持っていた物を渡す。


その真っ黒なカードを見て誠二は首を傾げる。


「これは…。会員証ですか?」


「ただの会員証じゃないよ。マフィア御用達のオークション会場への入場券さ」


彼は目を瞬かせた。


「マフィア御用達のオークション…?」


「そうだよ。ボートゥールを潰したときに奪ってきたんだ」


誠二はその言葉を聞いて少し考える。


(ここで何かあるのか…?)


彼の様子を見て白銀は微笑んだ。


「実は昨日、誠二さんが開けてくれたファイルにこのオークションのことが書かれてたんだ。コルボノワールに関係する組織で重要な会合をするってね」


誠二は体が凍りつく。


そして恐る恐る彼に聞いた。


「白銀さんは…そこで何を…?」


白銀は表情を変えずにこう言った。


「それは見てのお楽しみ。それよりオークションは三日後だ。誠二さんにはそれまでに護身術を身に

つけてほしい」


誠二は素っ頓狂な声を上げる。


「えっ?」




彼は真剣な顔で誠二の方を見た。


「今回行くのはマフィアが集まるオークションだ。俺は誠二さんを守る。でも、いつでもイレギュラーは起こるものだよ。だから万が一のために逃げる術を覚えてほいんだ」


その言葉に誠二は自分が攫われそうになったときのことを思い出す。


(確かに相手がマフィアなら前の男達のときみたいにいかないかも…。それに護身術を身につければ

白銀さんの足を引っ張らないかもしれない)


彼は白銀を真っ直ぐみると頷いた。


「わかりました。俺、武道とかしたことないんですけど…。護身術やってみます」


白銀は嬉しそうに微笑む。


「ありがとう。大丈夫。教えるの上手い人知ってるから」


そう言うと彼はスマホを取り出す。


手に持って画面を操作すると耳にスマホを当てる。


しばらくすると白銀は話し始めた。


「俺だよ。今って暇?」


誠二が耳を澄ますと微かに相手の怒ったような声が聞こえる。


「え?暇じゃない?そこをなんとか時間作ってよ」


白銀は笑って言った。


「まぁまぁ。そんなこと言わずにさ。買いたい物もあるんだよね。お代多めに出すよ?」


相手が渋々納得したのかそこで彼はスマホを耳から外す。


「じゃあ、行こっか。誠二さん」


白銀がそう言って振り向くと誠二は頷いた。




それから二人は廃品置き場に来ていた。


「白銀さん。もしかして、ここはアルマさんの?」


「そうだよ。さっきの電話相手はアルマなんだ」


彼はそう言って倉庫の方に歩き出す。


二人が倉庫の前に立つと機械音を立ててシャッターが上がった。


「行こう」


白銀はそう短く言うと倉庫の中に足を踏み入れる。


薄暗い通路を進むと前に武器が置かれていた部屋についた。


「アルマ?いないの?」


彼はそう言うと奥の扉を何度も叩く。


次の瞬間、勢いよく扉が開くと顔に傷のある中年くらいの男が現れた。


「うるせぇ!何度も叩くな!壊れんだろ」


男は眉間に皺を寄せて声を荒らげる。


「ごめんごめん。もしかしてアルマに何かあったのかなって心配になったんだよ」


白銀は悪びれる様子もなく笑いながら言った。


「思ってもねぇくせに…。それで?用件はなんだ」


アルマにそう言われると白銀は誠二を見る。


「誠二さんに護身術を教えてあげてほしいんだ。

人に教えるのは得意でしょ?」


意味ありげに白銀はにやりと笑う。


「…昔の話だ。十数年は教えてねぇから腕はなまってるかもな」


彼は頭を乱雑に搔くと白銀の顔をため息混じりに

見た。


「構わないよ。その間に俺は銃とか見てくるね」


そう言うとアルマの返事も聞かずに白銀は扉の奥に姿を消した。


「返事ぐらい聞け!相変わらず自由なやつだな…」


誠二はそんな二人のやりとりを見てただ苦笑することしかできなかった。




アルマと誠二から離れた白銀は奥の部屋に足を踏み入れる。


「ここに入るの久しぶりだなぁ」


彼はそう呟くと壁一面に並べられた銃や短剣を見回した。


白銀が入った部屋は誠二が最初に来た場所と違い明らかに殺傷力の高そうな物ばかり並べられている。


「手榴弾はいるよね…。後、マシンガンも」


彼はそう言いながら壁にかけてある物を手に取って

いく。


カウンターに物を並べようとした時、傍に置かれていた写真立てが目に入った。


そこには幼い少年と顔に傷のある男性、もう一人金髪の青年が写っている。


白銀は金髪の人物を見て表情を曇らせた。


そしてか細い声でこう言った。


「…レオ」


彼が俯いたとき突然、扉が勢いよく開く。


「おい。用件だけ言って逃げるんじゃねぇよ」


白銀は一瞬だけ肩を震わせたが何事もなかったかのように顔を上げてアルマを見た。


「逃げてないよ。商品を選んでたんだ。買いたい物があるって電話で言ったでしょ?」


アルマは彼の目の前にある手榴弾やマシンガンを見て大きくため息をつく。


「戦争でもする気か?」


二人の間に沈黙が流れる。


少しして白銀が口を開いた。


「戦争ね…。まぁ、近いかな」


アルマはその言葉に大きくため息をつく。


「無茶な真似はするなってボスに言われただろ?」


「ボスは関係ない。これは俺の問題だから」


白銀はそう言うと拳を強く握りしめた。


その手は微かに震えている。


「…お前の肩にリオンの証がある限りボスとの縁は切れねぇ。それは自分でもよくわかってんだろ?」


彼の言葉に白銀は何も答えない。




アルマはしばらく白銀を見つめていたがやがて諦めたような表情でこう言った。


「…ったく。買うんだろ?誠二の教育代もプラスでもらうぜ」


「いいの?」


彼は目を瞬かせてアルマを見る。


「言ってもどうせ聞かねぇだろ。なんで悪いとこ

ばかりボスに似るんだろうなぁ」


そう言うと彼はカウンターに近づいた。


白銀は微笑むと懐から封筒を取り出す。


「八十万で足りる?」


「釣りはねぇからな。あ、そうだ。この前ボスから電話があった。再来週に仕事で日本に来るそうだ。リオンの連中も一緒にな」


アルマがそう言うと白銀の瞳が僅かに揺れた。


そして少し俯いて頷く。


「…そっか」


「お前がしようとしてることはボスに聞かれたら

答えるぞ。俺もリオンの一員だからな」


白銀は顔を上げるとにっこりと笑った。


「構わないよ。それが正しい選択だからね」


アルマはアタッシュケースに商品を入れて封筒を

受け取ると彼の目を真っ直ぐに見て言った。


「…死ぬなよ」


「うん」


彼は短く頷くとアタッシュケースを持ってひらひらと手を振る。


「じゃあ、誠二さんの教育よろしくね」


その言葉を残して彼は部屋から出て行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ