凄腕だけど殺しの美学にこだわり過ぎて悪魔を殺せない悪魔ハンター…とゆるふわなGの悪魔
Gが非常に苦手な方は、犬(DOG)のGなど適宜脳内変換することをおすすめします。
霧が立ち込めた湖。
ターゲットがここに訪れる情報を得ている。早速探索を行う。
(見つけた)
水辺にターゲットの悪魔が1人で座っているのが見えた。
特殊な歩法で近付く。スイーツ(三角形の団子?)を食べているようだ。
(なんか、めっちゃスキだらけじゃね?もしかして背後から忍び寄ってナイフ一突きで殺れるんじゃね?)
(————いや、だめだ。普通過ぎ!
殺しの美学『第3条 ただ殺すだけでなく、ワンランク上の死を!』 に反してしまうっ!!)
(やはり計画通りにいこう)
********
手を替え品を替え暗殺を試みるも、こだわり過ぎて上手くいかない。
その内に、霧が晴れてしまった。
(——くっ、霧が晴れると幻想的な雰囲気が出ない!
殺しの美学『第2条 暗殺はクール&ビューティーに』が守れないっ!)
「……あのー、さっきから何やってるんですか?」
ターゲットの悪魔に声をかけられた。
「やべっ!なんでばれたんだ!?」
「あーーっと、それ聞いちゃいます? 私、嗅覚G並なんですよね。
知ってました?Gって数キロ先の匂いまで感知できるんですよ。
あと、空気の振動で動きも分かったりします!他には他にはですね——」
「ちょっとストップ! この人?(いや、悪魔!)
初対面でめっちゃゴキ…Gの雑学アピールしてくるんだけど!!」
俺はまた悪魔の暗殺に失敗してしまったかもしれない。
*******
——N市内某所の悪魔ハンターの事務所。
「Gの悪魔の暗殺?」
なんか、やばそうなの(案件)来た。
「こいつを見てくだせぇ」
依頼者がタブレットを操作する。
YouTubeの画面上で、ゆるふわな感じの少女が踊っているのが見えた。
……思ってたのと違った ε-(´∀`*)ヨカタ。
「なるほど。人に擬態してるタイプだね。無害なようにも見えるけど——」
「イメージアップなんてされちゃうと困る方々がいるんでさぁ」
悪魔——世界中に突如現れた人のような存在、一説によると死んだ生物や”もの”の魂が集まって生まれたらしい。
災害や問題を引き起こすため根絶が叫ばれている。でも、日本など一部の国ではわりと受け入れられていたりする。
「で、殺れるんすか?」
「問題ない。悪魔は殺すだけだ」
俺は偉そうに応えたが、昨年は花粉症の悪魔、一昨年はカメムシの悪魔の暗殺に失敗していた。
(今度こそ、悪魔を殺さなくては)
(絶対に————)
******
——15年前。
「慈異苦、タケが事件に巻き込まれたらしい。俺は行ってくる。」
父さんが焦った様子で俺に言った。
ハンター登録名はジークだが、本名は慈異苦だ。キラキラネームでは断じてない。
この後、武士おじさんが亡くなったことを聞いた。
スピード狂の悪魔によるブレーキ破壊事件としてニュースでも大々的に報道された。
俺は悪魔ハンターになって悪魔を殺してやると決めたんだ。
今では、悪魔ハンターやエクソシストは珍しくないけれど10年前はいなかった。
そのため、暗殺者を養成する名門の私立月明学園に通うことにした。
————グリード先生に叩き込まれた教え『殺しの美学』は今でも生きる指針になっている。
*****
「————急に、重めの回想に入った気がしました!?」
Gの悪魔がメタいことを言ったが気のせいだろう。
「あ、私、アリアって言います。
秘密結社デビビビ株式会社所属でYouTuberしてます。
今日はI湖でロケなんです。ちなみにGの悪魔です」
「それ言っちゃって大丈夫!?」
「えへへ♡ 思えばGの英語 ”roach” と湖の ”lake” って音が似てますよね!
元々同じ雄大なものという言葉から来てるそうですよ!(嘘)」
「さすがに無理あるくない?!息するように嘘ついてない?!」
「Gのイメージアップにつながるなら悪魔にだってなりますよぉー」
「元から悪魔だよねっ!」
「悪魔ジョークです♡ 悪魔に魂売りますよぉ〜」
「えっ、悪魔がお互い魂売ったらどうなるの!?」
「力関係にもよりますが、基本は願い叶え放題です」
「Wow!永久機関完成!!」
「……あのぉ。今までの会話こっそりカメラ回してたんですが、動画に使っちゃってもいいですか?」
「まじで!?いや、ダメだからね。フリじゃなくダメ……
———誰だ?」
周囲に複数人の気配があることに気づいた。
ガササッ
茂みから何者かが現れた。
「————べっ、別に会話に上手く割り込めなかったわけじゃねえからな。
悪魔ハンター ジーク!お前が失敗したらまとめて殺すように依頼を受けてるとだけ言っておくぜ!」
(シャイか!?いや、ツンデレか?
襲撃者のツンデレは求めてないんだが……)
****
「スー ハー。絶対いける大丈夫私はイケてる落ち着いて————よしっ!
改めまして、悪魔ハンター ジーク。
くくく……やはり失敗したようだな。悪魔っ娘と一緒に死んでもらうぜぇ!
殺しができないヘボハンターさんよぉおお!」
襲撃者は叫びつつ俺とGの悪魔アリアに向かってきた。
(てか、何言ってくれちゃってんの!?)
「おい!ターゲットに悪魔ハンターであることをばらすな!
殺しの美学 『第1条 暗殺者であることが暗殺対象にバレてはいけない』に抵触するだろうがぁあ!」
俺は怒りの声をあげた。
「えっ、まだ、巻き返せると思ってたんですかい……。まぁいい。
殺れ!野郎ども!」
ブォンッ ザシュゥ! ……バタッ
俺のナイフが走り、一瞬で襲撃者たちは倒れた。
「いや、人間は殺れるからね!?(;゜Д゜)アセアセ…」
「人としてもっとダメですよ、それ!!」
悪魔に注意された。
「くっ、このままでは終われねぇ!
敵に背中は見せられねぇ!!これでもくらうんだなぁあ!」
ブシューォオオオオーーー!
自暴自棄になった襲撃者のボスは、ボンベを取り出してガスを噴射した。
「1000倍濃縮殺虫剤でさぁ。人間も一呼吸で死ぬ。Gも所詮ムシケラ!
Gの特性を持つ悪魔っ娘は確実に死ぬぜぇ。」
自爆攻撃に不意をつかれて、アリアはまともにガスを食らってしまったようだ。
(ここからすぐに離れなくては!)
***
俺はアリアを背負って、風上を目指して移動する。
「ジークさん……お願いです……」
「喋るな。まだガスが残ってる」
「私が死んだら遺灰を湖に撒いてください……ね……」
身体が冷たくなっていることに気づいた。
「おい、ま、まだ死ぬんじゃない!!」
「————————」
アリアはガバッと顔をあげた。
「じゃあ、死ぬのやめよぉっと!」
「生きてる!?」
「Gはしぶといので♡」
「マジか!———よかった!」
俺はいつの間にかターゲットの悪魔に愛着が湧いてしまったようで、素直に喜んでいた。
「いやいや、ここはツッコむとこですよ!
でも———ジークさん、助けていただきありがとうございました—————」
**
———後日。
俺はアリアに雇われて、ボディガード兼、悪魔のイメージアップ活動のサポートをすることになった。
今まで、悪魔=悪、殺さなくてはいけないと思考停止してたことに気づいたからだ。
叔父さんを殺した悪魔を憎むことで、本当は何もできなかった自分を責めていたのかもしれない。
結論を出すのは、もっと悪魔のことを知ってからでも遅くないんじゃないか?
……なんてね!
*
おまけ)
——悪魔あるある
「ジークさん、悪魔あるある知りたくないですか?」
アリアは思い出したように言った。
「えっ?ちょっと気になるかも」
「———熊牧場で、『あっ、くま!』って言われて、つい振り返っちゃうやーつ」
「なくない?!というか、今作ったんじゃ……?」
「いえいえ、ずっと前から温めてたやつですよぉ
他の悪魔に聞いてもらっても構いません(˙꒳˙ )キリッ」
「えっ、熊牧場、悪魔に人気あったりする……のか?!」
——ハンターあるある
「じゃあ、逆に悪魔ハンターあるあるの手本見せてくださいよぉ。先輩!」
「生意気な後輩だねっ!」
「えーっと————子供によく絡まれるとか?
仰向け四つん這いで迫ってきて『除霊してみろぉ!』って言われたことあったな」
「あー、映画エクソ○ストの真似ですね!
————わりとハンターって舐められてる!?」
「あとは、片親が悪魔で、悪魔の血を引いてるとか?」
「それは、あるあるぅー!!」
読んでいただきありがとうございました。
今回からテーマは単語カードを引いて決めてます。
「頑固」な「暗殺者」×「G」の「悪魔」+「少女趣味」