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勇者地獄  作者: 田中よしたろう
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兄弟決戦

 章吾は追っかけてくる可憐を何とか巻いた後、職場と同じ工業団地内にある第八運輸の基幹支店を尋ねた。


 こんなそばに居るとは。灯台元暮らしもいいとこだ、と章吾は呆れた。


「阿久和 貴資さんをお願いします」


「阿久和?ああ、阿久和常務の事ですね?失礼ですが、お約束はありますか?」


 受付のお姉さんが聞いてくる。


「有りません。しかし、章吾が来た。といえば分かるはずです」


「誠に申し訳有りませんが、常務はお忙しい方ですし、お約束が無い方はお繋ぎできません」


「本当に知り合いなんですよ。内線を一本かけるだけでいいんです。お時間は取らせませんから」


「しかし……セキュリティの関係もありますので、やはりお繋ぎするわけにはまいりません」


「彼が会わないと言ったら退散します。逆に私が来ていることを連絡しなかったら、後で貴方の心象が悪くなるかも知れませんよ」


「はあ……、本当に連絡するだけですよ」


 彼女は不審げな視線をこちらに向けながらも、内線をかけて確認をしてくれた。


「お疲れさまです、阿久和常務。章吾と名乗る方がお見えになっています。常務のお知り合いだと仰られているのですが。え!!お会いになる……はい。第二貨物置き場ですね、了解いたしました」


「常務がお会いになるそうです。第二貨物置場でお待ち下さい。今、ご案内いたします。」


 こちらの言っていることが正しかった事にお姉さんは驚いているようだ。

 第二貨物置場という所に案内した後、お姉さんは帰っていった。しばらく待たされる。

 周りには誰もいない。


「やあ。待たせたね」


 貴資がやって来た。前回の革のパンツルックではなく、今日は背広だった。


「ここ、いつもは、荷物を積んだトラックを、翌日の配達日まで駐めて置く場所なんだ。今は、全部出払っていてね。邪魔が入らないだろう」


「第八運輸と〝世界の悪〟はどういう関係なんだ?」


「さあ?僕もいきなり常務をやれといわれてここに来たんでね。良く分からない」


「それは……かなり適当だな」


 それとも貴資自体切り捨てていい末端なのか。

 まあ、いい。後で勇者組合に探らせよう。とりあえず今はこいつをどうにかしなければ。


 子供のころから、貴資とは何度も喧嘩をしたこともある。お互いしゃれにならない重症を与えたこともあった。愛情からの喧嘩でもない。かなり本気の憎悪もあった。

 章吾としては能力の全てで上を行く弟に対する嫉妬もあるし、貴資からすれば出来損ないの兄が身内に居るのが我慢ならなかったのだろう。


 あのまま章吾が異世界に召喚されることもなく共に大人になっていたら、関係性も変わっていたかも知れないが、お互いに気持ちは生き別れた十七歳と、十六歳のままだった。


 戦う事にあまり抵抗は無かった。


「僕を倒しに来たんだろう?」


「ああ、ただの犯罪組織なら、警察にまかせておく選択肢もあったが、この世界の埒外の存在なら放って置けない」


「そう。ならっ!!」


 貴資が暗黒勇者の力を解放する。

 それに従い、章吾も黄金勇者へと正体を現す。


「ギーーーーーギッギ!!」(決着をつけよう。兄さん)


「ハーーーーーッハッハ!!」(かかってこい)




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