表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/25

策略

しばらくして扉を叩く音が聞こえると、レオは銃を構えながら問いかけた。


「暗号は?」


「獅子」


そう返事が返ってくると彼は扉を開ける。


目の前には黒い髪の青年が立っていた。


「悪ぃな。念の為だ」


「いえ。ここは敵のアジトです。警戒するに越したことはありません」


青年は部屋の中にいる親子を見つめた。


「あの家族を無事に外まで連れ出すのが俺の任務ですね」


「そうだ。頼んだぞ」


彼は頷くと二人に声をかける。


「ここからは俺が案内します。リオンの名にかけて無事に外まで送り届けますよ」


「ありがとうございます」


女性が頭を下げる傍らで少年は不安げにレオの顔を見つめていた。


「大丈夫だ。俺の信頼してる部下だから、安心して付いて行きな。父さんは俺が必ず見つけるから」


彼はそういうと優しく笑う。


少年は頷くと女性に手を引かれて部屋から出ていった。


三人の姿が見えなくなってからレオはぽつりと

呟く。


「さて、父親はどこに連れていかれたんだ?」




建物に入ってから三十分が経過すると、床にはコルボノワールの構成員が数人倒れていた。


彼は周囲を警戒しながら足を進める。


ふと、争うような声が近くの扉から聞こえてきた。


「話が違うじゃないか!フロッピーを完成させれば俺達、家族を解放してくれると言ったはずだ!」


会話に耳を澄ませながらその後の聞き覚えのある声にレオは目を見開いた。


「フロッピーの完成は感謝していますが、その他の話は身に覚えがありませんねぇ」


男からはなんの感情も読み取れない。


「では、あなたは用済みなのでここでお別れです。ああ、ご家族のことはお気になさらず。すぐに会えますよ」


「やめろ!家族だけは……」


レオは舌打ちをすると扉を勢いよく蹴破った。


そして中に入ると目の前の男に銃を構える。


「おや、ネズミが入り込んでいたと聞きましたが。ここまで来るとは思いませんでしたよ」


赤い髪と目をした男は気味の悪い笑みを浮かべながらこちらを見ている。


「あんたがイアンだな」


レオは銃を構えたまま床に座り込んでいる男性の前に素早く移動した。


そして、目の前から視線を外さずに口を開く。


「無事か?」


「は、はい。ありがとうございます……」


彼はふっと笑うと穏やかな声でこう言った。


「あんたが連れていかれた父親だな。奥さんも子供も俺達が保護した。無事だから安心しな」


男性は目を瞬かせるとその場にへたりこむ。


「無事なんですね……。よかった。ありがとうございます」


レオは一瞬だけ穏やかな表情になると、すぐに険しい顔でイアンを睨む。


「イアン。諦めろ。お前の部下は全員、俺達リオンが倒した。大人しくフランスから出ていくなら見逃してやる」


その言葉に彼は思案するように顎に手を当てる。




「脅しではないようですね。まぁ、いいでしょう。フロッピーも手に入れましたし、この国にもう用はありません」


軽く手を叩くと突然、四人の男が現れた。


レオは目を見開くと銃を構える。


「ああ、気にしないでください。彼らに敵意はありませんよ。それにあなた方が倒したのは処分に困っていた無能な者達です」


氷のような笑顔でそう言い放つと身を翻して扉の方に向かう。


四人の男達も追うように後に続いた。


扉の前に立つとイアンは振り返る。


「そうそう。私、コルボノワールを敵に回したことを決して忘れないでくださいね。あなたの顔を覚えましたよ。リオンのボス。レオさん」


背中に嫌な汗が伝う。


レオは銃を握る手に力を込めた。


「では、さようなら」


イアンは扉を開けると部屋から出ていく。


しばらくしてレオは肩の力を抜いた。


そして振り返ると落ち着いた声で言った。


「イアンもいなくなったし。もう、大丈夫だ。家族のところまで案内する。立てるか?」


後ろでへたりこんでいる男性に手を伸ばす。


「は、はい。ありがとうございます……」


男性はふらつきながらもなんとか立ち上がると頭を下げた。


「なんとお礼を言ったらいいのか。本当にありがとうございます。この先もこのご恩は忘れません」


「気にしなくていい。関係ない人間を巻き込まないのが俺の信念だからな」







「あの時、イアンに狙われていたのが大我の家族か?」


「うん。そうだよ」


レオは目を瞬かせる。


「けど、フロッピーはイアンが持ち去ったはず……。なんで誠二が持ってるんだ?」


大我は目を伏せた。


「父さんはあのフロッピーの危険性をわかってた。だから、イアンの手にだけは決して渡したくなかったんだよ。あの時、あいつが持って行ったのは偽物のフロッピーなんだ」


その言葉にレオは大我の家族が殺された経緯を察した。


(イアンの性格からすると、偽物だと気づいてフロッピーを持ってる可能性のある大我の家族を血眼になって探したはず。なら、見つかったからこいつの家族は殺されたのか……)


体が熱をもつのを感じる。


彼は行き場のない怒りを感じていた。


「誠二さんは自分の持っている物がフロッピーだと知らない。だから、イアンはそれを利用して彼ごとフロッピーを手に入れようとしてる」


レオは首を傾げる。


「誠二もか?目的はフロッピーを入手することだろ」


問いかけられると大我は拳を強く握った。


「うん。けど、あいつは念のために優秀なエンジニアを欲したんだ。フロッピーに何かあった時に修復できるようにね」


「ちょっと待て。じゃあ、誠二が会社をクビなったのはイアンが絡んでいるのか」


大我は眉間に皺を寄せると吐き捨てるように言う。


「そうだよ。全部あいつが仕組んだことだ」


レオはその言葉にこめかみを押さえた。


(誠二は大我に関わらなくてもどのみちイアンに狙われてたのか……)


大きくため息をつくと彼は真剣な顔をする。


「大我。俺はイアンをコルボノワールを止められなかった。忘れていたからなんて言い訳はしねぇがあの時、俺がイアンを消していればお前が家族を失うことも闇の世界に足を踏み入れることもなかった」


「レオ……」


何か言いたそうに口を開くが俯く。


「だから、頼む。俺にも誠二を守らせてくれ。イアンのことは俺にも責任がある」


「わかった。コルボノワールの幹部の情報を教えるよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ