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旧怨

アルマは訓練場の床に散乱している銃を拾い上げた。


そのどれもが全ての弾が使われていて、空砲になっている。


「大我のやつ一体、何発撃ったんだ?全部空じゃねぇか」


彼は棚に近づくと弾丸と書かれた箱の中を確認した。


「ストックの弾もねぇ」


大きくため息をつくと頭を搔く。


「武器庫から持ってくるか……」


アルマはそう言うと訓練場を出た。




部屋を出ると武器庫に向かうため階段を上がる。


少し歩くと武器庫と書かれた扉の前に着く。


扉を開けると中には見慣れた人物の後ろ姿があった。


「ボス?」


「おう。アルマ。どした?」


アルマは目を瞬かせる。


「どうしたって聞きたいのは俺の方なんだが。こんなとこで何してたんだ?ボス」


レオは奥のテーブルを指さした。


「見てみろ」


彼は首を傾げて、テーブルに向かう。


「これは……」


微かに目を見開いてその上に置かれているものを見る。


テーブルの上には見慣れない形状の銃があった。


「大我のか?」


「多分、そうだろ。けど、見たことない銃だよな。小型だがライフルみたいな形をしてる」


レオは表情を曇らせる。


「あいつ前にボートゥールを消したって言ってたよな。これ、もしかしてその時に持ち出した銃なんじゃねぇかな」


アルマはふと大我が大量の武器を買っていたことを思い出した。


「きっとコルボノワールに繋がる手がかりをさがしてるんだろ。聞いた話だとボートゥールが壊滅させられたアジトにはマフィアに関する情報だけが綺麗になくなってたらしいからな」


「……コルボノワールに復讐するためか」




彼は俯く。


そして沈んだ声で言った。


「復讐には終わりがない。確かにあいつの気は晴れるかもしれねぇが。イアンを殺したとなればマフィアの中でも目をつけられる。大我が平穏に暮らしていける未来はないだろうな」


「ボス……」


レオは拳をぎゅっと握りしめる。


「俺があいつを気まぐれに助けて傍においてたからこんなことになったんだ。もっと、普通の道を歩けたかもしれないのに」


「でも、ボスが助けなかったら大我は死んでた」


アルマはそう言うと微笑んだ。


「勝手な意見だが俺はボスがしたことは間違ってねぇと思うぞ。あんたがいたから今の大我がある」


「アルマ」


彼は顔を上げた。


「ったく。あんたら親子は本当に手がかかるな。大我も誠二のことで落ち込んでるし。どっちも塞ぎ込まれたら大変なんだよ」


面倒くさそうにアルマは頭を搔く。


その仕草にレオはふっと笑った。


「悪かったな。俺は自分の思うように行動するよ」


暗い表情が消え明るくなった顔を見てアルマは軽くため息をつく。


「そうしてくれ」




訓練場を出た後、リビングに入った大我はコップが置かれたテーブルの前に座っている誠二を見つけた。


「誠二さん」


その声に誠二は振り返る。


「あ、大我さん。アルマさんには会えました?」


「え?」


大我は目を瞬かせた。


「さっき会ったときに大我さんを探しているようだったので」


「ああ。そういうこと。うん。会えたよ」


そう返事をしながら彼は先程の会話を聞かれていなかったことにほっと胸を撫で下ろす。


「アルマがジュースを用意してくれたみたいなんだけど。俺も座っていいかな?」


「どうぞ。冷蔵庫にあるって貼り紙がしてありましたよ」


誠二は微笑んだ。


大我は頷くと歩いて冷蔵庫に向かう。


冷蔵庫の前には確かに貼り紙がしてある。


『ジュースがふたつコップにあるが、テーブルに置いてあるのは誠二のだ。間違っても取るんじゃねぇぞ。お前はよく人のものを奪うからな!!』


最後の文字には強調するように感嘆符が書かれている。


大我は心外だといいたげな顔をした。


「酷いな。俺が取るのはレオかアルマのだけだよ。誠二さんのを取るわけないじゃん」


彼はそう言いながら冷蔵庫を開けてコップに入ったジュースを取り出す。




そのままゆっくりとテーブルに向かうとコップを置いて座った。


「もうすぐお昼ですね」


誠二は壁にかかっている時計を見て呟いた。


「そうだね」


彼はふと、アルマに言われた言葉を思い出す。


『一体、どれだけ銃を撃ったらこんなに部屋中に匂いが充満するんだよ』


訓練場に散乱した空の銃と独特な匂い。


大我は首を横に振った。


「誠二さん。昼食後にまた銃の射撃の続きしようって言ったけど。変更して武器庫でいろいろな銃について教えるね」


「射撃はいいんですか?」


誠二は目を瞬かせる。


「うん。また、明日にしよう」


「わかりました」




雑談をしながらコップに入ったジュースを飲み干すと大我は立ち上がった。


「まだ昼まで時間があるから誠二さんはゆっくりしてていいよ。時間が近づいたらアルマが昼食を作りに戻ってくるだろうからさ」


「はい。そうします」


頷いた誠二を見て彼はコップを運び洗って片付ける。


「じゃあ、また昼食に」


そう言うと大我は部屋を出ていく。


歩きながら訓練場の床に散乱した銃を思い浮かべる。


「アルマに言われてそのまま来ちゃったけど。散らかしたのは片付けなきゃ駄目だよな」


しばらくして部屋の前に着くと扉を開けた。




「あれ?」


部屋に入ると床は綺麗に片付けられていて、あの独特な匂いも消えている。


「遅せぇ。銃なら棚に片したぞ」


聞き覚えのある声が聞こえた。


視線を端に向けるとそこには呆れた顔をしたアルマがいる。


「アルマ。片付けてくれたの?」


「棚に戻しただけだ。弾はさっき武器庫から持ってきたところでまだ銃には入れてねぇ。撃ったやつが入れるべきだよな」


弾丸の入った袋を持ちながらじっとこちらを見つめられ大我は罰が悪そうに頬を掻く。


「ごめん。片付けてくれてありがとう。弾は俺が入れとくよ」


「頼むぞ。あ、使った弾代は後でお前に請求するからな」


アルマは弾丸の箱が入った袋を彼に渡すときっぱりと言った。


「え?」


「当然だろ。また金額が出たら請求書渡すから。じゃあな」


一人部屋に残られた大我は肩を落とす。


「貯金足りるかな……」

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