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機密

大我は首を傾げた。


「意思を尊重する……?」


「そうだ。昔、お前が言ってたじゃねぇか。人の意思は誰にも奪えない。なぜなら、それをなくしたら人は人じゃなくなるって」


レオの言葉に彼は目を見開いた。


「よく覚えてるね。そんな昔のこと」


「まだ小さいガキがあまりにも大人びたことを言うから驚いたんだよ」


くすくすと大我は笑う。


「やっと笑ったな」


その頭をレオは乱雑に撫でた。


「ありがと。レオ。少しだけ元気でたよ」


「おう。落ち込むなんてお前らしくねぇからな」


大我は立ち上がるとぎゅっと手を握りしめる。


「俺、誠二さんのためにできることをする」


「その調子だ。俺とリオンの連中もできる限り協力するぞ」


彼は頷くと通路の奥に姿を消した。


その姿を見送りレオも部屋に帰ろうとした時、スマホが震えた。


懐からスマホを取り出すと着信相手を見る。


画面にはソラと表示されていた。


応答のボタンを押して電話に出る。


「ソラ。どうした?」


「ボス。調べるように頼まれてた件だが進展があった。今から話せるか?できれば、アルマのアジトの外がいいんだが……」


その言葉に彼は少しの間沈黙すると口を開いた。


「大我と誠二には聞かれたくない話なんだな」


「ああ」


ソラは声を落とす。


「わかった。なら、リオンの隠れ家に使っているアパートで会おう。場所はわかるな?」


「OK。ボス」


通話が切れるとレオは嫌な予感を覚えた。


そして、ため息をつくとリビングに向かう。




扉を開けると肉の焼ける香ばしい匂いが鼻をかすめた。


腹の音が鳴りそうになるのを何とか堪えてキッチンへ足を進める。


「アルマ。作ってるとこ悪ぃ。ちょっといいか?」


アルマはフライパンの火を止めて振り返った。


「なんだ?ボス」


レオは周囲を見回して大我の姿がないことを確認すると口を開く。


「今からソラに会うためにリオンの隠れ家で使ってるアパートに行く。例の養護施設の件で進展があったらしい……。もし、なにか聞かれたら大我と誠二には仕事だって伝えてくれ」


「訳ありだな。OK。ボス。二人のことは任せてくれ」


ふっと笑うとアルマはフライパンに視線を戻して料理を再開する。


レオは部屋から出ると狭い通路を抜けて外に向かった。




車で二時間ほど移動してレオは目的のアパートに着く。


車を駐車場に入れると扉を開けて慎重に外に出た。


周囲を見渡して誰もいないことを確認すると、歩いてアパートの中に入る。


そのままエレベーターに乗るとスマホを取り出す。


『もうすぐつく』


短いメールをソラに送ると十と表示されているボタンを押した。


彼はぼんやりと階数の明かりが徐々についていくのを見つめる。


少しすると十の明かりがつき、エレベーターが停止して扉が開く。


外に出ると歩いて目的の部屋に向かう。


部屋の前に着くと扉を三回叩いて、小さな声でこう言った。


「獅子」


音を立てて扉が開くと中には神妙な顔をしたソラが立っている。


レオは何も言わずに部屋に入った。




ソラはリビングにつくとテーブルの上に置かれていたパソコンを開く。


「ボス。頼まれてた件だが、面倒なことになった」


「面倒?」


彼は頷くとパソコンを回転させてレオの方に向けた。


画面には白い目をした茶髪の男が写っている。


「誰だ。これは」


「コルボノワールの傘下、エーグルのボスだ」


レオは目を大きく見開くとじっとソラの顔を見た。


「何があったか説明してくれ」


ソラは真剣な顔をして話し始めた。




「まず、ボスに頼まれてあの資料に載っていた三つの養護施設を調べた。それは全て同じ地区にある施設だったんだ」


「どこだ?」


彼は懐から地図を取り出して広げる。


「練馬区だ」


赤いペンを取り出すと練馬区と書かれている場所に線を引く。


「練馬区……。昔、大我が暮らしてた場所だな」


ソラは頷くと練馬区の周辺の三箇所に丸をつける。


「イアンが調べてた養護施設があった場所はここだ」


「それで何か手がかりはあったのか?」


その言葉に彼は暗い顔をした。


「実は、三年前に養護施設は全て火災によって建物がなくなってる」


「なんだと!」


レオはテーブルを叩いて立ち上がると唇を噛んだ。


「せっかくイアンの尻尾を掴んだと思ったのに……」


「ただ、養護施設で働いてた元職員に話を聞くことができた。その職員によると三年前に俺と同じことを聞いてきた男がいたらしい」


ソラは懐から一枚の写真を取り出す。


そこにはパソコンの画面に写っている男と同じ顔をした男がいた。




「エーグルのボスか」


「ああ。火事の後、防犯カメラの映像フィルムが奇跡的に残ってたんだ。そこに写っていたのがこの男。その時、男が聞いたのは昔ここに七歳くらいのネックレスをつけた男の子がいなかったか。自分はその子の父親で息子の行方を探している」


レオは顎に手を当てる。


(父親っていうのは嘘だろうな。だが、そこまでしてイアンが子供を探していたのはなぜだ?ネックレスに何かあるのか……)


首を横に振ると彼は口を開く。


「おそらくイアンはそのネックレスを持った子供を探すため部下に養護施設を調べさせていたんだな。そして、三年前になんらかの事情があってもう探す必要がなくなった。だから証拠を消すために養護施設に火をつけたってところか」


「ボス。これからどうする?」


ソラの言葉にレオは頭を搔く。


「その子供の行方を調べよう。残された手がかりはそれしかない」


そう言いながらなぜかネックレスという言葉だけが彼の頭から離れなかった。

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