囮
大我は懐からケースに入ったUSBを取り出すとレオの顔を見る。
「ボートゥールを壊滅させたときに見つけたUSB。この中にコルボノワールの幹部の情報が入ってる。誠二さんがハッキングしてくれたから見れるようになったんだ」
レオは微かに目を見開くと立ち上がった。
「ちょっと待ってろ。俺の部屋からパソコンを持ってくる」
彼はそう言って部屋から出て行く。
少しするとパソコンを抱えたレオが戻って来た。
そして、大我の目の前にパソコンを置く。
「USB挿してもいい?」
「おう」
彼はケースを開けて中のUSBを取ると、パソコンに挿した。
電源を入れると画面にはひとつだけ極秘ファイルと書かれたアプリが表示される。
大我は躊躇う様子もなくマウスでそのファイルをクリックした。
「コルボノワール幹部の四組織……。ボートゥール、エーグル、フォコン、シュエットか。ご丁寧に住所まで書いてあるな」
そう言って顎に手を当てながら画面を見つめるレオ。
「どう思う?俺も初めは喜んだけど、よく考えるとあまりにも情報に辿り着くのが簡単すぎるんだよね。あの、イアンが幹部の住所を書いたものを一番力の弱いボートゥールに置くとは思えないんだ」
「確かに。用心深いイアンにしては抜けすぎてるな。だとすると、この住所は罠か……」
二人の間に沈黙が流れる。
少しすると大我が口を開いた。
「罠でも行くしかないんじゃない?イアンが誠二さんに会うのはもう四日後だよ。それまでに何か対策を考えないと」
「そうだな。明日、ライ達と手分けして住所の場所に行ってみるか」
レオはそう言うとじっとこちらを見つめる。
「何?」
大我が首を傾げると彼は獅子の刺青が入った拳をこちらに突き出す。
「この先、危険なことがたくさんある。けど、無茶は絶対にするな。約束しろ」
「わかった。約束するよ」
頷くと大我も獅子の刺青が入った手を握るとレオの拳に重ねる。
翌日、武器庫にはリオンのメンバーと大我が集まっていた。
「全員揃ったな。これからコルボノワールの幹部達のアジトを調べに行く」
「ボス。アジトがわかったのか?」
レオは頷くと大我を見る。
「大我から情報をもらったんだ。ただ、あまりにも簡単に手に入れた情報だから罠の可能性もある」
「罠か。けど、このままただ待ってるわけにはいかねぇよな」
アルマはぐっと拳を握る。
「そうだな。幸いなことに幹部のアジトは全て近いところにある。手分けして調べよう」
「OK。ボス。で、どう分かれるんだ?」
ライがそう言うとレオは机の上に紙を広げた。
「まず、調べる場所は三つ」
ペンを持つと三つの組織の名前を書く。
「エーグルが力、人数でいえば一番強い。その次にフォコン、最後にシュエットだな」
「なるほど……。組織の名前は知ってるが、ボスは名前どころか顔すら知らねぇな」
アルマが小さくため息をついた。
「俺もだ。エーグルは俺と大我で調べる。フォコンはライとソラ、シュエットはウルとリオンの連中で調べてくれ。それと、アルマだが」
レオはそう言うとアルマの方を真剣な顔で見る。
「誠二の護衛を頼む。余ったリオンのメンバーもこちらに向かわせるが、俺達が不在の間にイアンがなにか仕掛けてくるかもしれない。用心してくれ」
「了解。誠二のことは任せろ」
彼が頷くとレオは軽く手を叩いた。
「じゃあ、幹部のアジトの場所を書いた地図を渡す。重要な情報だからなくさないでくれ。それとあくまで調査だってことを忘れるな。何かあったら俺に必ず報告すること。いいな?」
「OK。ボス」
ライ達は一斉に返事をすると地図を受け取り部屋から出ていく。
その後に部屋に残されたのはレオと大我、アルマの三人だった。
「ボス。あいつらは大丈夫か?」
アルマが心配そうに聞くと彼はふっと笑う。
「大丈夫だ。あくまで今回は調査だからな。皆、動きだしたし、俺と大我もすぐにここを出る。もし何か聞かれたら誠二には仕事だって言っといてくれ」
「わかった。気をつけてな」
レオは軽く手を振ると二人は部屋を出ていった。
途中でタクシーに乗りしばらく歩くと地図の住所に着く。
遠くから連なるビルを確認すると大我はレオに話しかける。
「レオ。あそこ見て」
目で合図を送った先を見ると体格のいい黒いスーツを着た男がビルの中に消えていく。
「あれが幹部の部下じゃないかな」
「そうだな。どこか様子を窺えそうな場所は……」
そう言って周囲を見渡すと近くに喫茶店の看板があるのが目に入る。
「あそこにするか」
レオは看板を指さすと大我を見る。
「うん」
彼の歩く後を大我も追った。
ビルに入りエレベーターに乗ると喫茶店がある階を押す。
「ライ達は無事についたかな」
「ああ。さっき到着したって連絡がきてた」
大我その言葉を聞くと目を綻ばせた。
「そっか。よかった」
音が鳴りエレベーターの扉が開く。
二人がエレベーターを降りるとコーヒーの匂いが鼻を掠める。
「いらっしゃいませ。二名様ですか?」
レジにいた女性にそう声をかけられた。
「おう。窓際の席に座りたいんだが……」
「わかりました。ご案内します」
女性は慣れた様子で窓際の席に二人を連れていく。
「では、ご注文が決まりましたら、そちらのベルでお呼びください」
頭を下げると彼女はカウンターの方に姿を消した。
「よかったね。空いてて」
そう言うと大きな窓の前の席に座る。
「そうだな。注文しないと店に悪ぃか。俺はコーヒーにするが、お前は何頼む?」
テーブルの端に置かれたメニューを開くと大我はにっこり笑う。
「いちごジュースとチョコレートパフェ」
レオは目を瞬かせる。
「お前、またそんな甘いものばっかり食べて」
「いいでしょ。レオの奢りなんだから」
彼は頭を搔くとベルを鳴らした。
しばらくすると先程の女性が現れ注文を聞くとカウンターに戻っていく。
ぼんやりとそんな姿を見つめると視線を窓の外に移す。
「え……?」
大我は眉間に皺を寄せると隣に座っていたレオの腕を強く引く。
レオは驚いた声を上げる。
「危ねぇな。急に引くなよ。なんだ?」
「今、イアンが……」
明らかに動揺した様子の大我にレオは嫌な予感を覚えた。
「落ち着け。イアンがなんだ?」
「誠二さんを連れて、ビルに入ってった……」




